ジョー・ウォルシュ「僕は、ジョー・ウォルシュのアルバムを作って行くだけだ」

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イーグルスのギタリスト、ジョー・ウォルシュが20年ぶりとなるソロ・アルバム『アナログ・マン』をリリースした。デヴィッド・クロスビー、グラハム・ナッシュ、そして義兄リンゴ・スターが参加、「ファンのために作った」という新作は、タイトルの通り、古き良きロックンロールが詰まっている。デジタル・エイジであろうが、変わるつもりはないというウォルシュに話を聞いた。

◆ジョー・ウォルシュ『アナログ・マン』映像

──ソロ・アルバムのリリースは実に20年ぶりとなりますが…。

ジョー・ウォルシュ:そうだね、長かった。

──その間もずっと音楽活動を続けていらしたわけですが、ソロ・アルバムを出そうと思ったきっかけはなんだったんでしょう?

ジョー・ウォルシュ:曲は作ってたんだけど、完成させる時間がなかった。イーグルスのメンバーはみんなそうだよ。忙しいからね。でも3年前に結婚して、妻から“すごくいいから、完成させるべきよ”って言われたんだ。彼女のサポートがあって、リリースしてみようって思ったんだよ。

──じゃあ、私たちファンは奥さまに感謝しなくてはいけませんね。

ジョー・ウォルシュ:そう(笑)。僕も感謝してるよ。タイミングも良かったし、出来上がりにすごく満足しているからね。

──結婚なさった際に「ようやく理想の女性に巡り会った」とおっしゃっていましたが、彼女や結婚がこのアルバムになんらかの形で影響していますか?

ジョー・ウォルシュ:してる。彼女に会った時、彼女は自分の中の欠けた一部だって思った。彼女に会ったことで、僕は完璧になった。より自信が持てるようになったし、集中力も高まった。リラックスできハッピーになった。だからこそいい音楽が作れる。ポジティヴだよ。

──そうですね、サウンドはハードかもしれませんが、歌詞や雰囲気は優しくてポジティヴな印象を受けました。

ジョー・ウォルシュ:そう。妻に加え、大きな家族ができたんだ。それって僕にとって初めてのことだった。それまでずっと1人でいることが多かったからね。大きな家族の一員になったことで、自分をオープンにすることを学び、世界をまったく違う目で見るようになったよ。それが歌詞やソング・ライティングに出ているんだと思う。いいことだよ。

──アルバムのタイトルは『アナログ・マン』ですが、いまのレコーディング・スタジオでは“アナログの人”でいるのは難しいと思います。テクノロジーが発展したことでサウンド的に良くなったと思いますか? それとも昔の方が良かった?

ジョー・ウォルシュ:テクノロジーが発展したことで、2つの大きな違いが生まれた。1つは何でも“直せる”こと。そして“完璧なもの”が作れるようになった。アナログでは無理だったけど、いまなら間違ったと思ったところをいくらでも修正できる。だから、直したいって誘惑を抑えるのが大変だ。直し過ぎてしまったり、全部、変える必要のないところまで変えてしまいがちだ。完璧にしたいって欲求が沸いてきて、やり始めると楽しいんだよ。でも、やればやるほどパフォーマンスの要素を失っていく。レコーディングのとき、最初に考えていたものと違う演奏をしたからって、それは間違いだとは限らないんだ。直す必要はないんだよ。魔法みたいなもので、2度と同じものはできないかもしれない。それを間違ったと思って、直してしまえるのがテクノロジーの怖いところだ。だから、アナログ感覚を持ち、“好きなようにプレイする、直さない、完璧にはしない”って意識するのが大事だと思う。音楽ってそういうものなんだと思うよ。テクノロジーはアナログの思考を持った上で使いこなすべきだ。

──なるほど。

ジョー・ウォルシュ:サウンド的に良くなったかっていう点では、わからない。完璧になったかって言われたらそうだと思う。でも、それがいいことかって言われたら、わからない。僕はMP3の音がレコードより優れているとは思っていない。でも、いまはデジタルの時代だからね。そういうのを学ばないといけないんだと思う。ただ、テクノロジーのせいで音楽がこれ以上変わってしまわないことを願っている。

──おっしゃる通り、いまはデジタルの時代でこの10年で音楽業界は大きく様変わりしましたが、それはあなたやイーグルスにどんな影響を与えていますか?

ジョー・ウォルシュ:音楽を作っている若い人たちにとって、ロックンロールは昔ほど重要なものではなくなった。昔はすべてがロックンロールだった。僕は、いまの若い子が作っている音楽はロックンロールじゃないと思っている。いまの音楽を何と言い表したらいいか、わからない。いいものもあるけどね。全部じゃない。ほとんどは同じに聞こえる。イーグルスにとって重要なのは、イーグルスの音楽をプレイすることだ。それはこの先も変わらない。自分にしても、自分の音楽を変えるつもりはまったくない。21世紀だから…とか、いまどきのサウンドにしようなんて考えはない。自分は変わるべきじゃないと思っている。僕は、ジョー・ウォルシュのアルバムを作って行くだけだ。そして、このアルバムはファンのために作ったんだ。ずっと僕のサウンドを好きでいてくれた人たちのためにね。ファンと同じように、自分でも自分のサウンドを変えるべきだとは思ってない。

──だから、みんな、あなたが好きなんですよ。

ジョー・ウォルシュ:ありがとう(笑)。

──偉大なるアメリカンロックをけん引する第一人者として、いまのロックシーンはどうですか? お気に入りのバンドやアーティストはいますか?

