【連載】Vinyl Forest Vol.19 ── Still Going「D117」

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すでに世界中のメディアが第一報を報じた当タイトル。NYのアンダーグラウンド・Discoシーンで第一線をリードしてきたEric Duncan、Liv Spencerのユニット“Still Going”が、ついに自身のレーベルを発足。その記念すべき第一作目となる本作はファンの期待を裏切らない強力な仕上がりとなっている。

まず、この楽曲に参加しているメンバーはFischerspoonerのヴォーカリストであるLizzy Yoder、そしてLCD SoundsystemのPat Mahoneyがパーカッションを担当。NY出身のアーティストでもかなりアクの強い部類に入るアーティストがこの楽曲のために協力をしており、それだけでも期待は高まってしまう。実際に楽曲を通して聴くと、エレクトリックギターのオーバーダブとチープで野太いシンセが飛び交うサイケデリックな上モノに絡んでくるLizzy Yoder嬢のヴォーカル処理が堪らなく気持ちよい。全体を通してポップさの欠片もない作風ではあるが、この独特のSmokeyな世界観は個人的にちょうど欲しかったので、まさにグッドタイミングといったところだ。

そういえば2011年後半あたりから、Nu Discoシーンに変化が出てきている。ひとつはlate 80'sからearly 90'sのテイストを現代解釈する動き、そしてもうひとつは70'sサイケロック回帰と再構築、という2つの方向性が提案されているように思える。Nu Discoと呼ばれる以前は“Disco Dub”とカテゴリされてきた音楽は、Discoという枠をぶち壊したいのだろうか? と考えたくなるほど、あらゆる音楽をDisco解釈し進化してきた。そして、今後はもっと自由なDisco解釈が求められる時代へと突入するであろう。

そう予感させてくれた本作は、レーベルからのリリース予定が3月5日とアナウンスされている。

text by Dee-S

◆【連載】Vinyl Forest チャンネル
◆drumatrixx mag

──【連載】「Vinyl Forest」とは

筆者の私達は音楽好きなのは言うまでもないのだが、それでも年齢を重ねるにつれ不感症になりつつある。原因はハッキリしていて、テクノロジーの進化によって低価格、高品質な制作環境が容易に手に入る昨今にもかかわらず、楽曲のクオリティが退化の一途を辿っているからだ。低コストで在庫を抱えずに済むからレーベルは多くのリリースができる反面、現場ではとても使えないトラックも非常に多い。

そこで、データ音楽販売が主流となった昨今のダンスミュージック界隈の懐事情を鑑みて、

「私たちは、レーベル側が在庫リスクを背負い、インディながらも頑なにVinylをリリースするという行為そのものが、レーベルが充分な楽曲クオリティを保証しているのではないのか?」

という持論(フィルタリング)で巡り会えた珠玉の刺激物と、今では考えられない予算を投じてリリースされた名盤をご紹介していく。

text by Dee-S&Blue Eclair
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