サンタナ、幻のフィルムコンサート「1973サンタナの軌跡」遂に上映

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2013年3月に7年振りとなる来日公演を開催するサンタナは、初来日から40周年という記念すべき年を迎えた。そんな40thを祝うべく、2月1日(金)渋谷公会堂にて1973年のサンタナ初来日公演時の幻のドキュメンタリー映像が40年の月日を経て上映された。

◆サンタナ画像

名ライヴ盤『ロータスの伝説』を生み、日本のコンサート史上に名を残すことになるそのサンタナ初来日公演は、実に密着ドキュメタンリー映像が残されていた。以前から関係者の間ではその存在が知られていたものの、行方不明になっていたというものだ。数年前に奇跡的に発見され、初来日40周年を記念し、このたびついに公開されたというものだ。発見された16mmフィルムには音声がなかったものの、発見されたフィルムのコピーを基に、数年にわたって映像と音を合体させる作業が行われたのだ。

ソニー・ミュージックの担当は「40年前のフィルムなので、経年劣化もあり、映像が観賞に耐えうるものなのか?音声もオリジナルがなく、コピーで完璧な状態ではなかったので(モノラル音声)大音量に耐えうるものなのか若干心配でしたが、見事に甦りました」と喜びを語る。

この貴重な映像の上映には、事前に5000人もの応募が殺到、抽選により約2000名が渋谷公会堂に結集することとなった。18時半の開場前には長蛇の列ができ、会場ロビーにはサンタナゆかりの超レア貴重アイテムも展示され、開場後ファンの方々が押し寄せ写真撮影を行なうこととなった。そこには「ロータスの伝説」ギネス獲得記念ディスク、1973年初来日公演時のチケット&公演チラシ、「ロータスの伝説」紙ジャケCD22面体、「ロータスの伝説」初版LP、今回発見された現物のフィルム、1973年初来日公演パンフレット、「ギネス」認定証という貴重すぎる数々。別コーナーには、サンタナ・ウッドストック出演時写真のコラージュアート(左下は伝説のビル・グラハム、なんとビル・グラハムのサイン入り)、PRS3本とレスポール、ぴあの表紙にもなった及川正通氏作イラストのポスター、2006年横尾忠則氏作『LOTUS 2006 (yokoo remix)』ポスターも展示され、多くの人を集めていた。

開演は19時。初来日公演とライヴ・アルバム『ロータスの伝説』制作に関わった諸氏を特別ゲストに招き当時の様子、思い出、秘話が語られた。司会は音楽ライターの大友博氏が務め、ステージには元CBSソニー・ディレクター、デザイナー、フィルム撮影者、サウンドエンジニア、現ディレクターが登壇し、トークショーが始まった。

当時シカゴ、ジャニス・ジョプリンなどを担当していた元CBSソニー・ディレクター磯田秀人氏は入社直後サンタナの担当になり、セカンドアルバムを『天の守護神』と名付けた。『ロータスの伝説』や今回のドキュメンタリー・フィルムの制作総指揮者でもある。サンタナのライヴ・イン・ジャパンの録音については「どうせOKするとは思わなくて、せっかく来るんだったらとライヴ録音とオファーしたら、あっさりOKが来てびっくりした。“冗談から駒”みたいなもんでした」と語る。「アートワークは横尾さんしかいないと思っていたから、大阪の公演のあとにカルロスに「パッケージはこの人にしたいんだ」と話して、横尾さんの作品を見せたら、カルロスがいたく感動して「素晴らしい」と。東京に戻ったら「この人に会いたい」ということになり、二人を会わせたら、お互い言葉は通じないんだけど、コミュニケーションが一時間くらい続いているという不思議な場面を見ました。」と当時のエピソードを明かす。今回のフィルムについては「地方の方は生で見れないから、少しでもサンタナの凄さを目の当たりにしてもらいたいと思ってフィルムコンサートをしようと思った」と企画意図を語った。

ギネス記録となった『ロータスの伝説』22面体ジャケットを横尾忠則氏と一緒に制作した当時CBSソニーのデザイン室のデザイナーだった田島照久氏は、横尾氏とのエピソードを「その頃の横尾さんはサブカルチャーのスーパースターだった。あのジャケットが完成するまで1年間かかった。横尾さんと初めて会った時、いきなり横尾さんが「今日UFO見たんだよね」といって紙ナプキンみたいのにUFOの絵を描きだした。UFOの話から始まって、その次はインドの精神世界とか、ずっとそういったのが8ヶ月くらい続いて…。実は最後の1ヶ月くらいで仕上げたんです」と驚きのエピソードを聞かせてくれた。

有名なロックフォトグラファーでもあり、今回の幻のドキュメンタリーフィルムを撮影・編集・制作したフィルム撮影者の井出情児氏は、1973年のサンタナの来日公演に同行したきっかけを、前年のシカゴの来日時に撮影をしたことから磯田氏から声をかけてもらったからと語る。「今度サンタナが来るから撮らないかと言われから、サンタナとか何もわからないままだったけど2つ返事でOKした」のだとか。「あ、そういえば当時の皆さんに謝らないと!当時はなんの決まりもなかったから、やりたい放題やって逃げちゃった。スミマセンでした!」と謝り、笑いを誘った。

