【独占インタビュー】坂本龍一「3.11を経験した日本。八重のように本質を見失わず雄々しくあるべき未来を見つめて生きていってほしいです」

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幕末から明治の時代に雄々しく前向きに生き抜いた“八重”の生涯を描いたNHK大河ドラマ『八重の桜』。そのテーマ音楽を担当したのが坂本龍一だ。そのサウンドトラックが発売され順調に売り上げを伸ばしている。激動の時代に生きた八重の姿と、3.11で甚大な被害を受け再生に向けて進む日本の姿を重ね合わせ、その力強さやたおやかさ、そしてその背景にある日本の美しい背景を、どのように坂本龍一は描き出したのか。その音楽制作に迫るインタビューをお届けする。

──大河ドラマ「八重の桜」のテーマ音楽を依頼され、まず考えたことはなんですか?

坂本龍一(以下、坂本):責任重大だということです。

──「大きな責任を感じた」とのことですが、責任を背負う上で重要視したことはなんですか?

坂本:多くの人が一年間通して耳にしても飽きない音楽、大河ドラマの音楽の歴史に恥じない音楽、ドラマの内容に即した音楽、などです。

──2012年2月~6月ごろまで熟考していたそうですが、具体的にどのようなことを考え、どのような作業をしていたのでしょうか?

坂本:大づかみのテーマになるようなメロディーやフレーズをたくさん考え、それらからふさわしいものを選択。また、2分半程度の短い音楽のなかに、ドラマにあるいくつかの要素をどう配置するか、など。テーマを選んだあとも、本当にそれでよいのか、一週間ほどねかして再度、新鮮な耳で聴き、ゆっくり確認しながら進めました。

──制作上で参考にしたこと、研究したことはありましたか?

坂本:会津の風土、歴史。八重の生涯、福島や東北の風土、風景。

──上の質問と少しかぶりますが、「八重の桜」の舞台となった幕末の音楽文化なども研究しましたか?

坂本:同志社の初期の賛美歌が残っていれば聞きたかったのですが、調べてもいきつけませんでした。

──「八重の桜 メインテーマ」はどこを糸口に出来ていきましたか?

坂本:やはり、現在の頭のメロディーができた時です。

──「八重の桜 メインテーマ」は篠笛からスタートし、途中で転調しピアノが登場します。2分42秒の中で、どのようなストーリーを考えましたか?

坂本:明治維新の激動の嵐、それに雄々しく立ち向かっていく八重、戊辰戦争における幕府・新政府両軍の戦い、一転、会津・東北の美しい風景、再度激動の明治維新、そして明治の夜明け、新たな人生を歩む八重、という流れです。

──登場する楽器の音にも意味があると思いますが、それぞれの役割があれば教えてください。

坂本:篠笛は「和」、激動の予感を。低く重い弦楽は激動のなかで生きる八重の姿を。フルート、オーボエは日本の風景、桜を。高音域の弦の和音は笙を模倣して。大太鼓、スネアなどの打楽器は激動の明治維新における、両軍の闘いを。最後のピアノとクラリネットは、のびやかな明治の夜明けを。

──完成までの試行錯誤があれば、どのような過程だったか教えてください。また、オーケストラとのレコーディングでのエピソードを聞かせてください。

坂本:順調に進みました。指揮の尾高忠明さんの、素早く音楽の意図を捉えた簡潔な指揮が印象的でした。また、主役の綾瀬はるかさんが来て、オーケストラのすぐ前で真剣に聴いていた姿も忘れられません。

──「八重のテーマ」の制作は構想からどのくらいの時間を要しましたか?

坂本:2月から6月いっぱいぐらいまで作曲とオーケストレーションを。その間、カールステンとのツアーや、映画「新しい靴を買わなくちゃ」など、他の制作の合間をぬいながら。

──「八重のテーマ」は新島八重のどんな部分を膨らませて作りましたか? 制作の過程を聞かせてください。

坂本:八重の男まさりな雄々しいところ、そして反対に女性らしいところ、そして明治維新以降の先進的で開明的なところなど。

──1分10秒頃と終わる寸前にも鈴の音がします。合図やアクセントのように聴こえますが、何か意図がありますか? そこからハープ、ホルンへの展開がとても心地よいです。

坂本:(^^;

──オープニングを見た感想は?

坂本:もう少しカラフルでもよかったのではと思いましたが、きっと最後の明るい傘の部分にカラーをとっておいたのでしょう。

──劇盤、映画音楽とは、坂本さんにとって、どのような存在ですか? 思いをきかせてください。

坂本:(説明がむずかしい、、、)

──坂本さんが、この2曲に込めたメッセージとは?

坂本:3.11を経験した日本、また自然災害に限らずさまざまな激動が今後待っているでしょう。そのなかにおいても、八重のように、本質を見失わず雄々しくあるべき未来を見つめて生きていってほしいです。

NHK大河ドラマ「八重の桜」オリジナル・サウンドトラック I
発売中
RZCM-59238 \3,150(tax in)
1.八重の桜 メインテーマ
2.八重のテーマ
3.八重 凛とする
4.八重 疾走する
5.喜び発見
6.人が決意するとき
7.熱い情熱、未来へ
8.尊敬と憧れ
9.行軍
10.淡い恋心 #1
11.覚馬の正義
12.組曲「希望」 - 神の視点~高揚~苦悩~新しい時代
13.輝かしい未来へのエール
14.純真な心(piano solo ver.)
15.夏の息吹
16.幸福のかたち #1
17.何気ない日常のなかに
18.女たちの絆
19.やり場のない怒り
20.なぜそのように生きることが出来ないのか
21.黒船
22.組曲「風雲」 - 沈鬱~悲しみの後~動乱の幕開け~戦(いくさ)
23.歴史に名を残す者たち
24.故郷への想い

『THREE』
発売中
RZCM-59189 ¥3,500(tax in)
1.Happy End
2.The Last Emperor
3.Bibo no Aozora - instrumental
4.High Heels
5.Seven Samurai - ending theme
6.A Flower is not a Flower
7.Still Life in A
8.Nostalgia
9.Tango - instrumental
10.Merry Christmas Mr. Lawrence
11.Harakiri (Death of a Samurai) endroll - from a Takashi Miike Film "Ichimei"
12.Tamago 2004
13.Parolibre


大河ドラマ 『八重の桜』
【放送予定】
NHK 総合 毎週日曜 20:00~20:45
NHK BSプレミアム 毎週日曜 18:00~18:45
【作】山本むつみ
【テーマ音楽】坂本龍一
【音楽】中島ノブユキ
【語り】草笛光子
【題字】赤松陽構造
【出演】綾瀬はるか、西島秀俊、長谷川博己、綾野剛、剛力彩芽、生瀬勝久、長谷川京子、小栗旬、稲森いずみ、奥田瑛二、貫地谷しほり、玉山鉄二、松重豊、風吹ジュン、西田敏行 ほかのみなさん
【制作統括】内藤愼介 【演出】加藤拓、一木正恵、末永創 ほか
(C)NHK

◆坂本龍一 オフィシャルサイト
◆commmons
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