【インタビュー】RIZE、「同じことを歌い続けるのは、まだまだそれが足りてねえからなんだ」

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ついにRIZEが還ってきた。しかも過去のどんな瞬間よりも強力な状態で。実に2年5ヵ月ぶりの新音源ということになる「LOCAL DEFENSE ORGANIZATION」は、ワーナーミュージック移籍後第1弾シングルにあたるもの。しかもあの“味長続きガム”ストライドとのコラボレーションによる作品になっており、ビデオ・クリップやアートワークもそれとリンクしたものになっている。そして当然ながらこの最新曲に、今現在のRIZEのさまざまな可能性と多面性が凝縮されていることは言うまでもない。今回はJesseが、この楽曲に込められた“永遠に忘れずにいるべき今の気持ち”について語ってくれた。

◆[Stride×RIZE×YOU]「LOCAL DEFENSE ORGANIZATION」PV映像

――まさに待望のニュー・シングルの登場ということになりますが。

Jesse:そうだね。もう前のアルバムの『EXPERIENCE』から2年半近く経つのかな。なんか信じられないな。自分でもRIZEの新作が待ち遠しかったというか。このシングルももちろんなんだけど、実は今、もうアルバムを見据えながら作業をしてて。そこで自分たちの音楽に感じてる幅広さを、この曲でちょっと垣間見せられたらいいなと思った。気の早い話だけど、次のアルバムは今までのとはまったく違ったものになるし、それを象徴するのがこの曲ってことになると思う。

――現在のRIZEなりの音楽的な多面性が、この曲に凝縮されているってことですか?

Jesse:うん。実はレコーディングのやり方自体がかなり違ってて。うちのスタジオとあっくん(金子ノブアキ)のハウス・スタジオを使いつつ、あれこれやり取りしながら進めてるのね。本当は全員集まって“せーの”でやりたいのもやまやまなんだけど、同時に、新しいやり方にチャレンジしたいなというのもあって。せっかくお互いにハウス・スタジオの環境を整えてきたわけだしさ。俺らは基本、ライヴでCDと同じことをしようとするバンドじゃないじゃん? あくまでやっぱりライヴ・バンド。それに対してCDは実験の場なんだよね。YMOみたいなことをするわけじゃないけど(笑)、毎回毎回、やっぱり自分たちなりにエクスペリメントするようでありたいから。

――いわばレコーディングは理科でライヴは体育、みたいな。

Jesse:そうそう。俺はホントにそう捉えてるから。レコーディングは実験室でやるものだってね。で、ライヴではどんなふうに違うことができるかを体育館で求めていく感じ。しかも最近の曲では、あっくんも結構歌ってたりする。バンドに3つの声があるんだったら、それは使うべきだと思うしね。あと、俺らみたいなバンドの場合、ライヴ・バンドとしての自覚が強過ぎて、一発目のテイクをすごく重んじるところがあって、そこにこだわり過ぎるあまり実験しきれてなかったところがあった。そういう部分を今のやり方は解消してくれてるんだ。たとえばこの「LOCAL DEFENSE ORGANIZATION」については、基本的にはすげえ“リフもの”だけど、途中にすごく宇宙っぽくなるところがあるじゃん? あそこは完全に“あっくんワールド”で。もろにリフっぽいのは俺の世界観。一緒に向き合いながら作ってたら、できなかった曲でもあるんだよね。お互いにやり取りをしながら、アイデアを合体させたことで完成した曲だから。

――その融合の仕方が新しいと思うんですよ。だからこれは、いかにもJesseらしい曲でも、いかにもあっくん的な曲でもなく、ありそうでなかった曲に仕上がっていて。

Jesse:そうだね。いい感じで混ざり始めてきたかもしれない。『EXPERIENCE』の曲で言うと「MUPPET」とかもそうやって投げ合って作った曲なんだけど。

――そういう意味で言えば前作の発展形でもあるし、新たな第一歩でもある。しかも今回のシングルは、移籍第一弾だったりもするわけですけど。


Jesse:うん。実はこれが移籍後第一弾のインタビューだからね。ワーナーのオフィスに来たのも、今日が初めてだもん。初めてなのに子連れで(彼はこの日、娘を同伴)、しかも遅刻しちゃって申し訳ないんだけど(笑)。たまたま今日は、俺が子守担当だったんで。大丈夫かなって、ちょっと不安でもあったんだけど、まあこれが今の俺ってことで(笑)。

――そういうリアルさは大歓迎です(笑)。やっぱりこういうタイミングで出す作品というのは新たな名刺代わりにもなるわけだし、1曲で今のRIZEを物語るようなものが出したいという気持ちもあったはずですよね?

