【ライブレポート】吉川友の<きっかフェス6>は『ザ・リクエスト・アワー』。ファン投票1位は「こんな私でよかったら」

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1月16日にトリプルA面シングル「世界中に君は一人だけ/Valentine's RADIO/チョコレート魂」をリリースした吉川友が、1月25日、品川ステラボールにて<きっかフェス6 ~ザ・リクエスト・アワー~>を開催した。

◆<きっかフェス6 ~ザ・リクエスト・アワー~> 画像(ライブに参加できなかった人は、まず本稿を最後まで読んだのち、写真を1枚ずつ順番に見ていくときっと楽しめます)

2012年2月からスタートし、ファンの間ではもはや恒例となった<きっかフェス>。その第6弾は『ザ・リクエスト・アワー』。これは、友フレの友フレによる友フレのための夢の祭典。ファン投票(吉川友のケータイサイトにて実施)によって選ばれた上位10曲を数日間にわけることなく1日(1時間ちょっと)で一気に発表してパフォーマンスするという、とにかくそんなライブイベントだ。

開演前、ロビーには<きっかフェス>名物のアバンギャルドなポスターアートをケータイで写真に収める人だかりがそこかしこで発生する。平日(金曜)の夜にも関わらず、首都圏はもちろん、名古屋や大阪、さらに自称・ハワイまで、各地の友フレ(=きっかファン)が、この<きっかフェス>を楽しむために品川に駆けつけた(ちなみに本公演は、シングル「世界中に君は一人だけ/Valentine's RADIO/チョコレート魂」初回限定盤A/B/C/Dに同梱されているイベント参加券で全員参加できる)。

時間を少し過ぎて、いよいよ開演。『ザ・リクエスト・アワー』のベストテン発表の前に、今回リリースされたニューシングルから「世界中に君は一人だけ」「チョコレート魂」の2曲が披露される。リリース日の渋谷でのイベントでは、風邪をひいてしまい、明らかに絶不調だったきっか。しかし、この日はその歌声を聴いてもわかるように、喉の調子も大幅に回復。<きっかフェス>までの間に地方でのリリースイベントや、ラジオ出演など多忙を極めていたが(イベント前日は深夜ラジオに生出演も!)、そこは“やればできる子、吉川友”。コンディションを上手く整えることができたようで、その歌声に多くの人が胸をなでおろしたことだろう。

「吉川友、ザ・リクエスト・アワー!」

かつて木曜9時から放送されていたベストテン形式の音楽番組を彷彿とさせる華々しいオープニングSEに乗せて、<きっかフェス>や各種イベントのトークコーナー司会進行ですっかりおなじみ、さわやか五郎のタイトルコールが会場に響き渡る。そしてさわやか五郎がステージイン。日本一、友フレからブーイングを受けている男は、今日も観客からの熱いブーイングのシャワーを全身に浴びて「やっぱりな <きっかフェス>でも ブーイング」と、会場を盛り上げていく。

そしてきっかが衣装をチェンジして再登場。「みなさんこんばんは!吉川友でーす。明けましておめでとうございます! 関係者のみなさんも明けましたー! いえーい!」と、冒頭から2階の関係者席に愛想を振りまいていくきっかスタイル。さすが今年成人式を迎えた大人のきっか、というべきか。さわやか五郎も「オープニングから関係者に媚びを売る人、初めて見ました。」と言葉を失う。客席は爆笑だ。

さらにこのきっかスタイルに衝撃を受けたのか、さわやか五郎「可愛らしい衣装ですね。これは何をモチーフにしているんですか?」と、きっかに投げかけてはいけない類の質問を繰り出してしまう。「これはですね、青と黄色をモチーフにしてます。」と、まさしく見たまんまのことを回答。それは色であってモチーフではなく、もちろんこれ以上の話は広がることもない。

そんなこんなで『ザ・リクエスト・アワー』、まずは10位から8位までを発表。「ダーリンとマドンナ」「きっかけはYOU!」「水色」と、1曲ずつ紹介されるごとに、フロアからは「おーっ」というざわめきが起こる。8位までのラインナップを目の前にして感想を求められたきっかは「とてもなんですかね、序盤から、とてもハードな……」とコメント。曲についてや投票したファンの気持ちを汲んでの感想ではなく、あくまでこれからステージパフォーマンスをする側(つまりきっか自身)の感想を口にしたが、これもまたきっか。「ノリノリな曲」と、さわやか五郎のフォローも入りつつ、投票したファンから寄せられた感想がいくつか紹介される。

