12月28日(金)、クリスマスのベルリン、クロイツベルクの劇場Hebbel Am Uferにおいて1990年代半ばから活動しているベルリン・ポスト・ロック界の重鎮、トゥ・ロココ・ロット(To Rococo Rot)とバンダラナイク(Bandaranaik)のコンサートが行われた。アモン・デュールやファウストなどの1970年代ドイツのプログレッシブ・ロックからテクノ、エレクトロニカへの歴史的な流れを体現するバンドであるトゥ・ロココ・ロットと、コントリーヴァやミーナといったバンドで活動している女性ミュージシャン、2012年には日本にも来日したマーシャ・クレラ(Masha Qrella)とコーマイト(Komeit)のユリア・クリーマン(Julia Kliemann)からなるデュオ、バンダラナイク。ベルリンのポスト・ロックシーンを語る上で欠かせないアーティストが集う、素晴らしい企画。

◆トゥ・ロココ・ロット、バンダラナイク画像

まず2012年にライブ活動を開始し、2013年にはレコーディングの噂もあるバンダラナイクが登場。肩の力の抜けた心地よいマーシャ・クレラのリズム・ギターとユリア・クリーマンのツボを押さえたシンプルなキーボード、そして2人のヴォイスが絡みあって幸せな音空間に会場は包み込まれる。曲調はマーシャ・クレラの2012年の最新アルバムの楽曲に比べると、ワイルドさや原色感をかなり抑えた感じで、曲の構成もドラマチックというよりかはシック、反復的なミニマル・ミュージック風で、あえて例えるならば『オールド・ロットン・ハット』か『ドンデスタン』の時期のロバート・ワイアットの作品が女性ヴォイスで歌われている感じというか、女性ボーカル版ブライアン・イーノの『アナザー・グリーン・ワールド』というか、エヴリシング・バット・ザ・ガールのトレーシー・ソーンのソロ作品に近い感じ。マーシャ・クレラの音楽キャリアではコントリーヴァとミーナの中間くらいにあるのがバンダラナイクの音楽と言えるかもしれない。しかし、そのシックでミニマルな楽曲の演奏が進むにつれて、じわっと後からこみ上げてくるような静かなグルーブ感をバンダラナイクの音楽は持っている。今後のライブ活動に期待が高まるばかりである!

トゥ・ロココ・ロットのサウンドは、ある意味でベルリンを象徴するかのように、非常にクールで知的な印象を与えた。YMOがもしベルリンに生まれていたならば、たぶん彼らはトゥ・ロココ・ロットの音楽を演奏しているような気がする。楽器編成(ドラムス、ベース、エレクトロニクス)という面でも同じといえば同じだし。そして、多くの同編成のバンドが無機質で機械的な傾向にともすれば走りがちであるが、YMOもトゥ・ロココ・ロットも、じわっと後から身体の芯から突き上げてくるような暖かいグループ感を持っている点でも近しいと感じた。正直今日まで「ポスト・ロックとは何か?」というのを言葉でうまく表現できなかったのであるが、バンダラナイクとトゥ・ロココ・ロットのライブをみて、「それは、じわっと後からこみ上げてくるようなグルーブを持つ音楽」なのではないかと考えた。

踊りまくるベルリナーたちの喝采のなかでライブが終了。ベルリン、ポスト・ロックの忘年会がごとき、ベルリン・ポスト・ロックにまつわるミュージシャン、ファン、関係者が大勢集まる暖かい催しとなった。

文:Masataka Koduka

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