【ライブレポート】リチャード・マークス、ビルボードライブ東京は総立ちに

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Billboard LIVE。この会場名にこれほど相応しいアーティストも珍しい。1987年から1989年、デビュー曲から7曲連続でBillboard HOT100チャートのトップ5に送り込む偉業を達成(うち3曲が全米No.1)した希代のメロディメイカー。この記録は、ソロ男性アーティストとしては20年以上経った今も実は破られていないのだ…会場内のBillboardの文字を眺めながらそんなことを考えていたら、本稿の主人公リチャード・マークスがたった一人で登場。マイクスタンド、チェアー、アコースティックギター、そしてピアノだけが置かれたステージだ。

◆リチャード・マークス画像

「コンバンワ、トーキョー」。美麗なアコギから聴こえてきたのは「エンドレス・サマー・ナイツ」。過ぎ去りし夏、1980年代の記憶、恋人との想い出、この曲が丁度ヒットしていた時に実現したリチャードの初来日公演、25年間エンドレスに続くリチャード・マークスのパフォーマンス……様々な想いが永遠のメロディと不変の歌声に吸い込まれていく。間髪入れずに「テイク・ディス・ハート」、「サティスファイド」。この時間が永遠に続けばいいとさ思えてしまう。

リチャード・マークスのソロ・アコースティック・ライヴのスタイルは、本国アメリカではすでにお馴染みだ。曲間に想い出やエピソードをはさみながら日替わりのステージを進行していく様を、言葉の壁を越えて日本でも実現させた。この日、初めてピアノに向かったのは、新作『インサイド・マイ・ヘッド』に収録されたバラード「スルー・マイ・ヴェインズ」。交通事故で亡くした父親との想い出に触れてからの弾き語りだった。直前インタビューで教えてくれた「僕のキャリアのなかでも最高の曲のひとつ」の言葉を思い出す。ステージと客席が近いゆえに、この夜、最も振り絞った声はダイレクトに耳に飛び込んできた。同時に、熱唱で会場の空気が震える。その振動が肌に伝わってきた瞬間、セットリストに一瞬でも懐メロを期待したことを後悔した。

この夜、アコースティックでアプローチすることによって、リチャード・マークスは自身の既発曲、新曲をほぼ生まれたままの状態で披露した。いわゆるアンプラグドスタイルは、小細工がいっさい通用しないだけに、創造力、表現力、演奏力が露呈されるが、リチャード・マークスはその非凡な技術に裏打ちされたパフォーマンスで会場を魅了した。気がつけば、“大人になった”観客たちが、過去の来日公演と同じように最後は総立ちとなっていた。リチャード・マークスの言葉を想い出す。「どうやって見せるか、どうやってオーディエンスの前で演奏するか。今、僕に出会ったくれた人よりも、次に出会う人により良く見せられるようにね」。はやく次のステージが観たい。

PHOTO:MASANORI NARUSE
文:安川達也

<リチャード・マークス@Billboard LIVE 2012年10月19日(金)>
1.エンドレス・サマー・ナイツ(『リチャード・マークス』より/'88年3月全米2位)
2.テイク・ディス・ハート(『ラッシュ・ストリート』より/'92年8月全米20位)
3.サティスファイド(『リピート・オフェンダー』より/'89年6月全米1位)
4.キープ・カミング・バック(『ラッシュ・ストリート』より/'91年12月全米12位)
5.ホエン・ユー・ラヴド・ミー(最新作『インサイド・マイ・ヘッド』Disc2より)
6.ハザード(『ラッシュ・ストリート』より/'92年4月全米9位)
7.スルー・マイ・ヴェインズ (『インサイド・マイ・ヘッド』Disc1より)
8.セイヴ・ミー (2008年『Emotional Remains』より)
9.ホールド・オン・トゥ・ザ・ナイツ(『リチャード・マークス』より/'88年7月全米1位)
10.ナウ・アンド・フォーエヴァー(『ナウ・アンド・フォーエヴァー』より/'94年3月全米7位)
11.オーヴァー・マイ・ヘッド (最新作『インサイド・マイ・ヘッド』Disc1より)
12.The One That Got Away(ケイティ・ペリーのカヴァー)
13.ライト・ヒア・ウェイティング(『リピート・オフェンダー』より/'89年8月全米1位)

ビルボードライブ東京公演(10月20日)
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=8253&shop=1

ビルボードライブ大阪公演(10月22日)
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=8254&shop=2
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