【インタビュー】電気グルーヴ、入りやすいが奥は深いエンタテインメント性に富んだ傑作『人間と動物』完成

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電気グルーヴ、3年半ぶりのニューアルバム『人間と動物』。この間に石野卓球はテクノDJとして、ピエール瀧は俳優やタレントとして、それぞれに築き上げたものの集大成…というわけではまったくない。あくまで電気グルーヴという一個の個性として、全曲歌もの、メロディは充実、歌詞はソラミミ、BPMはほぼ均一、テクノポップの原型を思わせる、時代を超えた心地よいビートとシュールな世界観が楽しめる全9曲。あえて言うなら、これまでのどの作品よりも敷居の低い、入りやすいが奥は深いというエンタテインメント性に富んだ傑作。聴きますか? 聴きますか?

◆「イメージに合うコラージュをしていくと、最終的に出来上がって、
引いて見て何かに見えた時はすごくいい歌詞、という作り方です」(ピエール瀧)


――『20』から3年半ぶりのアルバムですけども、今回の制作のきっかけは?

石野卓球:アイディアがあっても、いつも本調子が出るまで時間がかかるんですよ。でも今回は、去年(2012年)の頭にCMの話があって、アルバムの制作スタートのいいきっかけになったので。それがなかったら、もっと時間がかかったかもしれない。

ピエール瀧:そこで1曲(「Shameful」)できて、そのあとフェスに出て。その流れでわりとすんなり入っていった感じですね。

――その時点でアイディアはあったんですね。

卓球:夏フェスが終わってからということで、9月から制作に入ったんですよ。とはいえその前に「Upside Down」(2009年)というシングルがあって、2曲がすでにシングルとして発売されてたんで。いわゆる四番打者的なものを無理矢理作らなくてもいいという気楽さもあって、非常にすんなりできましたね。最初からテンポを均一にして、かつアルバムの長さもLPのサイズ、50分以内と決めてたんで。

――46分ぐらいですか。

卓球:それぐらいが、歌もののアルバムだと集中力が途切れず聴けて、かつもう一回聴こうと思えるサイズなので。今までうちらもかなり詰めこんだアルバムもあったんですけど、それはそれで面白いけど、何度も聴こうというふうにはなかなかなれないので。そういうふうに全体の方向性がすごく見えてたんで、非常にすんなりできましたね。

――今“歌もの”というキーワードが出ましたけども。

卓球:次は全部歌ものにしたいというのは最初から決めてました。理由はいくつかあって、今までインストの曲も入ってたんですけど、それをやると全体の尺が長くなってしまうんですね、どうしても。あとは、久しぶりに電気グルーヴとしてやるから、個人のソロでできるようなものは今回入れなくてもいいかな? と。

――瀧さん。今回の制作モチベーションは?

瀧:『20』を作った時の自由で気楽な感じが非常に良かったので、その作り方を踏襲しつつ。でも『20』の時はいろんな方向を向いてたものを、もうちょっと今の気分に合わせたものをということで、尺の話だったり、歌ものの話になったんですけどね。

――ざっくり言いますけど、非常にファンキーでポップなアルバムで。

卓球:ありがとうございます。

――メロディも非常に豊かですし。

卓球:借り物のセリフでよくそこまで言えますね。飾りますね(笑)。

――本気ですよ(笑)。

卓球:手垢のついた言葉で(笑)。

――いや、言い続けますよ。キャッチーでポップな作品です。

卓球:キャッチーでポップでグルーヴィー。オモチャ箱をひっくり返したような(笑)。

――傑作です(笑)。歌ものということもあって、メロディの要素がすごく強いと思うんですよね、今回。

卓球:僕らは普通のグループとは違って、メロディを作ろうという感じではないので。ただ歌ものという大前提があったんで、おのずとメロディ的なものは出てくるとは思うんですけども。

――たとえば「Slow Motion」とか。すごくいいメロディだと思います。

卓球:歌ものとはいえ、デモの段階で仮の歌メロがあって、そこに言葉をはめていくというようなやり方ではなくて。最初の作り方として、まずドラムのビートがあるところに、思いつくままのでたらめな言葉で仮歌を入れるんですね。それに字数が合っている言葉をはめていくということではなくて、最初に発したフレーズが、無意識の中でも一番心地よいであろう語感だと思うので、それを何度もループして。ソラミミとして聴こえてくるまで聴いて、各セクションで言葉をはめていき、それが全体を通して別のダブルミーニングに取れるようになっていったらそれは正解、という作り方をしてたんですね。

――あ~。なるほど。

卓球:今までも近い作り方はあったんですけど、今回はそれがより顕著に出ているので。それは今までやってきたことを、さらに発展させたやり方だなと思います。だからデモテープを聴いても、ほとんど語感は近いと思うんですよ。デモテープに関しては、言葉に意味はないんですけどね。

瀧:テーマがあって、テーマに沿ったオブジェを作っていくということではなくて、コラージュを繰り返していくと、最終的に何かの形になるという、そっちのやり方ですね。そのコラージュもでたらめなものではなくて、楽曲のリズムやグルーヴ、イメージに合うコラージュをしていくと、最終的に出来上がって、引いて見た時に“何かに見えるな”みたいな。何かに見えた時はすごくいい歌詞という、そういう作り方ですね。