Jesse:元々はね、新曲のなかでもあっくんが作ってきた「THE SUN」をシングルにしようと思ってた。いちばんライヴでもやってきてたし、全員そのつもりでいたんだよ。だけど結果的に「LOCAL DEFENSE ORGANIZATION」のほうを選んだことにはふたつ理由があって。まず、サポート・ギターのRIOがいる状態で作った曲にしたかったのね。「THE SUN」はそれ以前からあった曲だから。バンドによっては考え方も違うだろうけど、うちの場合、今のRIZEはRIOも含めた4人だと思ってるから。でね、そんなときにたまたま、ガムのストライドとのタイアップの話が来て。そこで向こうに「こういうリフの感じ、いいですね」って、この曲を拾ってもらえたんだ。それがもうひとつの理由。実際、これは元々、俺がソロで使おうと思ってたリフなのね。実際にはもっとヒップホップ的なものに仕立て上げようとしてた。俺たちの場合、そうやってちょっと料理法をいろいろ考えちゃって、こむずかしいことをやろうとする傾向もあるんだよね。でもそこで「こういうリフもので行きたいですね」って言ってもらえたときに、「ああ、俺たち、これでいいじゃん」って気付かされて。そこで肩の力が抜けたっていうか。そこはすごくストライド側に感謝してるんだよね。

――実際、RIZEの代表的な曲はどれもリフが象徴的だと思うんです。

Jesse:そうそう。それこそ「ZERO」とかもそうだし。ああいう曲はフェスでリハの時間がないとき、1曲目にやるとサウンドチェック代わりになって便利なんだけど(笑)。そうやって演奏してるときに、みんなに「リフがカッコいいよね」って言われて、そこで気付かされるんだよね。RIZEはリフのバンドだと思われてる部分があるんだなって。

――RIZEの曲について誰かに「ほらほら、この曲」と説明しようとするとき、口ずさむのはメロディじゃなくてむしろリフだったりしますからね、実際。

Jesse:わかるわかる。この曲の場合、昔のリフとはちょっと違うけど、そういう意味ではすごくRIZEらしい曲ってことになるのかもしれない。そんな経緯で、結果的にこの曲の存在が第一弾として浮上してきたわけ。だからね、当然4人で録ってますよ。

――さて、やっぱり訊かないわけにいかないのがタイトルやリリックの意味するところ。まずこのタイトルは直訳すると“地元防衛団”みたいな意味合いになりますよね? ある意味、日本で言うところの自衛隊を連想させるところもある。

Jesse:うん。ただ、べつに地球防衛軍みたいな次元の話をしてるわけじゃなくて(笑)。俺ね、震災後、震災に関連のある歌詞というのをこれまで全然書いてこなかったんだ。バンドでもソロでも、どんな場でも。だけど、たとえば「heiwa」なんてのを2006年に書いてたりする。そのときは結婚もしてなければ、子供もいなかったし、あんな災害もなかった。車もあれば彼女もいたし、自分でもホントに恵まれてた生活を送ってたと思うよ。好きなときにやりたいことをやってさ。鼻が高くなってたわけじゃないけど、当時の俺には欲がなかったと思う。それって最低だと思うんだ。要するにハングリーじゃなかったってことだから。欲深いのは良くないことだってみんな言うけど、それは逆に、生きてる証拠でもあると俺は思うんだ。だけどそういう、欲も何もない満ち足りた状態が、2006年の俺に訪れて。で、どんなときでも俺は、自分のために歌詞を書くのね。他の誰かのためじゃなくて。つまりあの当時は、めちゃくちゃ平和ボケしてる自分がいたから、そんな自分のために「heiwa」を書いた。で、不思議なことに、震災後はその「heiwa」に自分自身が救われる部分がすごくあって。何回も聴いたし、ライヴでもずっとやってきたし。なんかいい言葉を発することができてる気になれてたし…。だけどね、たとえば広島と長崎の人しか知らない平和の意味もあるはずだと思うんだ。核に反対することの意味が、次元として違うところがあるはずだよね。で、話はちょっと飛躍しちゃうけど、日本は自分たちの国を守るために、こっちから闘いを仕掛けるわけにはいかない国じゃない? 自衛隊も、攻めていくためじゃなく守るためにあるもの。それはすごく理解してるつもりなんだけど、同時に平和って、ある意味アグレッシヴに守とうとしていかないと守り抜いていけないものなんじゃないかとも思うんだ。だからこれは、言ってみれば“積極的に守っていく”ための歌。まずは、自分たちの場所を守ること。すべての街がそのマインドを持てたら強いんじゃないかなと思う。そういうことを歌ってるつもりなんだ。

