自身の活動はもちろん、近年はGOING UNDER GROUNDやカジヒデキのサポート・プレイヤー、“環境goo”内で連載「フィールドスケッチ・シェアリング」を担当するなど多彩なフィールドで活躍するHARCO。そして、その妻であり、HARCOとのユニット“HARQUA”としても活動するシンガー・ソングライター Quinka,with a Yawnが主催する<きこえる・シンポジウム>が、2012年12月24日・吉祥寺キチムで開催された。

◆<きこえる・シンポジウム>画像

「もともとはQuinkaと、共同企画のイベントをやりたいねというところから始まりました。僕らはやはり家族なので、家のなかでよく話し合うことをテーマにしてみよう、と。モノや資源を無駄なく使おうということも出てきていたし、僕は以前から自然エネルギーにとても関心がありました。それを例えばインターネット発信などではなく、実際に話を聞いたり、何かに触れて感じてもらえる場を作りたいと思いました。ライブもあれば、より気軽に足を運べますよね」──HARCO

この<きこえる・シンポジウム>は、今回で11回目を迎えることとなった“音楽”と“エコ”のイベント。その内容は、HARQUAによるライブと、トーク・セッションとの2部制で構成される。トークテーマはHARCO自身も語っているモノや資源、自然エネルギーなどを始めとする環境問題に関することや、2011年の東日本大震災後は復興支援についても取り上げてきた。HARQUAのライブで心地よい音楽空間を演出するとともに、今の時代だからこそ必要だと感じる様々な話題を様々な人達と共有するためのエコ・ミュージックイベントだ。

「夏至と冬至に行われるキャンドルナイトの時期に合わせて、2007年の冬から半年に1度、全国各地で行ってきました。前半はゲストを交えてのトーク、後半は僕らのライブという構成になっています。これまではゲストに、環境ジャーナリストの方や環境分野のNPO法人代表の方のほか、2011年の冬には東日本大震災の復興支援活動を行っている方々をお呼びしました」──HARCO

約5年半の間に開催してきた10回のイベントでは、太陽熱を利用した家作りを推進する企業の方をパネラーに招いての、自然エネルギーに関するトークや、復興支援活動を被災地で行なっている方々やジャーナリスト諸氏を交えて、震災後の日本の現状、課題や未来への展望を語るトークなどが行なわれてきた。そして、そこで語られた言葉は、自身も宮城県・南三陸町でボランティア活動を行なったことのあるHARCOも含めて、実際にその現状を身を持って体験した人々が語るものということに意味がある。本やテレビ、インターネットなどのメディアを介して知識を得るのとは違い、人と人とが直接向き合ってダイレクトに伝えられた意見だからこそ、イベントに参加したオーディエンスへ強いリアリティをもって伝わるはずだ。

その<きこえる・シンポジウム>の第11回目となった今回のテーマは「本当においしい野菜は“タネ”からオーガニック!?」。HARCO、Quinka、同イベントには準レギュラー的に参加しているエディター、“BOOKLUCK”の山村光春さんが出演するとともに、“旅する八百屋”と銘打ち、全国のレストランや野外イベントなどを通して日本の有機農業生産者の支援などを行なっている“warmerwarmer”の高橋一也氏をゲストに招きトークが繰り広げられた。

「普段は、野菜の“タネ”を守る活動をしているんですけれども……。昔から続いている何百年、何千年という“タネ”が今、なくなりつつあるんですね」──高橋一也

現在、一般消費者が手に取っていると思われる野菜は、いわゆる“F1種”と呼ばれるものが多いという。この“F1種”は、成長が早い、収量が多い、形や大きさなどの規格が揃うなど大量生産・販売に向くとされているもので、特に都会の店舗で売られている多くの野菜はこの“F1種”になっているのが現状。と同時に、育てるのに時間と手間がかかり、出来る実の形や大きさも一つひとつ異なり大量生産ができないなど様々な理由で、日本の“古来種”の農産物がなくなりつつある現状もある。高橋さんが奔走しているのは、その日本で昔から受け継がれてきたものを守るための活動だ。

「スーパーさんとかに行ったら、(野菜の数は)50アイテムぐらいですかね? どこのスーパーさんに行っても、同じ野菜で。でも、じつはすごく色々な名前で、面白い色、形の野菜があるのに、それがなかなか市場に出てきていないのは感じていて」──高橋一也

