【ライブレポート】吉井和哉にしか描けないドラマチックな音楽の未来への予感

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「皆さん一人が一つの点と、そして、僕らメンバーも一つの点となり、最後、素敵なハートが生まれたらいいなという……。ハートの見せ合いっこをするツアーです」

自身の2012年の活動を締めくくる全国ツアー、<.HEARTS TOUR 2012>のタイトルの由来をあらためてそう伝えた吉井和哉。

◆吉井和哉<.HEARTS TOUR 2012>画像

11月29日(水)、日本武道館を埋め尽くしたファン一人ひとりと、“心”が繋がるライブ……。そんな思いを込めたステージ上に立つ吉井は、力強く、妖艶に、たまらなく切なく、そして、太陽のように明るい笑顔で……。彼がこれまでに表現してきた様々な世界観をドラマチックに描いていてく姿は、まさに己の“心”の内にある感情を全てさらけ出しているかのようにも見えた。そして、吉井のライブには欠かせないギタリスト、“バーニー”こと日下部正則、吉田佳史(TRICERATOPS/Dr)、さらに生形真一(Noting's Curved In Stone/G)を始めとする強力プレイヤーのから成る楽器陣の圧巻のバンドサウンドを背に、武道館の広いステージを疾走し、かと思えばひざまづき、天をあおぎながら……。ボーカルはもちろん、表情、ボディアクションも含めた立ち姿全ての、豊か過ぎるほどの表現力が素晴らしい。

今回の<.HEARTS TOUR>のセットリストは、吉井和哉のこれまでのキャリアを凝縮して振り返っているかのようだった。THE YELOW MONKEY時代からの彼の愛称である「LOVIN!」と声援が飛ぶシーンも懐かしく感じた今回のツアーは、2012年にデビュー20周年を迎えたTHE YELLOW MONKEY時代からのファンは、リアルタイムで彼を追っていた当時の思い出が蘇るかのようなシーンもあったに違いない。そして、THE YELLOW MONKEY解散後から紡いできた歴史を、一つひとつ紐解いていくかのように披露されていった楽曲達はもちろん、その楽曲達の思い出を語る言葉も印象的だった。

「YOSHII LOVINSONという名前で、2003年の10月1日に「TALI」という曲でデビューさせてもらって……。この曲は、当時色んな意見があって。なんかちょっと、先が不安で、ちょうど30代半ばすぎたくらいで男としても色んな葛藤みたいなのがある中で、あと、すごく大きなものを自分が壊してしまったという……。そういう中で、でも、自分が鳴らしたい音があって、それをどうしても聴いて欲しいっていう気持ちで、自分が好きな音楽を追求したアルバムを作らせてもらって、出した当時すごく賛否両論あったんですけど。でも、YOSHII LOVINSON、もういなくなっちゃいましたけど、すごく頑張ってやっていたという……」

照れ笑いのようにも見える笑みを浮かべながら当時のことを振り返る姿に、会場全体から温かい拍手が降り注ぐ中で奏でられたのは、もちろん「TALI」だ。“足りないものは何だろう、足りないものはなんだろう……”。切々と歌い上げられる一つひとつの歌詞からは、この曲を作った当時の彼の心象や葛藤など、様々なものをあらためて想像せずにはいられない。と、同時に……。“一寸先が闇で、木っ端微塵になっても、おびえることなど何もない――!” 一際高らかに響き渡る力強い歌声からは、自身の新たなキャリアをスタートさせて前へ進んでいこうとしていた当時の決意があらためて見えてくるかのようだった。

そして、YOSHII LOVINSONから始まった彼のソロとしての音楽人生は、さらに新たな道へ続いていく。さよなら、吉井和哉……。これもまた様々な憶測を呼びそうなタイトルが冠されたツアー<TOUR 2013 GOOD BY YOSHII KAZUYA>を含めた、2013年の活動の予兆もこの日の武道館では仄かに見えた。

「来年の2月からのツアーは、<GOOD BY YOSHII KAZUYA>というタイトルがついていますけれど……。自分も、ひとつの時代がまた終わったような気がしていて。昔みたいなすごく内省的な部分だったりも何か違うのかな、もっと違う世界がもっと上に、それは下かもしれないけれど、何かあるんじゃないかと思って……。ゆっくり、大事に、自分にとっては革新的なオリジナルアルバムを何年先になるか分かりませんけど作りたいと心の底から思っていますので、気長に待って欲しいと思います」

2013年1月23日リリースのベストアルバム『18』には、この日のライブでも披露された数多くの既発曲に加えて、“革新的”と本人が言った新たな吉井和哉の姿を予告するかのような新曲達も収められた。そのひとつである「点描のしくみ」は、タンバリンを手にして躍動的にリズムを奏でながら、ポジティブなムードを感じさせる歌声を武道館に響き渡らせる。そして「HEARTS」も、力強さをさらに増す演奏を背に“次の場所へ――”と歌った歌詞は、まさしく“次”の道へと向かう吉井和哉の新たな決意を感じずにはいられない。

