ノラ・ジョーンズ【特別インタビュー前編】ブライアンと作ったこの作品が一番エキサイティング

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ノラ・ジョーンズが約2年半ぶりに発表した新作『リトル・ブロークン・ハーツ』。このアルバムで彼女と組んだプロデューサーは、ゴリラズやベックの作品を手掛け、ナールズ・バークレーの片割れでもある奇才デンジャー・マウスだ。よって、これまでのノラの作品とは一味もふた味も違うサウンドの広がりが感じられる。ふたりの相性はバッチリで、“今まででもっとも刺激的なノラ・ジョーンズ”を味わうことができるのだ。共同作業のきっかけと成果について話を聞いた。

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――新しいアルバムを完成させて、今、どんな気持ちですか?

ノラ・ジョーンズ(以下、ノラ):とても満足のいくアルバムになったので、早くみんなに聴いてもらいたいわね。今回は作るのがすごく楽しかったの。

――今まで以上にですか?

ノラ:ええ。今までとはまったく違った手法で作ったからね。これまでは家で曲を書き上げて、そのあとでバンド・メンバーと一緒にスタジオに入ってレコーディングするやり方だった。でも今回は何も準備せず、ブライアン(=デンジャー・マウス)とふたりでスタジオに入って1から曲を作っていくやり方をしたの。私にとってはまったく新しい経験だったわ。

――そういう作り方をしたいと前々から考えていたのですか?

ノラ:多くのバンドがそういう作り方をしているってことを知ってはいたけど、私はそういうタイプじゃないし、そうしたいと考えていたわけでもない。でもブライアンから提案があって、そりやり方でやってみようって素直に思えたの。いろんなやり方に対して私はオープンな態度でいたかったからね。

――難しそうとは考えず、「よし、やってみよう!」とすぐに思えたのですか?

ノラ:ええ。ブライアンのことを信頼していたからね。“どんなふうになるかな?”っていう好奇心はあっても、“何も浮かんでこないんじゃないか”というような不安はほとんどなかったわ。“面白そうだから、やってみたい!”って気持ちのほうが大きかった。

――デンジャー・マウスと一緒に作ろうと思ったきっかけは?

ノラ:『ローマ』(デンジャー・マウスがイタリアの作曲家ダニエル・ルッピと組んで制作した、過去のイタリア映画のオマージュ的作品。ノラは3曲にフィーチャーされていた)のレコーディングをしたのが2008年なんだけど、彼との作業がとても楽しかったし、友達にもなれた。それで今度は私のプロジェクトにも関わってほしいと頼んだの。そうしたらブライアンから「プロデュースだけじゃなく、曲を作るところから一緒にやろう」という提案があって。でもそのとき私は『ザ・フォール』の準備をしていて、すでに曲を書き上げていたのね。なので、ブライアンとはちょっとだけ音を出してみたものの、ちゃんと作り上げることは先送りにしたの。そうこうしているうちに私のほうは『ザ・フォール』のツアーが始まってしまったし、ブライアンも忙しくなって、お互いの時間がなかなか合わなくなってしまって。で、それから何年か経って、ようやく実現したってわけ。

――『ザ・フォール』から今作の間にも、あなたはいくつかのプロジェクトをやってましたよね。

ノラ:ええ。リトル・ウィリーズのレコーディングも楽しかったわよ。昔からの友達とまた一緒にアルバムを作るのは感慨深いことだった。でも、どのプロジェクトがもっともエキサイティングだったかと訊かれたら、やっぱりブライアンと作った今作って答えるわね。

――デンジャー・マウスが過去に手掛けたアルバム……例えばゴリラズとかナールズ・バークレーなんかは前から聴いていたんですか?

ノラ:もちろんゴリラズもナールズ・バークレーも聴いていたけど、私は彼がスパークルホースのメンバーと作った『ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル』が特に好きだったの。あのアルバムを聴いて、私とだったらどんなふうになるのか試してみたくなったのよね。

――デンジャー・マウスのどういうところをそんなに気に入ったのですか?

ノラ:まず、幅の広さ。それから、いい曲を書ける人だってこと。彼ってどっちかというとプロデューサーとしてよく知られているけど、その前にコンポーザーとして優れた人なの。アコースティック系でも、すごくいい曲を書くのよね。『ローマ』にはエレクトリック系の音は入ってないでしょ? つまり彼はエレクトリックでもアコースティックでも、どっちの世界でも素晴らしい世界観を作っていける人だってことなの。ストリングスの取り入れ方も上手いしね。

――実際、今回のアルバムを一緒に作ってみて、いかがでした?

ノラ:すごくエキサイティングだった。曲の感じがまったく変わったわね。自分ひとりで作っていると、どうしても過去の自分の曲と同じようなコード進行になってしまったりするのだけど、私が好むコード進行と彼の好むコード進行は違うし、手法もまったく違う。彼が出してくるアイディアを聞いて、“え、なにそれ!?”って思うようなことも少なくなかったけど、でもその意外性が新鮮だったわ。制作のほとんどを私とブライアンのふたりでやってるのよ。彼がドラムを叩いて、私がギターやベースを弾いたりしてね。それと、彼のスタジオにはキーボードがたくさん置いてあって、いろんな音のサンプルをそこで確認できたのがよかったわ。本当にいいミクスチャーになったと思う。

――クレジットを見ると、ジョーイ・ワロンカーやガス・サイファートら数人のミュージシャンも参加していますが、彼らのアイディアを反映させたところもありましたか?

ノラ:ええ。“私にはこれを弾くのは難しい”っていうところをやってもらったりしたんだけど、その過程で彼らのアイディアが加味されたところもあったわよ。ジョーイとガスはL.A.に住んでいるので、ブライアンのスタジオまですぐに来てくれたし。彼らにもずいぶん助けてもらったわ。

取材・文●内本順一


『リトル・ブロークン・ハーツ』
2012年4月25日 日本先行リリース
TOCP-71280 2,300円(税込)
1.グッド・モーニング
2.セイ・グッバイ
3.リトル・ブロークン・ハーツ
4.彼女は22歳
5.テイク・イット・バック
6.アフター・ザ・フォール
7.4 ブロークン・ハーツ
8.トラヴェリング・オン
9.アウト・オン・ザ・ロード
10.ハッピー・ピルズ
11.ミリアム
12.オール・ア・ドリーム
13.アイ・ドント・ワナ・ヒア・アナザー・サウンド* 
*日本ボーナス・トラック

◆ノラ・ジョーンズ・オフィシャルサイト
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