【インタビュー】ベン・フォールズ・ファイヴ、「3人だけのケミストリーってやっぱりあるな」

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2012年、まさかの再結成アルバム『ザ・サウンド・オブ・ザ・ライフ・オブ・マインド』をリリースしたベン・フォールズ・ファイヴがついに待望の来日公演のためにやってきた。もちろん、ベン・フォールズ、ロバート・スレッジ、ダレン・ジェシーという、ノース・キャロライナ州チャペルヒルで結成された時のままの3人だ。ロバートはちょっぴり恰幅がよくなっていたものの、3人とも学生っぽさを残していて若々しい!

◆ベン・フォールズ・ファイヴ画像

そこで、ジャパン・ツアー直前、日本にやってきたばかりの3人をキャッチ。とれたてほやほやの最新インタビューをお届けしよう。デビュー当時と変わらぬパッションと瑞々しさを残しながらも、2000年の解散後、しばらくは別々の道を歩んでいた約13年でそれぞれ確かなスキルアップと成熟で一回り大きくなったよりベン・フォールズ・ファイヴ。今回の奇跡の来日公演、絶対に見逃さないでほしい!

――再結成後初となる『ザ・サウンド・オブ・ザ・ライフ・オブ・マインド』が本国アメリカでアルバム・チャートのトップ10入りという大ヒットとなりました。過去最高のチャート・アクションだそうですね!

ベン・フォールズ:そうなんだよ。本当に嬉しいことだよね。こんなに受け入れてもらえるなんて思ってもみなかった。出す前は不安も多かったけど、今は本当に良かったと思っているよ。

――今回は、最初にレーベルと契約して…という手順をとらず、クラウド・ファンディング・サイト(アーティスト自身がネットを通じてファンやリスナーから出資を募っていくシステム)を利用して試験的に楽曲を発表したりしていましたよね。

ベン・フォールズ:そう。でも、それも僕らには大きな決断というわけでもなく、すごく自然なことだったんだ。契約を先にしてしまうと色々と書類制作とか面倒だし余計な時間がかかってエネルギーを費やしてしまう。それにプレッシャーもかかってくるからね。それよりもこのやり方をしたことでリラックスして制作に集中できたのが一番大きかった。まず僕ら3人がいい感じでひとつになって音を出せる環境を作ることが先決だったわけだから、今回のやり方はかえってよかった。だからこそ、いいアルバムに仕上がったんだと思うよ。

ダレン・ジェシー:そもそも『ラインホルト・メスナーの肖像』(1999年)という僕らのアルバムを再演するというMY SPACEからの企画イベントのために集まったわけだけど、実際に新たな作品をレコーディングするとなると、やっぱりムードとか雰囲気が大事になってくるよね。でも、すごく自然に新録への道筋が出来てきていたし、現場も全く無理のない状態だった。3人一緒に作業することが10年もなかった僕らには、すごく理想的な流れだったと言えるよ。

▲ベン・フォールズ
▲ダレン・ジェシー
▲ロバート・スレッジ
ロバート・スレッジ:長い間、僕はこのふたりとは違うメンバーと演奏したり音を出したりしていたんで正直言うとちょっと不安もあったんだ。でも、いざスタジオで音を出してみたら、そんな不安は一気に吹っ飛んだよ。それどころか、この3人で音を出すことが自分にとって最もラクなんだなってことに改めて気づかされたね。

ダレン・ジェシー:うん、スタジオに入ってスピーカーから音が聞こえてきた時に“ああやっぱりこの3人なんだなあ!”って納得したっていうか。やっぱりライヴで一夜限りとかっていうのではわからない部分が多過ぎるからね。新曲を作ってみて、“そうそう、こういう感じで曲が出来ていったよなあ!”って思い出してみたり。3人だけのケミストリーってやっぱりあるなって気づかされたね。

ロバート・スレッジ:まあ、“年食っただけのケミストリー”っていうのもあるけどね(笑)。実際、精神的にもみんな大人になったっていうのは大きい。お互いがお互いを許容できるようになって、“自分が目立ってないぞ!”みたいなエゴもなくなったし、“おい、もっと練習してこいよ!”みたいなことも言わなくなったしね(笑)。

ベン・フォールズ:お互いさまだからね!

――新作を聴かせてもらって感じたのは、1990年代の作品は勢いと閃きみたいなアイデアが元になった面白さがあったと思うんですね。ピアノとベースがぶつかってもかえって面白いじゃん!みたいな。ですが、今回はもっと3人のアンサンブルをしっかりと組み立てていく作業が軸になっているように感じたんです。もちろん、3人の個性がスパークするスリルもあるのですが。

ベン・フォールズ:それはあると思うよ。もちろん、演奏することで得られるダイナミズムというのは今も僕らは持ち続けているわけだけど、お互いの音を聴けるようになったというのは大きいね。まあ、1990年代当時に、僕らの音楽がああいうオルタナティヴ・ロック然とした演奏になっていたのは時代性も大きいと思うんだ。あの時代、シーン全体がああいうパンキッシュな音を指向していたし、そこに刺激を見いだしていた。もちろん僕らもそうだったしね。だから当時の僕らの作品にもそういう演奏と演奏とがスパークするような面白さがあったんだ。でも、あれから13年、時代も変化してきたし、僕らもスキルを積んできた。僕はソロとしてオーケストラと共演するような体験もしたからよくわかるんだけど、離れている間に3人とも色んな経験をしたことで自分たちの音を改めて捉え直すことができたと思うんだ。その結果、僕が改めて感じたのは僕らの曲って、決してロックではないんだなってこと。もちろん、いい意味でなんだけど、どちらかというとブロードウェイ・ミュージカル的というか…あと、アンサンブル自体ロック・バンドのそれじゃなくて、ジャズ・コンボのアンサンブルなんだなって思うよ。例えばデイヴ・ブルーベックとかラムゼイ・ルイスのようなアンサンブルだね。