サンタナ『ロータスの伝説』をはじめ、ベック・ボガード&アピス『ライヴ・イン・ジャパン』、チープ・トリック『at武道館』、ボブ・ディラン『武道館』などを作り上げたサウンドエンジニアの鈴木智雄氏は、1973年大阪厚生年金会館で実際にその現場でライヴレコーディングを行なった当事者だ。ライヴ・レコーディング秘話として「この話がでたときは、まだ16チャンネルのマルチレコーダーが日本には入ってきてなかった。ちょうど来日に合わせたくらいに日本に到着して、チェックして箱に詰めて、クレーン付きのトラックで大阪に送りました。」と、リアルな話を語る。「その当時のテープは10インチテープで30分しか取れなかったんです。16chのレコーダーは1台しかなかったので、4人がかりでF1のタイヤ交換みたいに、いかに早くテープを取り換えられるか…。事前練習もしました」と、壮絶なエピソードも飛び出した。

「当時24歳のレコーディング経験もない、いち洋楽ディレクターの僕にチャンスを与えてくれたCBSソニーという会社の太っ腹だったことに感謝したいということと、ロックという音楽が時代を変えるような勢いを持ってたときに洋楽セクションにいることができたということは、自分の人生を振り返ってみて幸せだったなと。あんなこと(*)をやらせてもらって、請求書が来て怒鳴られましたけど、それも含めて凄くラッキーだったと思います(*注:当時『ロータスの伝説』の製版代はベンツが一台買えるくらいの金額だったらしい)」──磯田秀人氏(元CBSソニー・ディレクター)

「僕は22歳で何にもわからないデザイナーでしたから、逆に世間を知らないことが、あんな凄いものになったのかと。それが災いのもとでもありましたけど、当時のいろんな皆さんにご迷惑をおかけしました(笑)」──田島照久氏(元CBSソニー・デザイナー)

「僕らは絵の出るレコードがいつか出るはずだと思って、とにかく“残す”ということを考えていた。だから10年たっても色あせないものを作りたいと考えてたんだけど、それが40年たって今、出てきたということだけでも、本当に生きててよかったと思いますね」──井出情児氏(フィルム撮影者)

「僕にとってはシカゴ、BBA、そして、このサンタナのライヴ・イン・ジャパンが、今のミキサー稼業をやっていける自信がついた、決定的な瞬間だった。感謝してます」──鈴木智雄氏(サウンドエンジニア)

約20分ほどのトークショーのあと、幻のフィルムが上映された。上映の3日前に完成したそのフィルムには、初来日公演のライヴの模様はもちろん、空港、ホテルや楽屋裏、リハなど、今では絶対あり得ないような、まさにサンタナ1973年来日時の密着ドキュメントが収められていた。

オープニングはホテルの部屋で祈りを捧げるカルロスからスタートする。日本各地でのライヴとともに、楽屋でのジャムセッション、当時としては珍しかった自家用飛行機での移動/機内の様子(SANTANAとペイントされたプライベートジェットで福岡板付空港に降り立った)、ドラムスを叩くカルロス、武道館で誕生日を迎えたマイケル・シュリーヴ(Dr)、ソニーからのゴールドディスク進呈式/パーティ、自分でチューニングするカルロス(今ではほぼあり得ない)、空港などでのファンとの交流など信じられない映像の数々が繰り出され、ライヴは「GOING HOME」「EVERY STEP OF THE WAY」「BLACK MAGIC WOMAN」「GYPSY QUEEN」「MANTRA」「LIGHT OF LIFE」「SE A CABO」「SAMBA PA TI」「INCIDENT AT NESHABUR」といった楽曲が収録されていた。

映像では、最後に「MEDITATION(瞑想)」という文字が現れる。クレジットのあと、しばらく無音が続き、幻のフィルムは終演。観客の誰もが口々に「凄かった」「素晴らしかった」と感想を漏らし、誰もが語りたくなる魅力にあふれていた。

今回の1973年サンタナ初来日公演時の幻のフィルムと、ギネス獲得22面体ジャケット、ライヴ・イン・ジャパン『ロータスの伝説』は「日本が世界に誇る音楽遺産」でもある。2006年に紙ジャケとして甦った『ロータスの伝説』は日本の洋楽CD復刻史上初めての「LIVE IN JAPAN」を当時のスタッフが集結して、再度制作するという試みでもあった。単なる復刻ではなく、人と人とのつながりで、新たな息吹を吹きこまれて生まれ変わったRE-CREATE作品なのだ。

そして、初来日40周年記念で来日するサンタナは、今もなお第一線で活動する現役である。ウッドストックからのラテンロック、40年前の日本公演でも見せてくれた精神世界に傾倒していた時期、グラミー受賞の『スーパーナチュラル』での大復活、最新作『SHAPE SHIFTER』の発売…と、時代が変わってもメンバー構成が変わっても、結成当時のスピリットのまま独自の音楽世界をクリエイトし続ける。偉大なサンタナの姿を目の当たりにして欲しい。

<サンタナ来日公演>
大阪公演:3月11日@大阪城ホール
東京公演:3月12日@日本武道館
東京追加公演:3月13日@東京国際フォーラム ホールA
http://udo.jp/Artists/Santana/index.html

『サンタナ/ロータスの伝説』
MHCP-1002-4(3枚組) \6,825(税込) 限定盤残り僅か

●BS-TBS「SONG TO SOUL」サンタナ ブラック・マジック・ウーマン特集
2013年2月6日(水)23:00~23:54(予定)
※2013年1月に行なわれた最新インタビューで語られる代表曲「ブラック・マジック・ウーマン」への思いを交えサンタナの偉大な歴史を紹介

●NHK総合「SONGS サンタナ」
2月23日(土)23:00~23:29(予定)
※最新インタビューで自ら語る生い立ち、ウッドストックでのデビュー、日本への思いなど。日本公演秘蔵ライブ映像を交えて栄光の歴史を紹介
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