秋川雅史が歌う「天城越え」のド迫力

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秋川雅史の2年ぶりのアルバム『You Raise Me Up』が、最新のオリコンチャートで週間50位に初登場した。2007年にミリオンセラーとなった「千の風になって」の印象だけで見ている人もいるかもしれないが、実は、これで4作連続のアルバムTOP50入り。これは、クラシカル・クロスオーバーな歌い手の中でも異例の連続ヒットと言える。

◆秋川雅史画像

今回は、とりわけ収録曲の幅広さが話題となっているようだ。アルバムのタイトル曲「ユー・レイズ・ミー・アップ」や、多くの学校でも合唱されてきた「あすという日が」や「ビリーヴ」、そして「千の風になって」のニュー・バージョンなど様々なタイプのエールソングが収録され、彼の力強さと優しさを兼ね備えた歌声で癒される人も多いことだろう。

さらに、話題はこれに留まらない。本作には、演歌の「天城越え」や「越後獅子の唄」、J-POPの「瑠璃色の地球」、そしてフォークの「防人の詩」と、さらにジャンルを超越した楽曲もセレクトされているのだ。特に、評判なのが石川さゆりの「天城越え」で、ネット上では「インパクトあり過ぎ(@_@)」「もはや別の曲に聴こえるw」「ヤバイ、これは震えるよ」「天城山どころかエベレスト越えしそうな歌声!」など、その意外性にド肝を抜かれたという口コミが多発している。実際に聞いてみると、オリジナルの石川さゆり版は、「山が燃える」の“燃える”から女の情念や色艶を匂わせるのに対し、秋川雅史版は「山が燃える」の“山が”から、途轍もなく高くそびえ立つ山々、ひいては人生の苦難や、それに立ち向かう勇気を想起させるのだ。また、クラシックの歌唱法に囚われずに感情的に歌う部分も垣間見られ、より聞きやすくなっているのも興味深い。

他にも、イタリア語で“愛している!愛しているよ!”と絶唱するカンツォーネの「泣かないお前 Tu,ca nun chiagne!」や、『宇宙戦艦ヤマト』が地球に向かうBGMさながらの「瑠璃色の地球」なども興味深いし、また近年のLIVEでは北島三郎の「まつり」を、応援団にも引けを取らぬ咆哮気味に歌うなど、まさに、ジャンルを超えたクラシカル・クロスオーバーを体現している。しかし、それも弛まぬトレーニングによる歌唱力の維持があるからこそ、聞き手を感動させるのだろう。

最近は、「愛のメモリー」を14連発で収録した松崎しげるのメガ・ボリューム・シングルや、アニソンをすべて昭和のロボットアニメ風に歌った影山一郎のアルバムなど、超絶熱血系のCDが売れる時代。ジャンルを高らかに超越する秋川雅史が、今後さらに注目されることが大いに期待できる。

文:つのはず誠(T2U音楽研究所)

秋川雅史『You Raise Me Up』
2012年10月24日発売
初回限定盤A(フォトブック付)TECG-35068 \3,500(tax in)
初回限定盤B(DVD付)TECG-35069 \3,500(tax in)
通常盤 TECG-30070 \3,000(tax in)
1.君は我が心のすべてDein ist mein ganzes Herz(喜歌劇「微笑みの国」より)
2.ユー・レイズ・ミー・アップ You Raise Me Up
3.天城越え(石川さゆりカバー)
4.あすという日が
5.この道
6.防人の詩(さだまさしカバー)
7.瑠璃色の地球(松田聖子カバー)
8.越後獅子の唄(美空ひばりカバー)
9.泣かないお前 Tu, ca nun chiagne!
10.千の風になって (feat. 西村由紀江)
11.ビリーヴ Believe

◆秋川雅史オフィシャルサイト
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