――デリケートな問題に、自分なりに真正面から取り組んだわけですね。

Jesse:うん。同時にそれは、いい年齢になりつつある兄ちゃんたちが、小学生たちの前でどういうロール・モデルになり得るかってことでもある。「LOCAL DEFENSE ORGANIZATION」は、そういう団体でもあるんだ。子供たちが「このお兄ちゃんたちみたいになりたい」って言ってくれるようなチームっていうかね。ただ攻撃するだけなら、ぶん殴りゃいい。だけどディフェンスするときは、まず考えなきゃいけない。拳じゃなくてアイデアがある。それをこっちの強味にしたいんだ。そうなっていくためのバックアップを、RIZEができたらいいなと思うんだ。次の時代を担っていく子供たちのためにもね。だから今、思い出したんだけど、当初はこの曲のサビを子供たちに歌わせたいなとも思ってた。

――それは是非、しかるべきタイミングにアルバム・ヴァージョンで(笑)。話を聞いていると、なんだかこれは、ある意味「heiwa」に対する回答のような曲でもあるわけですね。

Jesse:同じじゃないけど結構一緒ですね、俺にとっては。アンサー・ソングと解釈してもらってもいいのかも。あれを作ったときの自分と、今の自分の、視点の違いがあるだけで。あの曲を作ったときは「平和って言葉がもうなんか懐かしく聞こえねえか?」と思ったわけだけど、今はそれが必要なんだよ。あまりにも欲しくてしょうがないのが平和なんだよね。だけど同時に、相変わらず平和ボケしたままの人たちもいる。そのアンバランスさがとんでもないことになってるなと思うんだ。実はこないだ、被災地に子供たちの遊び場を作りに行ったんだけど、まだまだ酷い環境のままの場所も多いんだ。そこには環境がまるでベターにならないなかで、気持ちだけでもベターになろうと努力してる人たちがいる。それに対して世の中には、ブームみたいな感覚でボランティアをやってる人たちもいる。その差がとんでもないことになってる。「俺はこんだけ寄付したぜ」みたいなことが、ブランドものを買い揃えるのと同じような次元のことになってたりする。だったら1日だけでも被災地に向けて祈ったほうがいい。俺はそういう気持ちなんだよね。

――この曲の歌詞も“311”という言葉から始まっていますけど、それ以前の記憶、それ以降の経験、視線の変化…そういったものが全部ここに詰まっている気がします。

Jesse:そうだね。しかもこれは、また何度も起こり得ることだから。だから311も思い出すべき日だし、911も思い出さなきゃいけない日…。あと、同じように811もね。ちなみにそれは、俺の誕生日だけど(笑)。

――それは忘れておくことにします。

Jesse:ははは! でもね、ホントにいつ何が起こるかわからないし、もっと酷いことが起こるかもしれないのと同時に、もっと嬉しいことが起こる可能性もある。そういうことを忘れちゃいけないと思うんだ。だからこの歌詞は、べつに悲しい出来事ばかりを羅列したものじゃないし。だから聴いててもきっと、楽しさが伝わると思うんだ。

