“多少ぽっちゃりした初めまして”のPSYに3万5000人が熱狂。<YG Family Concert in Japan>最終日

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BIGBANG、2NE1、SE7ENなど人気アーティストを擁する韓国最大手音楽事務所・YG ENTERTAINMENT(ワイジーエンタテインメント)設立15周年を記念して日本でも開催された<YG Family Concert in Japan>が、1月22日さいたまスーパーアリーナ公演をもってグランドフィナーレを迎えた。

◆2NE1、PSY、SE7EN、Gummy、BIGBANG 画像@<YG Family Concert in Japan>、記事中に取り上げたPSY「Right Now」のミュージックビデオ

この日、会場につめかけたファンはおよそ3万5000人。日本では全4公演で約16万人を動員と、昨今開催される韓国アーティストの公演の中でも最大規模を誇る実績から、YG ENTERTAINMENT所属アーティストの日本での人気の高さがうかがい知れる。

本公演での目玉は、BIGBANGメンバー5人が全員そろって、およそ9ヶ月振りに日本のステージに上がったという事実かもしれない。先日、テレビ朝日系『MUSIC STATION』出演時にも披露した「TONIGHT」をはじめ、8曲を披露し、会場を大いに沸かせた。また、メンバーの口から、3月に日本でのアルバムリリースを予定しているというニュース、さらに「ツアーをするかも?」発言も飛び出し、会場にいるファンの熱気は高まるばかり。

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ところで、今回の公演で、最も熱い声援が送られたアーティストといえば、間違いなくPSY(サイ)だ。彼のライヴがスタートする前に流されたオープニング映像で「人生で一番熱い声援を送ってください。」と表示されたから、というわけだけではない。

韓国では11年のキャリアを持ち、韓国ではライヴの動員No.1(2010年コンサートチケット販売数で韓国内1位)とも言われる大人気アーティスト。しかし、日本ではまだデビューしていないため、まったくの無名。それがPSY(大阪公演の初日の模様がテレビでオンエアされた際に、一部Webで話題にはなったが)。

オープニングムービーで、「韓国では観客を熱狂させる歌手として有名ですが、なのですが(涙)、今日ここでは多少ぽっちゃりした初めましての人です(涙)」などメッセージが流され、会場はBIGBANGや2NE1、そしてSE7ENといったおなじみのアーティストたちのカッコイイエンターテインメントとは違った展開に笑いすら起こる。しかし、その笑いが熱い歓声に変わるのに時間はかからなかった。

11年を5曲に凝縮するというPSYのパフォーマンスの1曲目は、まさに彼の代表曲となっている「Right Now」から始まった。PSYの攻撃的なサウンドに煽られて、誰もが踊りだす、というのがこの曲のミュージックビデオだったが、ライヴが始まると、それと同じような情景、つまりこの“多少ぽっちゃりした初めまして”のアーティストのパフォーマンスに、誰もが立ち上がって、さらにその場でジャンプするほどに熱狂する情景が眼前に広がったのだ。

MCでは、なぜか巻物を取り出して、書かれているであろう日本語のコメントを読み上げる。

「ご挨拶させていただきます。韓国では11年目の歌手、しかし、日本では一日(?)しか経ってない歌手。赤ちゃん歌手。PSYです。お会いできて嬉しいです! 今、みなさん見ると、すごく熱狂しているように見えますが、ちゃんと見ると、口パクしている人が多いです。なので、今からエリアをわけて、エネルギーテストをします。エネルギーテストで声が一番小さかったところは、完全に無視して歌いたいと思います(笑)」

その姿はコミカルと表現するべきか。少なくとも、SE7ENやBIGBANGのようなかっこ良さは、お世辞にもそれほど、ほとんど、いや、まったく感じられない。しかし、彼は間違いなくオーディエンスのハートを掴み、視線を釘付けにしていた。

その後も「芸能人」「SHIKE IT」のハッピーチューンで、3万5000人を踊らせていくPSY。ステージ上のダンサーよりも激しいダンスを披露すれば、「一緒に、ジャンプ!」と絶叫し、ステージ、フロア、さいたまスーパーアリーナ全体が声を上げながらジャンプ。ボディーラインもわかる衣装なので、ぽっちゃりしたPSYのお腹も跳ねている。

「最後の2曲が残っていますが、2曲が終わって、もしアンコールを叫んでくださったら、またすぐ出てくるということをお伝えしながら、一応最後の2曲をお送りします。」

たどたどしく巻物を読みあげて「芸術」、そしてサビを日本語歌詞にした「楽園」を披露。基本はアッパーチューンで熱狂させつつも、最後はしっかりと感動させる。そんなPSYに、オーディエンスからは惜しみない歓声と拍手が贈られ、そしてすぐさまアンコールの声が響く。すぐアンコールの声が起こったので、もちろんすぐPSYは出てくる。

アンコールに持ってきたのは、映画『ビーバリーヒルズコップ』主題曲だった「Axel F」をサンプリングし、韓国で大ヒットした「チャンピオン」。最後にひと盛り上がりさせて、このバークリー音楽大学出身の奇才・PSYはステージを後にした。

YouTubeで公開されているPSYの動画には、K-POPについてあまり好意的な印象を持っていないユーザーからも「変なおっさんが出てきたと想ったら普通にいい曲だった」とか「韓国のアーティスト嫌いだけど、こいつはホンモノだと思うわ。」とか「韓国は変にカッコつけないでこの路線で行けば日本でウケるはず」「笑ってる人多いけど、これイイんじゃない!?」といったコメントが投稿されている。このことからも、PSYはそのパフォーマンスでK-POPファン以外からも一定の評価を受けているのは明らかだ(なお、「Right Now」のミュージックビデオには過激な歌詞ゆえか、セクシーな映像ゆえか年齢制限がかけられている)。

この日、我々は、いわゆるK-POPアーティストのイメージとはまったく異なるエンターテインメントを目撃した。そして、さいたまスーパーアリーナに集まった3万5000人の胸に、「PSY」の名が確かに刻み込まれた。いや、この日だけでなく、<YG Family Concert in Japan>の4公演、のべ16万人が、PSYの強烈な魅力に惚れ込んだのではないだろうか。


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