BOOM BOOM SATELLITES、大曲「BROKEN MIRROR」に込めた深い心情。「内に秘めたる暴力性をどう昇華させるか」

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「僕らは今年デビュー15周年を迎えますが、ユニコーンのようにガンダムが紡いできた歴史を新たな形で表現し続け、常に挑戦し続ける姿勢でありたいと思います」。映画『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン) episode5』のために書き下ろした新曲「BROKEN MIRROR」への思いを、かつて彼らはそう表現していた。デビュー15周年を迎え、キャリアを重ねながらも新たな地平を自力で切り拓く姿勢を常に忘れない、BOOM BOOM SATELLITES。この「BROKEN MIRROR」の胸を振るわせる重厚な聴き応えは、どんなフィールドに活動の場を広げようとも、自分達は“ロックバンド”であるという強固な意志を持ち続ける彼らだからこそ奏でることができるものに違いない。そんな大曲に込められた深い心情を、二人の言葉から受け取っていただけたら幸いだ。

――“ガンダムUC”のために書き下ろされたという今回の「BROKEN MIRROR」ですが、この曲に込めた思いと“ガンダムUC”のストーリーとの繋がりを、ご自身ではどのようにとらえていますか?

川島道行(Vo&G):“ガンダム”は僕ら自身も小さいころから見ていて、衝撃を受けた作品でもあって。ただのロボットアニメではない、秘められたテーマとか、人間ドラマとか、そういうものに子供ながら感じ入った部分があると思うんです。そこから今回の“ガンダムUC”に至って、戦争というものをもう一度題材にして、人間の何たるかを語ろうとしているんじゃないだろうかと感じたり。で、またその中には、僕らがこれまで作ってきた音楽の中に込められている哲学的なメッセージだったり、バンドの意志だったり……。僕達からリスナーに訴えかけようとしているものと、“ガンダム ”という名の下で描かれるアニメーションに共通する部分があるんじゃないかなと僕は感じたんですよね。

中野雅之(Prg&B):僕も“ガンダム”は、小学生のころに一番思い出に残っているアニメですね。で、今回の“ガンダムUC”はまさにそうだと思うんですけど、“ガンダム”は言ってみれば“大人向け”というか。そういう大好きなアニメのひとつである作品のサウンドを作るにあたっては、最初からアニメに寄せるっていうことは絶対にやめようと。いわゆるアニメソングの作家ではなくて、リアルなロックバンドである僕達を起用してくれたことをすごく光栄に感じているんで。そういう僕達だからこそ、いかにもタイアップっていう楽曲には絶対しないで、例えば今までの僕達の楽曲どおりリリックは英語ですし、アニメソング、ポップス的なものよりも数段、数10段、20段ぐらいラウドなサウンドになってるし。そういう、ある意味ミスマッチな感覚がお互いにとってカッコいいことになるんじゃないかっていうのは、僕の中ではありました。

――“ガンダム”の世界観をもちろん意識しながらも、この曲のテーマ的なものは、“ガンダム”の話が決まる前から存在していたっていうことなんですね。

中野:だと思います。リリックの最初のブロックとかは、そのときから変わってないんじゃない? 最初の数行とかは。

川島:あっ、そうか。確かそうだった。

――“Don't be afraid No one can tear us apart(怖がらなくていい だれもふたりの仲を引き裂くことはできない)”。すごく強い感じの言葉で、リリックは幕を開けます。

川島:そうですね。他のアーティストの言葉でも、多く語られてることかもしれないですけど……。去年の震災以降に、何をリリックとして、言葉として社会に発していくかっていうことを考えていた中で、葛藤だったり迷いだったり色々なものがあったことは正直、間違いなくて。でも、そういう中でも、例えば力強さというか。自分が弱っているときに、誰かが発した言葉によって閉鎖的な目先から外に出られるような、そんな感覚。自分の内面を見つめると色んな人格があって、その色んな人格に対して葛藤する作業も人間にはあると思うんですけど、でも、“恐れることはない”っていう。そういう力強い言葉を誰かに投げかけられることで、“光”を感じる瞬間はきっとあるんじゃないかっていう。

――いきなり強烈にラウドなサウンドが鳴り響く、BOOM BOOM SATELLITESらしいアッパーな楽曲でありつつ、ストリングスが加わる中盤~後半は本当に美しい音像で。攻撃的なだけじゃない深みも感じるサウンドは、リリックに込められたポジティブなメッセージとすごくリンクしていると思います。

中野・川島:ありがとうございます。

中野:そういうサウンド・スケープひとつとっても、自分達はすごく大事にしていることなので。リリックの世界観とか、音色ひとつ、ギターの歪みひとつ、ドラムのアンビエンスとか、ダブ的な空間処理とか、全てがひとつのストーリーを形作っていくために必要なピースというか。で、今回はマスタリングまで自分達でやったんですけど、曲作りからそういった作業まで一貫して、曲自体が持っているポテンシャルを余すところなくCDのフォーマットに入れるっていう作業を妥協なくやった感じが、こういう形なんですよ。で、話を戻すと、ラウドといっても例えば……。暴力的な衝動をそのまま暴力的に表現して爽快に終わる音楽も、実際にありますよね?