――ええ。同時に広がりもある。ストライドとのコラボというのも、“広がり”を求めるという意味においてはすごく重なるところがあったかもしれませんね。

Jesse:そうだね。まあ、タイアップとかそういう大人の事情は、俺にはどうでもいいことでもあるけど(笑)、そのおかげで歌詞の世界が広がったというのはある。ストライドがスローガンとして掲げたいのが“NEVER GIVE UP”ってことだったりするんだよね。要するに“味が長持ちする”ってこととも関係があるんだろうけど(笑)。でも、自分の味を長く出せるってことは俺らにとっても大事だからさ。歌舞伎役者だって、そういう人たちだけが何十年も舞台に立ち続けられるわけだし。演目も変わらないのに観に来る人がいるのは、その人ならではの味があるからこそでしょ? うちの地元でも何故かよく売れるコロッケがあるんだけど、それはずっと変わらない味があるからなんだよ(笑)。なんかみんな、変わらなきゃいけないと思い過ぎてるところがあると思う。変化することにばっかり必死になりすぎてるっていうかさ。それよりも、自分の味を見極めることのほうが大事だと俺は思う。

――ええ。さて、カップリングにはライヴ音源が3曲収録されています。ここに詰め込まれている熱も、なんか表題曲とリンクしている気がするんですよ。

Jesse:そうだね。実は俺、ずっとライヴCDを出したかったの。DVDじゃなくて。それがある意味、ようやくちょっとだけカタチになったっていうのもあるんだけど。この音を聴いて自分で思ったのは「今の俺が中学生で、この音聴いたら、絶対惚れるな」ってこと。「LOCAL DEFENSE ORGANIZATION」が来て、この3曲が来て。しかも「KAMI」も「RESPECT」も「GHOST」も、震災よりずっと前に書いたものなのに、すごく表題曲で言ってることに繋がる部分があるんだ。聴いてて自分ですごく熱くなった。サイコーなバンドだなこいつらって、自分で思ったっていうか。

――常にポジティヴなことを歌ってきたからこそ、年月を超えて繋がってるんだろうと思いますよ。世の中がポジティヴなときも、そうでないときも。

Jesse:そうかもしれないね。今までずっと言われてたんだ。「Jesseっていつも同じようなことしか歌わないね」って。そこでちょっと、俺自身が迷子になりかけてたときもあった。でも、今は思うんだよね。同じことを歌い続けるのは、まだまだそれが足りてねえからなんだって。だから、こういうことを歌い続けてきて良かったなと思う。

――このシングルを経て、10月23日にはツアーも開始。同時に今は2013年に向けて、いろんなことが進んでいるわけですよね?

Jesse:そうですね。これからワーナーの新しい仲間たちと、どういう新しいストーリーを作っていくのか…。俺はぶっちゃけ、会社はどこでもいいのね(笑)。だけど、一緒にやる人たちをワクワクさせたい。この新しいホームを基地にしながら、なるべく日本のために世界に出ていきたいと思う。世界に出て、「俺たちは日本のバンドだ!」って、声を大にして言いたい。でも、とにかくこれからの音源を楽しみにしててくれていいよ。これまでのRIZEとは違うから。各々が個人として強くなってきたことで、合体ロボとしての強さを確実に増してると思うからね(笑)。

取材・文:増田勇一

「L.D.O.」(LOCAL DEFENSE ORGANIZATION)
2012年10月17日(水)発売
WPCL-112718 (ステンシルジャケット&ステッカー) \1.300 (tax in)
WPCL-11252 (CD) \1,200 (tax in)
1.L.D.O.
2.KAMI(2012. 5. 27 LIVE at AKASAKA BLITZ)
3.RESPECT(2012. 5. 27 LIVE at AKASAKA BLITZ)
4.GHOST(2012. 5. 27 LIVE at AKASAKA BLITZ)

<RIZE TOUR 2012 FALLIN>
10/23 [Tue] @TOKYO SHIBUYA-AX
10/26 [Fri] @SENDAI darwin
11/1 [Thu] @OSAKA なんばHatch
11/2 [Fri] @NAGOYA Electric Lady Land
11/7 [Wed] @OKAYAMA CRAZYMAMA KINGDOM
11/9 [Fri] @FUKUOKA DRUM Logos

◆RIZEオフィシャルサイト
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