小泉今日子、4年ぶりのニューアルバム『Koizumi Chansonnier』は、デビュー30周年を迎え、ナイス・ミドルを生きる彼女の今が見事に浮き彫りになったアルバムだ。人生観や生活感情を織り交ぜたシャンソンをキーワードに、46歳になった小泉今日子という存在なくして生まれ得ない曲と彼女にしか歌えない深い味わいの歌は、いままでにない新しい魅力に富んでいる。ソングライター、参加ミュージシャンもさまざまなスタイルで彼女の唯一無二の個性を引き出す猛者が揃った。酸いも甘いも経験し、なおかつ軽やかにユーモアを忘れずに凛と生きる。そんな女っぷり全開のアルバムについて小泉今日子が語る。

◆小泉今日子『Koizumi Chansonnier』~拡大画像~

――まずは小泉さんがシャンソンという意外性に驚きました。

小泉今日子(以下、小泉):一般的にイメージされるシャンソンって、母親が聴いていたような「愛の賛歌」だったり、エディット・ピアフあたりだと思うんですが、今度のアルバムはそれだけではなくて、今の私が歌える歌って何だろうというところから始まったんです。だから、人生観を歌で描くシャンソンの作風を取り入れながら、結果、ジャンルに縛られることなくジャズからフォークまで入ったアルバムになりました。

――SOIL&“PIMP”SESSIONSの「Sweet & Spicy」はご自身の作詞ですが、“伊達に年はとってない”とユーモアを効かせた歌詞が痛快ですね。

小泉:これは「小泉今日子はブギウギブギ」という曲と同系列になるのかな。曲を聴いているうちにちょっと自虐的な歌詞が浮かんできて、“バブルの残り香”なんて言葉が出てきたりしますけど(笑)、あの頃の経験や友人は今の私の財産になっているので、今まさに遊び盛りのお嬢さんたちにエールをおくりたいと思って。

――「さすが小泉姐さん!」という声がかかりそうです。

小泉:そうですね(笑)。「小泉今日子はブギウギブギ」はリリー・フランキーさんが私をイメージして書いてくれた曲だったけど、今回は自分で言っちゃおうかなと。最近、夢を持てない若い人たちが多いっていうけど、どんどん遊んで、恋愛して、酸いも甘いも経験して大人になってほしいなと。

――大人の女性の可愛らしさが漂うのが、さかいゆうさんの「100%」。これも小泉さんの声とキャラクターだから映える曲ですね。

小泉:若い人が歌うと甘すぎるのかもしれないけど、今の私の歳で歌うと甘さだけではない味が出てくるような気がして。曲や歌詞にほんのり大人の仕掛けがあるところが歌ってて楽しいし、この夏のライヴでもすごく好評で、泣けたという女性も多々いました。

――菊地成孔さんの「大人の唄/Une chanson pour les grands」はまさに大人が歌うにふさわしい深い味わいのシャンソンですね。

小泉:“結婚・離婚、ぜんぶやった”という歌詞が出てくるんですが、菊地さんは私のことをまったく意識せずに書いたらしく、後で「すいません」って(笑)。菊地さんは私がシャンソンを歌うならパリではなく、小津安二郎の世界にしたかったみたいで、映画『東京物語』のイメージとも重なりますね。

――Curly Giraffeの曲に小泉さんが歌詞をつけた「プライヴェート」は、今の生活が垣間見えて、サウダージ感が漂う仕上がりに。

小泉:今回、自分が書く歌詞は私的なものにしようと思って、これは、今の私の生活心情そのままですね。たまに根も葉もない怪しい記事とか見かけますけど(笑)、海辺に引っ越してから仕事とプライベートの線引きができるようになりました。仕事の後、以前はクールダウンするためにそれこそ「ブギウギブギ」の歌詞みたく飲みに行ったりしてたけど(笑)、今は一人の時間が大事だし、好きみたい。そんなふとした瞬間を切り取ってみた歌詞です。

――バルバラの「わが麗しき恋物語」のカヴァーは女優、小泉今日子の表現力が発揮されたシャンソンと言えそうですが?

小泉:演技と一緒で、私はあまり大きいお芝居ができないので淡々と歌うしかなかったんだけど、それがこの長い恋物語を重い印象にしなかったのかもしれませんね。編曲の小西康陽さんのアルバム『11のとても悲しい歌』と通じる世界というか。こういう人生を振り返るような歌を歌えるような年齢になったといえるし、この歌詞は30代では歌えなかったと思います。

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