「自分の頭の中に、緑の絵本みたいな、影絵みたいな観覧車が回っていて、それが冬を迎えて……。その観覧車が止まったままYOSHII LOVINSONが登場したような、そんなイメージがずっとあって。最近ようやくその観覧車の雪が解けてきて、本当に綺麗な空気の中、綺麗な太陽が昇りだしてるような、そんなイメージです」

「HEATS」を歌う前にはそんな言葉も語っていた、この日の吉井和哉。THE YELLOW MONKEY、YOSHII LOVINSON、そして、吉井和哉……。大地が雪解けをして、春に新たな命が芽吹くかのように、そのキャリアが新たな扉を開けるとともに様々な世界観を彼は届けてくれた。聴き手の“心”を力強くつかむ、吉井和哉にしか描けないドラマチックな音楽がこれからどんな姿になっていくのか、今はとにかく楽しみに待つとしよう。

取材・文●道明利友

BEST ALBUM
『18』
2013年1月23日発売
【通常盤】(2CD)
TOCT-29115 ¥3,500(tax in)
【DISC-1】
1. TALI
2. CALL ME
3. FINAL COUNTDOWN
4. WANTED AND SHEEP
5. トブヨウニ
6. HATE
7. 20 GO
8. BEAUTIFUL
9. MY FOOLISH HEART
10. BELIEVE
11. 朝日楼(朝日のあたる家)[新録・カヴァー]
12. HEARTS [新曲]
【DISC-2】
1. 点描のしくみ[新録]
2. 煩悩コントロール[新録]
3. 血潮[新曲]
4. 母いすゞ
5. ノーパン
6. ビルマニア
7. ONE DAY
8. バッカ
9. WINNER
10. Shine and Eternity
11. LOVE & PEACE
12. FLOWER

【初回限定盤】(3CD+DVD)
TOCT-29112 ¥5,800(tax in)
【DISC-1】【DISC-2】通常盤と同内容
【DISC-3】【DVD】詳細未定

【完全生産限定アナログ盤】
(180G HEAVY VINYL/アナログ盤4枚組+3CD+DVD)
※レコードバッグ、ポスター付:TOJT-29112 \12,000(tax in)
【アナログ盤4枚組】通常盤と同内容、【3CD+DVD】初回限定盤と同内容
※その他、詳細は随時オフィシャルサイト他にて発表していきます。

<吉井和哉TOUR 2013 GOOD BY YOSHII KAZUYA>
2月23日(土)山梨/コラニー文化ホール(山梨県立県民文化ホール)
2月27日(水)東京/府中の森芸術劇場どりーむホール
3月2日(土)山形/山形県県民会館
3月7日(木)兵庫/姫路市文化センター 大ホール
3月10日(日)徳島/鳴門市文化会館
3月13日(水)大阪/高槻現代劇場 大ホール
3月15日(金)鳥取/とりぎん文化会館 梨花ホール
3月17日(日)岐阜/土岐市文化プラザ・サンホール
3月20日(水)群馬/桐生市市民文化会館 シルクホール
3月23日(土)長野/長野ホクト文化ホール
3月29日(金)長崎/長崎ブリックホール
3月31日(日)大分/大分IICHIKOグランシアタ
4月5日(金)茨城/茨城県民文化センター
4月7日(日)秋田/秋田県民会館
4月12日(金)北海道/苫小牧市民会館 大ホール
4月14日(日)北海道/旭川市民文化会館 大ホール
4月20日(土)山口/下関市民会館 大ホール
4月21日(日)佐賀/佐賀市文化会館
4月27日(土)福井/福井フェニックスプラザ
4月29日(月)島根/島根県民会館
5月4日(土)静岡/富士市文化会館ロゼシアター 大ホール
5月6日(月)愛知/一宮市市民会館
5月11日(土)和歌山/和歌山県民文化会館大ホール
5月12日(日)奈良/奈良県文化会館 国際ホール
5月18日(土)福島/あづま総合体育館

映画プログラム『YOSHII CINEMAS』
2013年1月11日(金)全国ロードショー
TOHOシネマズ六本木ヒルズほか日本全国の映画館
出演:吉井和哉ほか
チケット料金:劇場オリジナル特典付き一般共通前売券 2,000円(税込)
※シアターチケットはクリアファイル付き、その他プレイガイドはポストカード付き
/劇場当日券 2,300円(税込)

◆オフィシャル・サイト
◆EMI Music Japan
◆吉井和哉 オフィシャル YouTube チャンネル
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