【インタビュー】BOOM BOOM SATELLITES、「厳しい状況や混迷の世の中でも、光を射すような感覚を少しでも感じられる音楽でありたい」

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国境の壁をぶち壊し、そして、ジャンルの壁をぶち壊し、世界中の音楽ファンに刺激的な作品を届け続けてきたBOOM BOOM SATELLITES。デビュー15周年のクライマックスとなる舞台への期待は高まる一方であるとともに、その舞台から、待望のニューアルバム『EMBRACE』の楽曲が高らかに響き渡るシーンを想像すると、今から身震いするほどの興奮が湧きあがってくる。画一的なものになってしまうより、“自由”であること――。今のBOOM BOOM SATELLITESが音楽を通して届けたいと願っているメッセージを、この紛れも無い大作から感じ取ってもらいたい。

◆音楽をもっと人の手に取り戻すぐらいの感覚でやらないと、どんなメッセージもきっと陳腐に感じてしまいますよね。(中野)

――オリジナルアルバムとしては『TO THE LOVELESS』以来約3年弱を経ることになりましたが、待った甲斐がありました。これまでは、“ロックとクラブミュージックの壁を壊す”というような表現をされることも多かったと思うんですが、そういう表現すらもはや超えてしまう感じの大作だと思います。

中野雅之(Prg&B)・川島道行(Vo&G):ありがとうございます。

中野:ここ何年かは、そういう“あるジャンルとあるジャンルの~”みたいな感覚はどんどんなくなっていて、そういう役割を担っている気分とか気負いもないんですけど……。ただ、ひとつあったのは、純粋に“音楽が好き”っていう感覚というか。例えばフェスに出たりしたときに、フロアをロックしていくような楽しみっていうのも純粋にあるし、その反面、最近のフェスは“盛り上がってなんぼ”的なところで、ちょっと窮屈に感じるところもあったりして。短いセットリストの中で、盛り上がったか盛り上がらなかったかっていうのがお客さんの評価に直結しちゃって、それぞれ持ち味が違うバンドでも、ある程度揃ってきちゃうようなところがあるのは、個人的にはちょっとつまらなくなってきたかなって。ていうようなことを感じていたりした中で、もっと自由にやりたい、もっと自由に音楽を作りたいっていう感覚で臨んでいたかもしれないですね、今回の制作には。だから、ビートがある曲はそのビートが気持ち良いものとして存在して欲しかったり、インダストリアルなテイストの曲はそのテイストの機能が果たされるべく形になって欲しい、とか。1曲1曲、その曲自体が持っている表現力をサポートする形で、あるいは押し上げる形で様々な音楽スタイルというか、手法だったりを自由に扱っている感じはします。

――確かに、「FLUTTER」や「DISCONNECTED」はフロアを思いっきりロックさせると思いますし、そういうアッパーチューンの一方で、「SNOW」のように厳かな曲で胸が震えさせられたり。今のお話の“自由さ”は、アルバム全体ですごく感じます。

中野:そうですね。フェスにしても何でもそうだと思うんですけど、時間が経つとある意味、形骸化していくというか。遊び方、とらえ方が画一的になってきたりして。音楽にしてもそうですよね。最近の色んな音楽を聴いても、画一的なプロダクションって多いなと感じたりするものは、個人的にやっぱりあるし。でも、そうじゃない、“人肌の感覚”っていうか……。そういう意味で、今おっしゃっていただいた「SNOW」にしても、アコースティックギターのちょっとした弦の震えは、聴いていて、それを弾いている手元がビジュアル的にイメージできるぐらいの“人が見えてくる”音になっているし。他の曲でも、ボーカルのブレスの息づかいは目の前に歌い手がいるような感覚だったり、同じ部屋にドラムがいるような感覚だったり。そういう、“人の存在感”みたいなものが伝わる音にしないと。それこそ、音楽をもっと人の手に取り戻すぐらいの感覚でやらないと、どんなメッセージもきっと陳腐に感じてしまいますよね。だからこそ、音楽は作り手とリスナーの生々しいコミュニケーションの手段になれるんじゃないかと、僕は思っているので。

川島:この2年間は、前作を作り終えてからの色んな変化が……、自分達の環境の変化もあったりして、その中から少しずつ掴み取っていった世界観だったり、嗜好だとか表現欲だとか色々なものが、このアルバムには収められていて。それは、例えばさっきの話の、音楽を画一的とも思えるような遊び方、とらえ方をされている状況を見れば、自分達が何を提供していくことが良いことなのか、どうすべきかはおのずと考えなきゃいけないことでもありましたし。そういう意味も含めて、“人とどう関わっていくのか”っていうことに対して常に考えてきたものが、アルバムには詰まっていると思います。

◆いかに絶望的な環境であったとしても、そこをスタートラインにしなきゃいけないっていう思いはあるんですよね。(川島)

――“自由さ”というところでは、「HELTER SKELTER」をこういうスタイルでカバーすることも驚きました。この曲を、自身初のカバー曲に選んだ理由は?