「きっかけはYOU!」には、「きっかのファンになったきっかけの曲です。」「きっかファンになったきっかけの曲です。」「この曲がきっかけできっかを好きになりました。」と、ユーザーの9割から同じコメントがきたと説明されて、フロアには笑いが広がる(吉川友のソロデビュー曲なので当たり前といえば当たり前なのだが)。また「水色」に寄せられた21歳・女性からの「明るい曲調なのに歌詞が切ないというギャップが好きです。」というコメントには、「何がですか?」ときっか、即座に聞き返す。さらに「そんな歌詞でしたっけ?」と、本人はあまり意識せずに歌ってきた様子。ライブだとタオル回しで盛り上がる1曲というイメージのあるこの「水色」。しかし、確かに歌詞を読むと、昔、好きだった人へ想いを伝えたい、というやるせない気持ちを歌った切ない曲だったりする。

こんなふうに、新旧問わず吉川友作品の魅力をあらためてきっかを含む多くの人に広く伝える。これもまた友フレの役目だ(本人は気づいていなかったり忘れていたりすることが多々あるので、何気にこの役割は大切である)。

「ダーリンとマドンナ」のイントロがスタート。「最近、ダイエットをはじめた吉川友さん。合言葉は『明日から』だそうです。それでは歌っていただきましょう。第10位、『ダーリンとマドンナ』!」と、やっぱりTBSで放送されていた往年の音楽番組のような曲紹介とともに、きっかのライブパフォーマンスがスタート。キュートな振りも見どころの「ダーリンとマドンナ」に、多くの人のきっかけとなった「きっかけはYOU!」。「水色」ではタオルが宙を舞い、きっかの肌にも汗が浮かぶ。

アップテンポな3曲を連続歌唱したのち、感想を求められて「そうですね! ホコリがすごいですね! うん!」と、ステージの状態を目にしたまま述べるきっか。さらに今日の観客の盛り上がりについて訊かれると、「今日はやっぱり、えっと、木曜日ということがあって……」と発言。オーディエンスから曜日の間違いを指摘され「そうですね、今日はフライデーということがあって、みなさん元気ですね!」と言い直す。金曜日だと元気ならば、言い間違いのままにしていたら、きっかは一体どう発言するつもりだったのか。そんな疑問が浮かんだ人もいたかもしれない。しかしきっと、木曜だろうが金曜だろうが、きっかは「元気ですね!」と言ったはずだ。間違いない。

7位の「冬空花火」に対する20歳女性からの「大好きな人に振られた時、聴いて号泣しました。」というメッセージに、「わぁー、悲しい歌ですね!」と、自ら歌っているにも関わらず、きっかはどこか人ごとのような反応をみせる。さらに49歳男性から「離婚協議中に聴くとたまらん。」というメッセージが寄せられて、(笑ってはいけないとは思いつつ)みんな爆笑。

誰もが毎日楽しく過ごせるはずもなく、みんなそれぞれ大小違いはあれど悩みを抱えている。しかし、あえてそれをネタにきっかにぶつけると、不思議と笑いへと変わってしまう。笑って何かが解決するわけではないが、ちょっとだけ元気になる。これもまた<きっかフェス>であり、きっかと友フレなのである。

「冬空花火」「Early Snow」と、切なそうな表情を浮かべながら、表現力豊かにミドルテンポのバラードを歌い上げていくきっか。元気で、てきとうで、自由奔放な本人のキャラクターとはまた違ったその姿は、毎回、吉川友というボーカリストの底知れぬ可能性を感じさせる。このギャップは彼女の魅力といっていいだろう。

5位の「ヒラヒラ星」には、17歳女性から「気になっていた彼とイヤホン片方ずつで星を見ながら聴いた曲です。」と。さらに19歳男性からは「大切な人と、深夜の川辺でふたりきりで聴いた思い出の曲です。」というメッセージが。まさかこのふたり……という会場の期待を受けたのか、「カップルを探せ!」と、きっかはステージ上から客席を観察し始める。

しかしながら、前年の今頃は、アルバム『One for YOU!』をリリースして、やっと<きっかフェス>が開催できる状態になった吉川友(初単独ライブは2012年2月19日)。約1年が経ち、持ち歌はライブが開催できるギリギリのところから、リクエスト形式でセットリストが組めるほどに増加。さらにいくつかの楽曲は、リスナーの人生のかけがえのない瞬間を彩った思い出の1曲にもなっているという事実。今回、各楽曲に寄せられたファンからのメッセージは、同時に吉川友というアーティストの成長の証でもあるのだ。

ベスト3発表を前に、DJ NONによるTOP10に入らなかった曲も含めたノンストップMIXで、品川ステラボールにはクラブの雰囲気が流れこむ。オーディエンスもサイリウムを振ったり体を揺らしたりフリーダムに音に身を任せて楽しんでいる。

