【インタビュー】lynch.、「考え方次第で何もかもが変わる。すべてはお前次第だよってことを伝えたかった」ニュー・シングル「BALLAD」

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lynch.史上かつてなく濃厚なメッセージ性を備えた「LIGHTNING」から4ヶ月。ニュー・シングル「BALLAD」は爽快な疾走感と冬の冷たい空気感、そして怜悧なメロディの美しさで、また新たなlynch.の局面を開いてみせた。タイトルから彷彿される哀感と深みを纏いながらも決してバラードではない本作と、ポップ極まるカップリング曲。そして2012年夏、冬と行われた<THE FATAL EXPERIENCE>ツアーのファイナルとなる3月2日のZepp DiverCity Tokyoワンマンを境に、lynch.が迎える大きな“変貌”について、メンバー全員が胸中を語ってくれた。

■分かりやすい歌詞の攻撃力や伝えることの旨味みたいなものを知ってしまった「LIGHTNING」があったからこそできた「BALLAD」

――前作「LIGHTNING」では“メッセージ性を盛り込む”というlynch.にとっては画期的なテーマがありましたが、今回の「BALLAD」もバンドのパブリック・イメージとは異なる美しさ、柔らかさのある楽曲で。やはり制作にあたり、何か明確なテーマがあったんでしょうか?

葉月:ないです(笑)。ただ、「LIGHTNING」を含めて2012年の下半期に取り組んできた“メロディで勝負していきたい”というコンセプトの一部ではありますね。だから僕の中では2013年の第一弾ではなく、2012年の締め括りという感覚のほうが近い。

――メロディックな楽曲であることに間違いはないですよね。何より、曲の幕開けがピアノと歌だけというのが、これまでのlynch.に無いスタイルで度胆を抜かれました。

悠介:僕も原曲を聴いた時点で、あそこで一気に惹き込まれましたね。これはキタな!と。

明徳:lynch.の曲って常に曲頭に賭けてるじゃないですか。それで曲頭がバンドサウンドじゃないっていうのはミソだなって。

葉月:2月に発売するシングルということで、冬らしい寒い音/空気感っていうのは最初から狙ってたんです。あとは“なんとも言えない曲”にしたかったかな。コンセプトと言えば、それくらい。

玲央:季節感も考慮しつつ、“メロディを大事にした楽曲制作”という意味で、一つ形になった作品かなとは思いますね。野球に例えるなら、キメ球が増えたというか。いわゆるlynch.の王道とは違う部分で、キチンと三振を取れる球の種類を増やしたかったんですよ。そうすれば今後のアプローチでも選択肢の幅が広がるので。

――なるほど。いわば直球以外でもストライクを取れるようになろうと。

晁直:とはいえ、相変わらずの共通項として疾走感はある曲なんで、アプローチとしては今まで通りでしたね。

悠介:むしろ“メロディを大事にしたい”という明確な意志表示があったぶん、僕らとしてはやりやすかったです。イントロや間奏に出てくるアルペジオのメインフレーズもデモの段階からでき上がっていたし、寒い音/空気感というキーワードも事前に聞いていたので。僕なりに考えて、雪の結晶だとかをイメージさせるような煌びやかなサウンドも入れてみました。

玲央:僕もタイトさだとか、乾いてる感じを一番に追求してます。パート的には割とベーシックに曲を支えてるんですが、ギターソロ前半の裏で鳴ってるハウリングはこだわりました。あれが有ると音の前後に空気感ができて、寒さを演出できるんですよ。

――そういった寒さの演出って、リズム隊は難しいですよね?

晁直:無理です(笑)。ただ、ギターの音的にAメロが一番雰囲気が出てる気がしたので、そこは意識してドラムの音を減らしました。で、Bメロはサビに向かっていくためのセクションとして、盛り上がればいいかなぁと思ったんですけど……この展開自体が珍しい気がする。割とlynch.ってAからすぐサビに行く曲が多いよね?

