【ライブレポート】the GazettE、聴き手の琴線を激しく揺らしたツアーファイナル「明日のこと考えてんじゃねぇぞ」

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2012年8月29日にリリースされたthe GazettEのニューアルバム『DIVISION』といえば、初回生産限定盤のパッケージは厚さ5cm、重さ1kgという前代未聞の仕様にも驚かされたが……。加えて、何よりもインパクトを受けたのは、もちろんその楽曲だった。前述の初回生産限定盤では2CDという形式で、まさに“分離(DIVISION)”して収められていた現在の彼らのサウンド・スタイル。イコール、“ロックサイド”と“デジタルサイド”という二面性が[VEIN](静脈)、[ARTERY](動脈)と副題が付けられた2作のCDでそれぞれが表現されていたわけだが、その楽曲達は両方紛れもなく、彼らの中に流れる同じ“血”だ。

「今日は“深いところ”までいこうぜ……。気合い入れてかかって来い!」。10月8日(月・祝)よこすか芸術劇場を皮切りにスタートした全国ツアー<TOUR12-DIVISION-GROAN OF DIPLOSOMIA 01>の終尾を飾る、11月28日(水)&29日(木)NHKホール2days。そのステージからRUKI(Vo)が叫んだ、観客の熱気をさらに強烈に煽った咆哮をあらためて思い出す。よりダイナミックで生々しいバンドサウンドが響く、“ロックサイド”。ノイジーな電子音などと絡み合いながら、より激しく高揚感を誘う“デジタルサイド”。その両者は、彼らがこれまで追求してきた音楽性の中に共存してきたものであり、そのthe GazettEの己のスタイルがさらに“深いところ”まで突き詰められてさらなる進化を遂げたことを、『DIVISION』という作品は証明していた。

その進化を証明する楽曲達――より“深いところ”まで到達したという意味では、進化ではなく“深化”と言い換えることもできるかもしれないthe GazettEの新たな楽曲達は、筆者が目撃したNHKホール2daysの初日・11月28日のステージからも強烈なインパクトを伴って放たれた。

まず圧巻だったのが、[ARTERY]収録の「DERANGEMENT」や「GABRIEL ON THE GALLOWS」から始まった凄まじい高揚感。デジタルビートとシンクロしながら疾走し、かと思えばミドルテンポの重低音へ展開、そして再びハイスピードに急加速……。様々なテンポ感が交差しながら、それを巧みにギアチェンジさせて紡いでいく変幻自在のサウンドが、1階席から3階席まで埋め尽くした人波を揺らしに揺らす。滑らかなグルーヴ感を常に途切れさせず、かつ、あくまでも激しい音の塊を連射する一体感豊かなアンサンブル。それはまさに、the GazettEのサウンドがさらに強靭さを増したことを証明するにふさわしい。

そして、拳を何度も何度も叩きつけるようにして低音をはじき出すREITA(B)のプレイがインパクト大だった「CLEVER MONKEY」など、『DIVISION』の新曲に既発曲を要所に加えて展開していったこの日のステージ。その中で、音だけでなく視覚でも強く引きこまれた1曲は「RUTHLESS DEED」。暗闇の中でゆっくりと歩を進め、両手を広げるRUKI。それを合図にするかのように旋律が流れ出し、メンバーが背にするスクリーンには無数の光の粒が浮かぶ。その光の粒が、花弁のように赤く色づき、天へ舞い上がる。そして、モノクロームに変化した色彩で描かれた荒涼とした地平に、雨か雪のような黒い粒が舞い降りる……。映像と照明に彩りを添えられたステージを、観客は身動ぎせずに熱い眼差しで見つめる。

そんな、会場全体を楽曲の世界観へさらに強く引き込む劇的な光景から続いたのは、[VEIN]収録の新曲達。「影踏み」で麗(G)が奏でた、まさにその名の通り流麗なギターソロ。「籠の蛹」は、葵(G)が奏でるアコースティックギターの繊細な音色などを交えながら、ラウドロック的スタイルの轟音に情感漂う旋律を乗せていく。「歪」は、全身に力をみなぎらせて放つ戒(Dr)のドラミングでスピード感を再び加速させるとともに、その疾走感の中で、RUKIの放つメロディが楽曲のストーリーを表現力豊かに描き出す。

