【インタビュー】Aimer、唯一無二の歌声を手に入れるまでの絶望と葛藤、そして希望

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あらかじめ何かをあきらめているような、それでいて何かをすごく切望しているような、その歌声に撃ち抜かれる。昨年(2011年)の9月にデビューし、以来、楽曲を発表するたび、その歌声が反響を呼び、注目を集めてきたAimerが、待望の1stアルバム『Sleepless Nights』をリリース。“眠れない夜に聴いてもらえるようなアルバム”がコンセプトの本作は、Aimerの嘘のない想いが詰まっていて、眠れない夜はもちろん、いつでも心にそっと寄り添ってくれる一枚になっている。これまでインターネットライヴ以外、ほとんどメディアに登場することのなかった彼女が、BARKSに初登場だ。

◆もう歌えないのかな?って、絶望感はすごくありました。
◆歌えなくなって初めて“自分はこんなに歌が好きだったのか”って気づいたし。


――デビューして1年ですけど、この1年で何か変わってきたことはありますか?

Aimer:歌う姿勢は変わらないんですけど、周りの環境は変わりましたね。聴いてくれる人がいる、というのが大きいというか。私の1stシングルに収録されていた「六等星の夜」はアニメ(ノイタミナ『NO.6』)のエンディングだったんですが、アニメを観た人が「いい曲だ」「声がいい」とか、ツイッターで反応してくださって、すごく感動したのを今でも覚えています。で、そういう声をいただいてから、プロとしての自覚も一段と出てきましたし、私はインターネットライヴを結構やっているんですけど、見ている人たちに向けて発信しているっていう気持ちもどんどん強くなってきましたね。

――そんな中、待望の1stアルバムが完成しました。出来上がった今の気持ちは?

Aimer:1年を経てやっとここまで来れたっていう気持ちと、これから頑張らなきゃなっていう気持ちが同時にありますね。でもそれ以上にやっぱり、出来上がって素直に嬉しいです。

――今作を作る時、テーマとかコンセプトはあったんですか?

Aimer:最初に、今までのシングル曲を全部入れるっていうお話があって。今までのシングルで歌ってきたものって、眠れない夜に歌詞を書いたりしたものが多かったんですね。なので、眠れない夜に皆さんに聴いてもらえるようなアルバムがいいなと思って。それをコンセプトに、アルバム・タイトルも『Sleepless Nights』にしました。

――実際、眠れない夜に歌詞を書くことが多いんですか?

Aimer:眠れない夜というか、夜が好きなので、夜更かしをして、その時に歌詞を書くことが多いです。

――じゃあ、夜型の生活?

Aimer:そうですね。でもなるべく早く起きるようにはしています(笑)。

――で、今回、これまでのシングル曲全曲に加えて、新曲が3曲入っていますけど、「夜行列車~nothing to lose~」は、Aimerさんのアーティストとしての出発点を感じさせる内容になってますよね。これは実話?

Aimer:基本的に歌詞は、自分の体験もちりばめながら一つの物語を書くようなイメージで書いています。なので、この曲もそういう感じですね。

――“さよなら 夜の教室/ここで私は声を失した”というフレーズがとても印象的でした。

Aimer:ああ……声が出なくなってしまったというのは実体験なんです。私は常に音楽が流れているような家で育って、物心つく前から歌うのが好きな子供で、気づいたら歌手になりたいと思っていたんですね。で、いつも一人で歌っていたんですけど。15歳の時、朝起きたら突然声が出なくなっていたんです。それで、声帯を診る専門の耳鼻咽喉科に行ったら「とにかくしゃべらないでください」って、沈黙療法というのを勧められて、そこから半年間ずっとしゃべらずにいて……。

――半年間もしゃべらなかったの!?

Aimer:はい。だから、声が出せないのでコミュニケーションを取るのがちょっと億劫になってしまったところがあって。結構一人で過ごしてたかも……。

――しかし、気づいたら歌手になりたいと思ってたくらい小さい頃から歌が好きだったのに、声が奪われてしまうというのは……絶望的な気持ちになりませんでした?

Aimer:ほんとにそうです。もう歌えないのかな?って、絶望感はすごくありました。ただ、歌えなくなって初めて“自分はこんなに歌が好きだったのか”ってことに気づいたし、そこでますます歌いたい気持ちが強まったというのはありますね。

――資料によると、その時の経験が今の歌声を生んだのだとか。

Aimer:はい。なぜ声が出なくなったかというと、それまでの発声方法が喉に負担をかけすぎていたらしいんです。なので、少しずつ声が出るようになってからは、なるべく喉に負担がかからないような歌い方をするようになって、今の歌声になったというか……。

◆悲しみとか喜びとか、どちらか一方だけを切り取るんじゃなくて、
◆どちらも受け入れて歌いたい。


――今、Aimerさんの歌声は大きな武器になってると思うんですが、ご自身は自分の声ってどう感じてますか?

Aimer:うーん、実は“大好き!”っていう感じではなくて、こういう声の出し方は好きだけど、こういう声の出し方は嫌い、みたいなのはありますね。

――ちなみに好きな声は?