ロバート・スレッジ:そうだね。僕らと同じ時期に活動していたベアネイキッド・レディーズなんかも、結構フォークっぽいようで実はノイジーだった。そういう時代だったんだね。今の若いアメリカのインディー・バンドとはそこが違うかもしれない。僕らも決してブルーグラスとかカントリーがルーツではない。ベンが言ったようにジャズ・トリオのアンサンブルが基礎となっているようなところがあるんだ。

ベン・フォールズ:うん、今回アルバムを作ってみて、そういう部分に気づいたところは確かにあるね。

ロバート・スレッジ:ロックンロールの誕生から50年以上経過しているわけだけど、その中でなかなか面白い音楽が出来にくくはなっているよね。僕らも毎回新しいことをやって時代をアップデイトしていくようなところがあるわけではないけど、ロックやポップスを今の時代にまた盛り上げる役割を果たせたら嬉しいよね。

――日本ではマニアックなリスナーから初心者までが同時に夢中になれる洋楽バンドが減ってきています。そんな中で、ベン・フォールズ・ファイヴの今回の来日公演のチケットが争奪になっているという状況はとても励まされることなのですが、本国アメリカではどのような状況なのでしょうか?

ベン・フォールズ:アメリカも同じような状況だね。アーティストの種類が多過ぎて、例えば3世代通じてみんなで一緒の音楽を聴けるような音楽はないんだ。ただ、僕らのオーディエンスは結構幅が広いんだ。おじいちゃん、おばあちゃんから子供まで穏当に色々な年齢、色々な環境の人達が遊びにきてくれる。そこを目指しているわけではないんだけど、不思議とそうなっているのは面白いね。ただ、僕らの作品もまだまだ全ての世代を貫いているわけではない。エッジーな歌詞を書いたら、年寄り世代から鼻つまみになるし、スローな曲をやったら若い世代が遠のく。まあ、僕ら自身がおじいちゃんになったら、ようやく3世代に満足してもらえるようなバンドになるんじゃないかなあ(笑)。

――日本のファンはベン・フォールズ・ファイヴをいち早く“発見”し、ベンがソロになってからもずっと変わらず応援してきました。日本のリスナーがあなたがたの音楽に強いシンパシーを抱ける理由は何だと思いますか?

ダレン・ジェシー:思うに、僕らのメロディ感覚なんじゃないかな。最初のジャパン・ツアーの時から気づいていたんだけど、日本のオーディエンスはアンセム・ソング的に全ての曲を一緒に歌ってくれる。後ろの方で騒いだり、ペチャクチャ話し出したりなんてしない。シンガロングな僕らの曲を一緒にメロディを通じて共有してくれるんだね。そこがアメリカや他の国のリスナーと違うところだと思う。

ロバート・スレッジ:日本人は礼儀正しいし、街も綺麗だし素晴らしい。音楽に対しても敬意を払うという意識があるんだろうね。

ベン・フォールズ:そうだね。一緒に楽しむという感覚が一緒に歌うということなんだろう。それはまさに僕らがやろうとしてきたことなんだよ。今回のアルバムではそういう良さがより鮮明になったと思うし、そうなるときっと日本のファンもライヴで新曲を一緒に歌ってくれるはずだと信じているよ。

――それでは、最後に13年ぶりの来日公演に向けてメッセージをお願いします。

ロバート・スレッジ:間違いなくワイルドではっちゃけたステージになると思うよ。期待していてほしいな!

ダレン・ジェシー:うん、僕ら3人だけのケミストリーが爆発するよ!

ベン・フォールズ:でも、今の時代の音になっているはずだし、僕のソロとも確実に違うダイナミックがあると思うんだ。絶対に楽しみにしていてほしいな。会場で会おうね!

Text:岡村詩野

<BEN FOLDS FIVE 再結成ジャパン・ツアー2013>
東京公演
2013年2月16日(土) 昭和女子大学 人見記念講堂 【SOLD OUT!】 16:30 open/17:00 start
2013年2月18日(月) 渋谷公会堂 18:30 open/19:00 start
広島公演
2013年2月20日(水) 広島クラブクアトロ 18:00 open/19:00 start
名古屋公演
2013年2月21日(木) 名古屋クラブクアトロ18:00 open/19:00 start
大阪公演
2013年2月22日(金) メルパルクホール大阪18:30 open/19:00 start
http://www.udo.co.jp/Artists/BenFoldsFive/index.html

『サウンド・オブ・ザ・ライフ・オブ・マインド』
SICP3654 ¥2,520(税込)
※歌詞・対訳付/解説:岡村詩野

◆ベン・フォールズ・ファイヴ・オフィシャルサイト
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