――ハードコアパンクとかは、そういうイメージが浮かぶ音楽かもしれないですね。

中野:そうですね。でも、僕らは、暴力が暴力で終始して終わるっていうことは考え方的にありえないというか。ビートが強くてフィジカルな強さを持つ、ある意味暴力的な衝動を掻き立てる音楽。ロックっていうのはそういう機能を持ち合わせているところがあるんだけれども、一方で、それよりもっと懐の深い受け皿としての大きさを同じく持っていると僕は思うから、その受け皿を最大限に使うということですよね。どんな人にも暴力的な衝動はおそらくあるけれども、同時に人はみんなそれを抑えて生きている。内に秘めたる暴力性っていうのはこのバンドをやっていく中ですごく大事なことなんだけど、それをどう昇華させるかはすごく重要なテーマで。なぜこれだけ人を傷つけていけないとみんな知っていながらも争いごとがなくならないのかっていうことだったり、そんなことを全部音楽で語りつくせるわけもないんだけど……。そういう色々な思いの、ある一部分を切り取ったショートストーリーみたいなものとして、今回の「BROKEN MIRROR」みたいな世界観が生まれるっていうことなんでしょうね。

――その今回の「BROKEN MIRROR」のリリースまで、これまで15年というキャリアを積み重ねてこられたわけですが。その間、日本だけでなく海外でも幅広いスケールで活動されてきましたが、そういう広い視野での活動をしたいという意志はこのバンドの活動をスタートさせた当初からあったんですか?

中野:それはもう、僕達が大学生のころの話ですね。二十歳前、19歳くらいのころ。当時は、今とは全然規模が違うというか、音楽ビジネスの規模が巨大だったころで……。だから、インディペンデント・レーベルって言ってもメジャー・レーベルと全然遜色なく活動ができていたっていう時期に、例えばCDパッケージを見て自分の好きなアーティストがどういうレーベルからリリースしているのかをチェックしたり。そうすると、いわゆる“レーベル買い”とかをするようにもなっていった中で、そういうところに自分達のデモを送ってみたい、送れるような作品を作ってみたいなっていうのはありましたよね。

――で、実際にR&S Records(エイフェックス・ツインなどの作品もリリースしていたベルギーの著名レーベル)からのリリースを実現させて。そこからこの15年で音楽の世界は色々な変化を経ましたが。日本と海外をまたにかけて活動しているお二人は、今のシーンの状況をどうとらえているんでしょう?

川島:そうですね……。例えば、以前はフィジカルでリリースされていたもの。僕らが大学生だったころとかは、CDっていう“盤”そのもの、僕なんかはアナログ盤っていう“モノ”そのものが欲しかったし。けど、今はそういう“モノ”としてみんな欲しいのかどうなのかって感じるくらい、音楽がデータでやり取りされていたり。もっと言えば、音楽をデータという形がないものでやり取りすることにおいて、その価値自体が定かではないというか。同じ形がないものでのやり取りするなら、じゃあタダのほうが良いのか、ということもあったり。音楽にお金が払われなくなるような状況に向かいつつあるのか、みたいな。そういう中で、規模が縮小しているっていう現状ばかりが見えてくる今のミュージックシーン、ビジネスシーンにおいて、例えばCDのボックスセットをリリースしてみたり、無料配信をしてみたり……。色々な人達が色々なことをしてサバイブを試みている中に、今の自分も存在していて。そこでは色々な葛藤もあるけれども、僕はある意味ゲームをしているような感覚というか。“生き残りゲーム”じゃないけど、自分自身も常に新たな試みに挑戦し続ける姿勢ではいたいですよね。

――例えば、世界中で日本のアニメが広がっている今の時代だからこそ、今回の“ガンダムUC”がきっかけで新たなリスナーとの繋がりを作ることができるかもしれないですし。そういう新たな機会を得られることは、ご本人的にも喜ばしいことじゃないですか?

中野:もちろん。そういう意味では、気持ちはいつでもオープンにしているというか。自分達の音楽だけを理解してくれる人達だけで村を作る、町を作るっていうのは無いつもりでいるんですけどね。とはいえ、アニメっていうのはある意味特殊なマーケットの中にあるものだと思うので、その中でどれだけ理解してもらえるかは、自分達では分かり得ないことですけど。でも、自分達ができるだけのものは曲に込めたので、あとは一人でも多くの人が楽しんでくれて、もしそれが僕達のことを知るきっかけになってライヴに来てくれたり、僕達の作品をさらに手にしてくれたりしたらすごく幸せなので。もちろん、自分達のファンはすごく大事なんです。言ってみれば、ファンっていうのは自分達の子供みたいなもんで、僕達が育ててきた部分もあるだろうし、逆にその人達に僕らが育てられてもきたし。そういう人達との繋がりはすごく大事だけれども、それだけに甘えちゃってもいけない。だからこそ、色々な音楽のファンが集まるフェスにも出たいっていうのがあるんですよね。そういう不特定多数の人達の前で勝負できるバンドにもっとならないとポテンシャルが落ちてしまうので、これからもできるだけ色々な場所に出ていきたいとは思っています。

取材・文●道明利友


New Single
「BROKEN MIRROR」
2012年6月6日発売
SRCL-8017 ¥1,365(tax in)
【「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」期間生産限定盤】
4大特典
(1)描き下ろし「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」スペシャル・パッケージ
(2)「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」スペシャル・ブックレット
(3)「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」JK絵柄スペシャル・ステッカー
(4)「BROKEN MIRROR」(Movie Edit)収録
[収録曲]
M1. BROKEN MIRROR
M2. BROKEN MIRROR (MOVIE Edition)
M3. BROKEN MIRROR -Remix-

【通常盤】
SRCL-8016 ¥1,020(tax in)
[収録曲]
M1. BROKEN MIRROR
M2. BROKEN MIRROR -Remix-

■ブンブンサテライツ×ニコニコ動画「BROKEN MIRROR」リミックス選手権
http://ch.nicovideo.jp/channel/bbs

「機動戦士ガンダムUC」episode5「黒いユニコーン」
イベント上映、Blu-ray先行販売、有料配信
5月19日(土)同時スタート
www.gundam-unicorn.net

◆ブンブンサテライツ オフィシャル・サイト
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