【ライブレポート】日本のロック再発見!マヘル・シャラル・ハシュ・バズ in ベルリン

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2月18日(月)、ベルリン・ヤノヴィッツプラッツのライブハウス、マリー・アントワネット(Marie-Antoinette)にて、日本のアンダーグラウンド音楽シーンに大きな影響を与えたバンド、マヘル・シャラル・ハシュ・バズ(MAHER SHALAL HASH BAZ)のライブが行われ、約300人くらい収容可能な会場はドイツの聴衆で埋め尽くされた!

◆マヘル・シャラル・ハシュ・バズ画像

ベルリンに在住し始めてから気付かされたことであるが、裸のラリーズ、灰野敬二、四人囃子、頭脳警察などなど日本のアンダーグラウンド(?)ロックに対するドイツ人の関心はものすごく強い。「Keiji Hainoを知っているか?」「裸のラリーズのレコードを買ったが、ものすごくいい!」などの話題をここに来てから頻繁に話している。それは、ジュリアン・コープ(Julian Cope)の著書『JAPROCKSAMPLER ジャップ・ロック・サンプラー -戦後、日本人がどのようにして独自の音楽を模索してきたか』の発刊からヨーロッパで始まったのかもしれない。とにもかくにも、われわれ日本人は、自分たちの育ってきた環境に流れていた、あるいは自ら望んで自らのアイデンティティの一部として買ったレコード、CD、音楽を今一度見直す必要があるようだ。

マヘル・シャラル・ハシュ・バズ=工藤冬里の音楽を、今ベルリンで聴くのも、その背景(ヨーロッパにおける日本ロックの再評価)があるからこそなのだろう。リーダーの工藤冬里は日本で、マシンガン・タンゴ、NOISE、Che-SHIZU、TACO、A-MUSIK、オルケスタ・デル・ビエントなどに参加していたミュージシャンで、直接的、間接的にせよ彼から影響を受けたミュージシャンたちの脈流は、アンダーグラウンド・シーンに限定できないと、僕は思う。不確かな記憶で申し訳ないが、例えば、YMOの坂本龍一は彼とA-MUSIKや、テント劇団「曲馬館」や「風の旅団」の劇中歌制作で何かしらの関わりを持っていたはずだ。同じく、町田康が在籍したINUの初代ギタリスト、小間慶大も同劇団にて工藤との関係がある。JAGATARAやコンポステラのサックス奏者、故篠田昌巳も工藤と数多くの共演経験がある。これらの話を書き始めたらキリがないのだが、坂本龍一、INU、JAGATARAという3つのキーワードからも工藤の影響力の大きさがわかるのではないだろうか。

このバンドでは非常に不器用な人々がヨレヨレとフラフラと彷徨い歩き、「まったく練習していない感じ」の未完成さが必然と生むノイズ・不協和音を孕みつつ、壊れてはいるのだが、独特なメロディが心を打つ、とても不可思議なバンドだと、23歳のとき初めてマヘルを見て思った。約21年を経て、ベルリンで見たマヘルも、全く同じだった。ある意味で、ものすごくスゴイことだ。この日のバンドメンバーは、工藤礼子や鈴木美紀子など日本から同行したマヘルのメンバーの他に、現地(ベルリン)で調達した女の子三人組のバンドやベルリン在住の龍笛(雅楽や神楽で用いられる横笛)奏者などが参加。工藤の気分で次に演奏する曲が決められて、1つの印象的な旋律の上で、即興的な演奏が繰り広げられる。だからこそ、マヘルでしか持ち得ないような崩壊の美学があるのだろう。その場の工藤の気分ですべてが進んでいる感じが、なんだか今とっても楽しいと感じた。

そうだ。日本のロックは、今もなお旅をしているのだ。もしかしたら、僕ら日本人は日本のロックを再発見しないと、世界の音楽から置いてけぼりになってしまうかもしれない(仮説)。

写真:Yoshito Maeoka
文:Masataka Koduka
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