そうこうしているうちにライブTシャツに着替えたきっかが再びステージへ。DJブースに入り、「見せたい、みんなに。成果を!」と、“DJきっか”と言わんばかりに、ヘッドホンを片耳に当てて、ターンテーブルを熱くスクラッチ。さらに「きっか! きっか! きっか!」「痩せろ! 痩せろ!」と、コール・アンド・レスポンスを要求し、フロアを煽っていく。身体を貫かれるビートに合わせて、よくわからないままに「きっか! きっか! きっか!」「痩せろ! 痩せろ!」と声を合わせるオーディエンス。もっと声をほしがるきっか。その要求に応えようとする友フレ。ところが次の瞬間、「痩せろ! 」と会場の全員に大声で言われて、きっかは顔を曇らせる。自分で「痩せろ!」と煽っておきながら、言ったら言ったで今にも泣きそうな、悲しそうな表情(もっとも、直後に「最高!! かっこいいですねー! いいなーいいなー、きっかもDJさんになろう。……明日から。」と発言していたが)。この振り回される感じもまた<きっかフェス>。参加者は展開の速さに乗り遅れないよう、一瞬たりとも気が抜けない(ほかにも、きっかの言動に常に注意を払い、きっかへのツッコミや暴走の制止などを行なうなど、参加者には臨機応変な対応が求められる。しかしこのように全力で参加すると<きっかフェス>は、もっと楽しいものになる)。

3位は、吉川友がソロアーティストとして、2011年のハロー!プロジェクトの新春公演<Hello! Project 2011 WINTER ~歓迎新鮮まつり~>で初披露した「さよなら涙」。さらに2位は、きっか自身も自分のケータイで投票したという「Twinkle Days」が続く。「Twinkle Days」の歌の直前には、「あのー、これー、出すほうか、中にしまうほうか、どっちがいいですか?」と、自分が着ているライブTシャツの裾をどうすべきか、意見をスタッフではなく客席に求める。「スカートの中にインしてほしい」という声を受けると、「じゃ、よろしくお願いします。」と、DJ NONにマイクを渡し、きっかはステージ袖に消えていく。これまでもきっかからの細かい無茶振りは数多くあったが、衣装を直すという結構な尺を、DJなのに曲ではなくトークでつなぐという過去最大の無茶振りに、DJ NONは愕然。しかし、ともに“きっかに振り回される者同士” “戦友”ともいえる友フレから「きっかの印象は?」というナイスパスが飛び、「ほんと、あのままの感じですよね。天然さが尋常じゃない。普通に、ステージ上じゃなくても、ちょっと会話がね、ままならない。」と、素直に話をして笑いをとっていた。

「ほんとにみなさん、ありがとうございますね。2013年、始まったばっかり……あ、初ライブだ。いえーい! わすれてたー! 初ライブですよ! どうでしたかみなさん、楽しんでいただけましたか? また大きなところでね。2013年もミュージカルとか舞台も決まってますし、歌の方も懲りずに……懲りずに? どんどんどんどん、挑戦したいと思いますので、なんだかんだ吉川友ですよ? みなさん、ほかのところに行ってもいいですけど! 最終的には、また吉川友のもとに戻っていただけたらなぁ、と思います。これからも、なんだかんだ吉川友でよろしくお願いします。」

いよいよ「ザ・リクエスト・アワー」も残り1曲。1位を獲得したのは、きっか作品の中でも名曲と名高い、サカノウエヨースケ作詞・作曲、michitomo編曲の「こんな私でよかったら」。きっかの音楽活動を支え、友フレからの信頼も厚いmichitomoはもちろん、今回はサカノウエヨースケも客席からきっかのパフォーマンスを見守る中、きっかは終了予定時間を延長して(ライブTシャツの紹介をも忘れて)「こんな私でよかったら」を伸びやかに歌い、「謝謝!」という言葉とともに<きっかフェス6>のステージを降りた。

なお、吉川友は本公演終了後、3月から始まるミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』(出演:市村正親、鳳蘭 ほか)に向けて全力投球。この舞台が一段落したのち、きっか曰く「みなさんの頑張り……プラス、吉川友の頑張り」で、再び音楽活動を行なうものとみられる。

さて、公演終了直後、吉川友にライブの感想を訊いてみたので、最後に紹介しておこう。

  ◆  ◆  ◆

── きっかさん、お疲れさまでした。ライブ終わったばかりの感想を一言、お願いします。
吉川友:
感想ですか? ゴホンゴホン。

── ええ、感想を。
吉川友:
『ゴホンゴホン』で。お願いします。

── ……あ、ありがとうございました。

  ◆  ◆  ◆

ライブ中、DJ NONがきっかを評した「ステージ上じゃなくても、ちょっと会話がね、ままならない。」というフレーズ。その言葉の意味を誰よりもリアルに感じた瞬間であった。

【『ザ・リクエスト・アワー』 ベストテン】
1位:こんな私でよかったら
2位:Twinkle Days
3位:さよなら涙
4位:Sweetie
5位:ヒラヒラ星
6位:Early Snow
7位:冬空花火
8位:水色
9位:きっかけはYOU!
10位:ダーリンとマドンナ

text and photo by ytsuji a.k.a.編集部(つ)
◆BARKSかわいこちゃんねる
◆吉川友 オフィシャルウェブサイト
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