葉月:そうね(笑)。僕がこだわったのは、頭のサビに入る前のドラム! キッズが“カッケェ! 俺、ドラムやりてぇ!”って思うようなニュアンスで叩いてくれって言ったら、晁直くんに“わからん”って言われました(笑)。あと、歌で言うと後半のピアノだけが鳴ってるサビにある“つないだ手を離さないで”の“は”。半分裏返ったみたいなニュアンスが、よりエモーショナルで気に入ってます。

明徳:ベースは最初いろいろ試したあげく、最終的にはめっちゃシンプルになりました。普段はなんだかんだ詰め込むことが多いんですけど、やっぱり詰め込んで良いことは、あんまり無いんですよね(笑)。

――結果、ダイナミズムとゴージャス感を感じる曲になりましたよね。キャッチーでありつつ、バンドサウンドの迫力もありつつ、洗練された冷たさもある。

葉月:そこはミキシングエンジニアを、LUNA SEAやBUCK-TICKを手掛けられてる比留間(整)さんにお願いした部分が大きいでしょうね。ラフミックスの段階で結構いい感じだったのに、マスタリング終わったら全く別物になって返ってきて、やっぱり立体感が凄いんですよ! ずっとお願いしたかったので、今回叶って良かったです。

――ちなみに決して曲調はバラードではないのに、「BALLAD」と名づけた理由は?

葉月:理由は特に無いです。単純に直感で仮タイトルを「BALLAD」と付けたら、コレを超えるタイトルが出てこなかっただけ。歌詞の面でも最初は特にメッセージも無く、今まで通り絵を描くように書こう!と思ってたのが、最終的に単なる情景画では物足りなくなってしまったんですよ。それは恐らく「LIGHTNING」があったからで、分かりやすい歌詞の攻撃力だとか伝えることの旨味みたいなものを、僕があの曲で知ってしまったんです。僕自身、自分で聴いて刺さったから。

――では、そこで最終的に葉月さんが訴えたかったものは何でしょう?

葉月:曲を聴いたときのインスピレーションで“孤独”というテーマが浮かび上がって、最初は“人間は一人で生まれて一人で死んでゆくんだ”っていう、どうしようもない歌だったんですよ。でも、こんな誰もが知ってることを今さら歌ったところで何の意味があるんだろう? 誰に需要があるんだろう? と思い直して、“それでも人が好きだし、人を信じたい”っていう僕なりの意見を最後のサビに書いたんですね。そこで“孤独”というのはタダのキャンバスで、誰もが生まれ、死ぬという絶対的事実があっても、考え方次第で何もかもが変わる……要するに“すべてはお前次第だよ”ってことを伝えたかったんじゃないかって。そう考えると、言ってることは結局「LIGHTNING」と同じなんですよね。

――“今という瞬間を、後悔しないように生きよう”と歌った「LIGHTNING」のインタビューでも“歌いたいことはコレしかない”とおっしゃっていましたし、それがどんな方向から書いても自然と浮かび上がるというのは、真に葉月さんの心に刻まれていることだという何よりの証拠ですよね。そもそも、こうして歌詞について語ってくださるようになったこと自体、葉月さんの大きな変化ではないかと。

葉月:今までは歌詞の話ができなかったですからね(笑)。

玲央:変わったというか、変わろうとしてる姿勢が形になったように僕は捉えてますね。

晁直:僕は今のほうが好きです。なんか昔は洋楽を聴いてる感じだったのに、今はJ-POPを聴いてる感じがする。

悠介:うん。前は抽象的だったのが、分かりやすい言葉を使ってくれるようになって、すごく嬉しい。

明徳:ただでさえ「LIGHTNING」から葉月さんの強い意志を曲に感じるようになってたのに、さっきの葉月さんの話を聞いたら……もう、メチャクチャ良い曲だな!って(笑)。

――ラストには“I still believe”というフレーズもあって意志の強さは十分に伝わりますが、じゃあ、今、一番葉月さんが信じたいものは?

葉月:“自分”ですね。そこはメジャー第一作の『I BELIEVE IN ME』から変わらないところで。ただ、当時は“自分を信じる”という自信に近い気持ちだったけれど、今は歌詞にある通り“信じたい”という気持ちのほうが強い。メジャーである以上、もっと数字を考えなきゃいけないって想いもありつつ、そういうのも今は“もう、いいや!”っていうモードなんですよ。結局、信じられるのは自分と、自分たちしかない。実際、信念を持ってやってる人たちしか生き残ってないし……っていうのは、メジャーで一通りやってみて分かったところかな。

――メジャー進出して1年半、さまざまな経験を積んできた今だからこそ、その言葉や歌に重みと説得力がありますよね。個人的には“I know there's no way to know”と呟くラスト一文も印象的でした。

葉月:この“I know”シリーズはBメロにも出てきて、全部言ってることは同じなんですよ。メロディに合わせて言い回しを変えてるだけで、永久に分からないことを知っている……要するに“考えてもわかんないけどね”っていうことです。簡単に言うと。

◆インタビュー続きへ
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