ジョー・ウォルシュ:いるよ、何人か本当にいいのがいる。ブラック・キーズは素晴らしいと思うね。キングス・オブ・レオン、それにデイヴ・グロール。彼やフー・ファイターズは本当にいいね。この3つのバンドは大好きだ。それに、まったく違うジャンルになるけど、コンピューターを駆使したエレクトロニカのサウンドも好きだな。

──今回のアルバムには義兄のリンゴ・スターやデヴィッド・クロスビー、グラハム・ナッシュなど豪華なゲストが参加していますが…。

ジョー・ウォルシュ:リンゴはこの3年で2枚のアルバムを出してて、僕はそこでギターを弾いている。だから、彼には僕のアルバムでプレイしてくれってわざわざ頼む必要はなかったよ。彼は僕にお返ししなきゃいけなかったからね(笑)。それに、彼はいま家族の一員だから、音楽の話をしたりレコーディング以外でもよく一緒にプレイしてるんだ。

──ファミリー・ビジネスみたいなものなんですね。

ジョー・ウォルシュ:そう(笑)、ファミリー・ビジネスっていうのがピッタリだ。

──曲を作るときは、これは自分用、これはイーグルス用などと分けつつ作っているのでしょうか?

ジョー・ウォルシュ:いい質問だね(笑)。僕はまず曲を作ってみる。イーグルスが集まるとき、メンバーそれぞれが自分の作った曲を持ち寄って、みんなで聴き合うんだ。それで、これはイーグルス向きだとか決める。まさにイーグルスだって曲があるからね。イーグルスじゃないなって曲は持ち帰って、それぞれが完成させるんだ。

──ギターについてお訊きしたいんですが、いまはどのギターをプレイしているんでしょう? そして、長年のお気に入りは?

ジョー・ウォルシュ:ベーシックなのはギブソンのレスポールとフェンダー・ストラトキャスターだ。この2つは1950年代にデザインされたもので、いろんな人がそれ以上のものを作ろうとしたけど無理だった。いまでも素晴らしいギターだ。レコーディングのときはこの2本をよく使う。新しいギターでもいいものはある。ドイツのデューゼンバーグはいい。ライヴでよく使っている。トム・ペティ&ハートブレイカーズのギタリスト、マイク・キャンベルがデューゼンバーグを最初に発見して、素晴らしいギターだって見せてくれたんだ。この3本が僕のお気に入りだよ。

──音楽の世界で成功し、理想の女性にも出会ったいま、この先成し遂げたいと思うことはありますか?

ジョー・ウォルシュ:新しいソロ・アルバムを出すのに20年かかった。曲作りは続けている。だから次のアルバムには20年かからないと思うよ。今度は友人たちと一緒にブルースのアルバムを作りたいって思っているんだ。ドクター・ジョンとかエリック・クラプトン、タジ・マハールなんかと一緒にね。みんなが1曲ずつブルースの曲を歌うアルバムを作りたい。それに、またジョー・ウォルシュのソロ・アルバムを作りたい。今回のアルバム作るの、楽しかったからね。

──ソロ・ツアーの予定はありますか?

ジョー・ウォルシュ:あるよ。もうじきアメリカでツアーを始める。その後、UKツアーも予定している。それに日本へも行きたいって思っているよ。このアルバムのミュージック、気に入っているからね。自分のバンドと一緒にプレイするのが楽しみだ。そして、2013年はイーグルスの40周年記念だ。だから、新しいツアーとドキュメンタリーの制作を計画している。昔のライヴやインタビュー映像がいっぱいあるんだ。この前見返してたんだけど、すごくパワフルだったよ。
それらをまとめたいって思っている。2013年はイーグルスの誕生祝いの年になる。ツアーでは、これまでライヴでプレイしたことがなかった曲をやるつもりなんだ。それまでは、自分のバンドと一緒に自分の曲をプレイしていく予定だ。

──最後に日本のファンへメッセージをお願いします。

ジョー・ウォルシュ:やあ、みんな、ジョー・ウォルシュだ…イーグルスのね(笑)。『アナログ・マン』っていう新作、ソロ・アルバムを作った。みんなが新しい音楽を楽しんでくれることを願ってるよ。このアルバムを作るのは楽しかった。そしてこのアルバムは、君たちのために作ったんだ。日本のみんな、こんにちは。近いうちに日本へ行って、コンサートを開きたいって思っている。ありがとう。

ウォルシュは6月14日、ロンドンで『アナログ・マン』のリスニング・パーティーを開催。本人に加え、ロニー・ウッドやポール・マッカートニーの息子ジェイムスも出席した。


Ako Suzuki, London
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