中野:理由は……色々、ですね(笑)。初のカバーっていうことで本当に色々喧々諤々はして、ビートルズっていうわりとベタなものを選んだわけですけど。わりとベタなものだからこそ勝負のしがいがあるし、あらためてビートルズを聴いてみても、やっぱりすごく魅力的なロックバンドでしたし。それに、僕らはデビューから15年が経ったけど、今でもチャレンジャーなので、“こんなカバーのスタイルもあるんだよ”っていう、これをやること自体が、音楽ファンへのメッセージ的要素もわりと強いんじゃないかな。

川島:「HELTER SKELTER」っていう楽曲自体、“入れ物”がデカいですからね。この曲のリリックについてあらためて知ると、例えば遊び心もあって、愛についても歌われていて、人の狂気に触れている部分っていうのもあったり。ジョン・レノンは「深い意味はないよ」って言ったけれども、その後にみんなあれやこれや想像を働かせて、ああじゃないかこうじゃないかって今でも言われている作品なのはやっぱり面白いですよね。そういう部分でも、ビートルズってやっぱりすごいなと感じたし、さっき言った遊びの部分も、僕自身が自分達の曲でやりたいことに通じるものも感じたし。だからこそ、「HELTER SKELTER」をやる意味があるなって。

――そして、今回のタイトル曲でもある「EMBRACE」は、どんな思いを込めた楽曲なんでしょうか? 2010年から2012年にかけては、震災も含めて大きな出来事がたくさんあった期間でもありましたし。その中で導き出した答えのひとつが、ここにあるんじゃないかと思うんです。

川島:僕個人の心情の変化っていう部分でも、前作以降の2年間は本当に大きい2年間だったと思います。そういう中で、具体的な言葉を表現するにしてもより正直にならなければいけないと感じたし、人としての真価、表現者としての真価もそういうところから問われると思ったんですよね。だからこそ、常にそういうことを見つめながら、自分自身を見返しながら制作に向かう繰り返しの中で……。自分が本当に体感しているもの、あるいは願望だったりがスッと出てきた1曲ではありますね、「EMBRACE」は。

――「EMBRACE」は、“受け入れる”という意味などがある言葉ですね。

川島:はい。例えば、どうやって明るい未来を、より良い未来を、より良い明日を、より良い自分を、とか……。今言った、自分の中の“願望”みたいなものを考えると、“明”も“暗”もあっての“希望”というか。いかに絶望的な環境であったり、いかに辛い状況であったとしても、そこをスタートラインにしなきゃいけないっていうような思いは、僕個人としても、(中野と)二人で話していてもあるんですよね。だからこそ、落ち込んでいる自分だったり、絶望に浸っている自分から立て直すっていうか、立ち直るには、色んな意味で“赦されたり”“赦すこと”が必要だとも思うんですよ。人は赦されて、赦して、ありのままを受け入れていく行為が必要で……。それは簡単な行為ではないともちろん分かっているんですけど、“受け入れられる”感覚とか、“包まれる”感覚とか、何かを必要としている、必要とされるっていう相互の関係を持てることも、音楽があるべき形じゃないかとかな感じたところもあったので。

――それはまさに、さっき話していただいたとおりで。音楽を通して“人とどう関わっていくのか”っていうことに繋がりますね。

川島:そうですね。例えば、今のこんな厳しい状況だったり、混迷の世の中にでも、光を射すような感覚を少しでも感じられる音楽でありたい。そういう“希望”を共有したいっていう思いから出てきたフレーズでもあるし、曲でもあると思います。で、それは、作品だけじゃなくてライブに対しても同じで。場所をどこでやるかっていうのは大事な要素だとは思いますけど、それよりも、僕達の音楽を直接受け取った人達に何を持って帰ってもらえるのか、自分達は何を与えられるのかっていう思いで、ライブはどの現場でも挑みたいと思ってるんですよね。それは、それこそ武道館でも。ああいう広い空間だと、後ろの方の客席の人は“遠いところで何かが行なわれている”っていう感覚を抱くこともあると思うんですよ。そうじゃなくて、来てくれた人が何か直接的なものを持ち帰ってくれるだけのエネルギーを発したいですよね。それは、ステージの演出も、僕達の演奏も全て含めての話ですけど。

――個人的には、この「EMBRACE」のような壮大な楽曲を広い会場で聴きたいなと思いました。そういう意味でも、武道館がすごく楽しみです。

中野:楽しみにしてて下さい。本当に小さいライブハウスからツアーを始めて、武道館はその集大成になると思うんです。だから、とても重要な日になると思うし。武道館は、スタンド席がラウンドして、そこでしか作れない一体感みたいなものができるんじゃないかなと思っていて。すごい体験をしてもらいたいですね、来てくれる人には。

取材・文●道明利友

【編集部より】
このインタビューは、2012年11月末に行なったものです。
既報の通り、メンバー川島道行(Vo.&Gt)の脳腫瘍治療のため、1月~3月に予定されていたツアーは中止となりました。4月以降の3公演(4月23日 (火) Zepp Nagoya、4月25日 (木) なんばHatch、5月3日 (金祝) 日本武道館)については、治療の経過をみての最終判断が必要なため開催を一旦「見合わせ」、後日正式に公演の開催決定/延期/中止の発表がされます。
川島道行さんの病が完治し、復帰される日を待っています。


New Album
『EMBRACE』
2013年1月9日発売
【初回盤】
SRCL8162~4 ¥4,750(tax in)
【通常盤】
SRCL 8165 ¥3,059(tax in)

Remix Best Album
『REMIXED』
2012年11月7日発売
SRCL-8129~30 ¥3,400(tax in)
デビュー曲から最新シングルのリミックスまでコンパイルされたBBS初のリミックスBESTアルバム

1月8日(火)21:00~
『BOOM BOOM SATELLITES 「EMBRACE」リリース記念特番』
ニコニコ生放送 http://live.nicovideo.jp/watch/lv121295406
JAMBORiii STATION (Ustream) http://www.jamboriii.com/
YouTubeLive https://www.youtube.com/bbsliveSMEJ

◆中野雅之オフィシャルブログ
◆BOOM BOOM SATELLITESオフィシャルサイト
◆15周年特設サイト
◆BOOM BOOM SATELLITESオフィシャルFacebook
◆ブンブンサテライツ×niconico特設サイト
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