Aimer:どちらかというと、低音が好きかな。

――特徴ありますよね、低音。私はAimerさんの歌声って、どこかあきらめているような、それでいて何かをすごく切望しているような声だなと思っているんですけど、特に低音は、乾いた目線とかあきらめみたいなものを感じます。

Aimer:ありがとうございます。

――それは“ありがとう”なのかな?(笑)

Aimer:はい、嬉しいです(笑)。歌詞もそうなんですけど、私は悲しみとか喜びとか、どちらか一方だけを切り取るんじゃなくて、どちらも受け入れて歌いたいと思っているんです。例えば“あきらめ”っていうのも、一見するとマイナスに思われがちだけど、プラスにあきらめるってこともあると思うんですよ。そういう感じを歌詞にも書いていきたいし、歌声もそうでありたいと思っているので、そうおっしゃっていただけるのは嬉しいです。

――それならよかったです(笑)。そして、新曲「AM02:00」は、まさに眠れない夜の想いと状況が描かれた曲で。

Aimer:はい。夜中ってみんな寝静まっていて、自分と対峙しやすいし、自分の中にあるものが見えやすいと思うんです。これはそういう……午前2時という時間帯だからこそ見えた本音をつぶやいた曲ですね。

――では、もう一つの新曲「笑顔」は?

Aimer:離ればなれになっても、自分も笑顔でいたいし、相手にも笑顔でいてほしいっていう気持ちを表現しました。今までのシングルは、夜空とか星とか、夜をイメージさせる曲が多かったんですけど、この「笑顔」は寂しさを帯びた日だまりみたいな、わりと、まだ明るい時間帯の曲になっています。

――そういう意味では、今までになかったタイプの曲で、「AM02:00」もダンサブルな曲調だし、新曲は新境地に踏み込んだ感じもありますね?

Aimer:そうですね。“こういう面もあるんだよ”っていうのを知っていただきたかったので、新曲は挑戦した部分もありますし、それぞれ違った3曲になったなと思っています。

――それにしても、Aimerさんの歌詞って本音がすごく出てるなと思うんです。で、そうやって自分を音楽や絵画や何かで表現する人って、言葉で自分を伝えるのが苦手というか、逆に言うと、言葉で直接うまく伝えられないから、何かで表現するっていう人が多い気がするんですけど。そのへん、Aimerさんはどうでしょう?

Aimer:ああ……それはあるかもしれないですね。私は友達と大人数でおしゃべりするより、一人で本を読んでる方が好きだったりするし。大勢でいると、いろいろ考えちゃうんです。嫌な気分になってる人はいないかな? とか(笑)。

――(笑)じゃあ普段、オフの時は家で一人で過ごしたり?

Aimer:そうですね。でも散歩はします、一人で。で、それを日記に書いたり。

――ブログじゃなくて日記?

Aimer:はい。ブログはやってないです(笑)。あんまりオープンにしたくないというか……。だから、自分を出せるのはやっぱり、歌詞とか歌ってる時になりますね。

――なるほど。『Sleepless Nights』も、そんなAimerさんの中にある想いがあふれてますよね。

Aimer:はい。すごくいい1stアルバムになったなと思いますし、ぜひ眠れない夜に聴いてもらえたらなって思います。聴いて気持ちよく眠ってもらえたらなって。

――眠れない夜だけ? 昼間は?

Aimer:あ、昼間も! 夜しか聴いちゃダメですっていうのはないです!(笑) 好きな時間に聴いていただければと思います(笑)。

取材・文●赤木まみ

<1st album『Sleepless Nights』購入者対象ライヴ>
●大阪会場:ビルボードライブ大阪
日時:2012年10月26日(金)※19:00開演予定
招待数:125組250名様
●東京会場:都内某所にてバンド編成で開催
日時:2012年11月4日(日)※19:00開演予定
招待数80組160名
●仙台会場:仙台市内ライブハウスで開催
日時:2012年11月8日(木)※19:00開演予定
招待数:40組80名様
●福岡会場:福岡市内ライブハウスで開催
日時:2012年11月30日(金)※19:00開演予定
招待数:30組60名様
※『Sleepless Nights』封入の専用応募はがきで応募・抽選
※対象商品:
『Sleepless Nights』初回生産限定盤(DFCL 1930)
 『Sleepless Nights』通常盤(DFCL 1932) ※初回仕様のみ

1st Album
『Sleepless Nights』
2012年10月3日発売
【初回生産限定盤】(CD+DVD)
DFCL-1930~DFCL-1931 ¥3,500(tax in)
初回生産限定仕様:
DVD:MUSIC VIDEO 4作品を収録。「六等星の夜」はNO.6 SPECIAL EDITを収録。
スペシャルカバースリーブ封入
特典応募ハガキ封入(近日詳細発表)
星屑クリアトレイ
【通常盤】(CD)
DFCL-1932 ¥3,059(tax in)
初回仕様:
スペシャルカバースリーブ封入
特典応募ハガキ封入(近日詳細発表)
星屑クリアトレイ

[DISC-1]CD
01. TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR -prologue-
02. 夜行列車~nothing to lose~
03. あなたに出会わなければ~夏雪冬花~
04. 笑顔
05. Re:pray
06. 悲しみはオーロラに(Restarred by Takagi Masakatsu)
07. 寂しくて眠れない夜は
08. AM02:00
09. 星屑ビーナス
10. 雪の降る街
11. 冬のダイヤモンド(Re-echoed by Genki Rockets)
12. 六等星の夜
13. TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR

[DISC-2]DVD
Re:pray
雪の降る街
あなたに出会わなければ~夏雪冬花~
六等星の夜~NO.6 SPECIAL EDIT~
※「六等星の夜~NO.6 SPECIAL EDIT~」・・・フジテレビ“ノイタミナ”アニメ「NO.6」のアニメーションを使用したSPECIAL EDIT。長崎健司監督によってAimerの1st albumのためだけに編集され、数々の名場面を「六等星の夜」にのせて振り返ることのできる感動的な映像作品。

◆Aimer オフィシャル・サイト
◆Aimer twitter
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