うなりを上げるスクリーム、儚い響きのか細い声、かと思えば天を仰ぎ、その場にひざまずき、むせび泣くような歌声を奏でる……。その一つひとつの音と言葉は、メンバー5人の感情の塊をダイレクトに伝えているかのよう。そして、『DIVISION』の“ロックサイド”を象徴するあまりにも生々しいサウンドは、the GazettEらしいドラマチックさを観客の心の“深いところ”まで強く刻み込む。

「ついに来たぜ、ファイナル……。今日、明日とあるけど、ここにいるヤツらは今日、悔い残すんじゃねえぞ……。全力でかかってこい!」。RUKIのアジテーションを合図に、会場全体がヘッドバンギングをぶん回した「Filth in the beauty」。メンバーの怒声のようなシャウトに、オーディエンスがすぐさま呼応した「PSYCOPATH」。さらに、再び『DIVISION』からの新曲「ATTITUDE」と「REQUIRED MALFUNCTION」で本編を締めくくり、轟音と熱気の余韻に重なるアンコールの声に戒とREITAが「Ride with the ROCKERS」で応える。

葵、麗、RUKIも加わったステージに、1階席から、2階席から、3階席から大音響の歓声が突き刺さってくる。そんなメンバーとファンの感情のやり取りもまた、バンド結成10周年を迎えた今も、その激しさを、濃さを、そして“深さ”を増しているように見えた。

2時間をゆうに超える長丁場のライブは、RUKIの言葉通り、ステージも客席も気合いが最後まで衰えない。そして、目の前の空気を切り裂くような鋭い爆音、RUKIの高らかなシャウト、オーディエンスのヘドバンが何度も、何度も、何度も、何度もぶつかり合った「関東土下座組合」でこの日のライブは幕を閉じた。

安らぎ、癒し、楽しさ、心地よさなど、人が音楽に惹かれる理由は様々なものがある。その中で、それこそ明日を忘れるくらい、我を忘れるくらいの高揚感を与えてくれる音楽を求める人も間違いなくいるはずだ。そして、the GazettEのライブには、それに応えるだけの力が確かにあった。聴き手の琴線を激しく揺らす重厚な聴き応えがあった。

このツアーの後には<TOUR12-13 DIVISION-GROAN OF DIPLOSOMIA 02>が、さらにその後には<LIVE TOUR12-13 -DIVISION-GROAN OF DIPLOSOMIA FINAL MELT>として、彼らの結成日である3月10日にさいたまスーパーアリーナ公演が待っている。ライブハウスでも、ホールでも、アリーナ/スタジアム級の大会場でも、今日一日で自分の全精力を使い果たすぐらいの耳をつんざく歓声が、the GazettEのライブにはこれからも変わらず鳴り響くに違いない。

取材・文●道明利友

NEW ALBUM
『DIVISION』
2012年8月29日発売
【初回生産限定盤】2CD+DVD
SRCL-8054~56 ¥6,666 (tax in)
【通常盤】CD ONLY
SRCL-8057 ¥3,059 (tax in)

LIVE DVD
『the GazettE 10TH ANNIVERSARY THE DECADE LIVE AT 03.10 MAKUHARI MESSE』
2013年1月9日発売

<LIVE TOUR12-13 DIVISION-GROAN OF DIPLOSOMIA 02>
2/2(土)札幌市民ホール
2/9(土) 山形市民会館
2/10(日)東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)
2/12(火)神奈川県民ホール 大ホール
2/13(水) 神奈川県民ホール 大ホール
2/19(火) 刈谷市総合文化センター(愛知)

<LIVE TOUR12-13 -DIVISION-GROAN OF DIPLOSOMIA FINAL MELT>
3/10(日)さいたまスーパーアリーナ

◆オフィシャル・サイト
◆BARKS ヴィジュアル系・V-ROCKチャンネル「VARKS」
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