「それは僕も感じてたんですよ。買物に行くときに、もっと色々……。レコード探しと一緒で、もっと色んな野菜を知りたいな、買いたいなって思うんですよね。お取り寄せもありますけど、なるべく手で触ったり匂いをかいで買いたいなって」──HARCO

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)や食料自給率の低下など、生産者にとっても消費者も、日本の“食”と“生活”を取り巻く環境は年々変わり、その中でなくしてしまうものも多くある。その現状を知ることは、一見は敷居が高い難しい話に感じるかもしれないが、今回の“タネ”の話題を含めた<きこえる・シンポジウム>で取り上げてきたテーマはどれも、今のこの日本の日常に直結するもの。だからこそ、音楽を入口にして、社会で起こっている様々なものに触れることができるこのようなイベントは、とても貴重な場だと思う。その一環として今回は、「食卓に季節を」をテーマに活動している“kaonn”さんの手による、“古来種”の野菜を使ったフードメニューが参加者に提供された。古来種野菜をそのまま食したり、その古来種野菜を使ったベジマフィンなど、この日提供されたメニューは、野菜本来のじつに自然な味わいを楽しむことができるものばかり。今回の<きこえる・シンポジウム>に足を運んだ人達は、様々な趣向を通して、これまでは知らなかった何か新たなものを感じたのではないだろうか。

そんな<きこえる・シンポジウム>のテーマに触れてもらうための入口になるのが、HARQUAの二人が奏でる音楽だ。鍵盤、アコースティック・ギター、メロディオン、打楽器、etc……。サポートギターのフタキダイスケも加えて、HARCOとQuinkaが奏でる音色はどれも、耳にも心にも優しい感触で響く。そして、HARCOは今回のテーマにインスパイアされて制作された新曲「種を探す」を披露、はっぴぃえんどの名曲「風をあつめて」も今回のテーマになぞらえて「種をあつめて」と題してカバーし、Quinkaとの美しい歌声のハーモニーを響かせる。

さらに、アンコールの「キャンドルナイト」は、電力に関わるテーマもこれまで取り上げてきた“音楽”と“エコ”のイベントの趣旨をまさに表現するかのような一幕。場内の照明や音響システムなど電力を使用するもの全てを消して、キャンドルの灯りに照らされながら、人の声と手だけで温かな雰囲気の音色を奏でた1曲は、12月24日のクリスマスイブ──“聖なる日”を彩るにふさわしいシーンだった。この<きこえる・シンポジウム>はHARQUAの生の音色をライブハウスよりもさらに近い距離で感じることができる場であり、彼らの音楽を味わうために足を運んだ人々にこの日のトークで語られたような様々なテーマを伝えることで、一人ひとりが何かか考えるきっかけになるイベントでもある。

「耕作放棄地の活用を行っている方々にいつか話を聞いてみたいです。自然エネルギーの高まりも追っていきたいですね。また、音楽と環境をつなぐ、サウンドエデュケーションという分野にも興味があります。以前は高尾山の生物多様性を学ぶために、お客さんと一緒に自然のなかに入っていくこともありました。そんなことにもまた取り組んでみたいです」── HARCO

このイベントで今後の取り組んでみたいテーマをそう語るHARCOは、HARCO+カジヒデキ+河野丈洋(GOING UNDER GROUND)名義でのCD『BLUE x 5 = Musabi Live !(ブルーバイファイブイコールムサビライブ!)』を2013年2月14日にリリース予定。Quinkaは、久しぶりになる自身のオリジナル・アルバムのリリースを2013年春に目指し、現在レコーディングの真っ最中。ふたりそれぞれの活動にもちろん注目していただくとともに、<きこえる・シンポジウム>でこれからもふたりが伝えるメッセージに、ぜひ触れてみて欲しい。まさにHARCOが言った言葉の通り、自分の好きな音楽を自分の手で探しに行くように、今まで知らなかった現実や情報を自分の足を使って知ることは意義深い機会となるに違いない。

取材・文●道明利友

◆HARCOオフィシャルサイト
◆“環境goo”HARCO連載「フィールドスケッチ・シェアリング」
◆Quinka,with a Yawnオフィシャルサイト
◆warmerwarmerオフィシャルサイト
◆BOOKLUCKオフィシャルサイト
◆kaonnオフィシャルサイト
◆吉祥寺キチム・オフィシャルサイト