――その中にこそっと、たとえば【経験と言えるものは恥さらし】(「Shameful」)とか。妙にドキッとする言葉が埋まってるんですよね。

卓球:洋楽を聴いてて、たまにそこだけ意味がわかったりするじゃないですか。そういうのが好きなんで。タイトルもそうなんですけど、内容とすごく即したタイトルというわけではなくて、そことの関連で“これは何なんだろう?”と考える部分が、うちらはリスナーとしてすごく好きな部分なので。そういう部分をなるべく残したいので、そういうタイトルと歌詞になってるんですね。逆に、その意味を説明してくれと言われるのが一番困るんですよ。ただ、そこで「意味はないです」と言うと、「じゃあ、でたらめなんですね」という、そういうわけでもない。説明が難しいんですけどね。

瀧:リスナーの楽しみを、一個奪うことになるからね。

――とか言いながら、聞きますけど。『人間と動物』というアルバムタイトルは…。

卓球:今言った通りです。

――そこをなんとか(笑)。

瀧:それも、考えて考えて出てきたわけではなく。大体いつもそうなんですけど、アルバムを作ってるどこかの段階で、“今回はこういうことなんじゃないか?”という言葉がパッと出てくることがあるんで。ある日突然降って来たものが、それだったんですね。

卓球:あと、それがキャッチーであるか否か。

――むちゃむちゃキャッチーですよ。

瀧:むちゃむちゃキャッチー。芸人の名前みたいですね。

卓球:吉本の若手みたいな。

瀧:長続きしない感じの。

――今のはチャラかった(笑)。でも今まで電気のタイトルって、ほぼワンワードだったじゃないですか。だから“おっ”と思ったんですよ。

卓球:そうですね。今回もそれで考えてみたんですけど、それではなかった。さっき瀧が言ったみたいに…。

瀧:むちゃむちゃキャッチー。

――じゃなくて(笑)。

卓球:言うこと忘れちゃったよ。あ、そう、そういうタイトルではないなというのはあったんですよ。過去のうちらのアルバムに日本語タイトルはつけたことなくて、でも今回は全部日本語で歌ってるし、歌ものだし、いいんじゃないかな? と。

瀧:今までのワンワードのやつも、ナンバリングに近い感じでつけてたんですよ。それとはまた違うモードだったと思いますね。

◆「義務感でマンネリ化するのは最悪なので。
うちらは常にいないほうがいいグループなんです」(石野卓球)


――卓球さん。ビートや音色、曲調の点で、今回はどういうものを作ろうというテーマがあったんですか。

卓球:トレンド的なものは、正直あんまり考えてなくて。その時の自分の気分と好みというのはありますね。このアルバムを作ってる時によく聴いてたのは、イタロ・ディスコ、オールドスクール・エレクトロ、ディスコ・クラシック、80'sのダンスものとかで、その影響はすごくあると思いますね。逆に言うと、今どきのエレクトロと、自分がDJでやってるようなテクノは、ごっそりないです。

――確かに。

卓球:そのへんは意図的に入れなかった。まぁ今どきのエレクトロに関してはもともと僕の中にないんで、入らなくて当然なんですけど。いわゆるダンスフロア向けの現代のテクノみたいなものは、インストを入れなかったのと同じ理由で、わざとそこは避けてます。今それがトレンドだからという作り方ではなくて、たまたまその時好きで聴いていた、さっき言ったジャンルのようなものですね。そのへんの音楽というのは昨日今日興味を持ったわけではなく、ずいぶん前からルーツとしてあるので、それが自然に出てきたというところがあると思います。

――なつかしい、とか言っちゃうとアレですけど。

卓球:いや、でもそうだと思いますよ。

――今これを読んでくれてるのが、どういう世代の人かはわからないですけど。先入観なしに聴いたらすごく楽しめると思うんですよね。

瀧:古くからずっと聴いてくれてるお客さんももちろん大事ですけど、それとは別に、若い子が屈託なく聴くのもいいと思うんですよ。たぶん今までの電気のお客さんはある程度予備知識があって、バックグラウンドがわからないと楽しめないみたいな思い込みが(笑)。そういうのがあったと思うんですけど、今の10代20代の子にはそういうのが一切なくて、楽曲だけで興味を持ってくれる人がいると思うので。

卓球:今回のツアーで、それが見えると思うんですけどね。それ以外で、ツイッターとかの反応を見ると、今までの人たちもいれば、今までまったく知らなくて、今回の曲のビデオをテレビで見て“変わったビデオの人たち”ということで知ってくれたり、そういうこともやっぱりあるし。

瀧:ある程度知識がないと楽しめないのかも、というハードルに対して、二の足を踏んでたような人もいたと思うんですけど。

卓球:あと、生理的な嫌悪感ね。

瀧:今回はそういうものすらない。電気グルーヴとしてしばらく表に出てなかったんで、生理的嫌悪感を感じさせることもなく(笑)。知識のある人はいてくれないと困るけど、どっちもあっていいと思いますね。

――ツアー、楽しみにしてます。

瀧:ワンマンは5年ぶりですから。フェスとは違ったものになると思うし、楽しみですね。

――今年はこのあと、活発に活動してくれますか。

卓球:とりあえずこのツアーと、夏フェスとかもあると思うので。とりあえずそこまでを目標に、そのあとまた何かあればという感じ。常に動いているということがいい方向に働くグループと、そうでないグループってあると思うんですよ。うちらの場合、個人の活動の場が全然違うので、ある程度時期を置いて別々の場所にいることも大事だと思うんですね。そのことによって、たまに集まった時に、うちらも電気グルーヴというものに対して新鮮な気持ちでいられるし、お客さんにとってもそうだと思うので。そうじゃないと、義務感でマンネリ化するのは最悪なので。うちらは常にいないほうがいいグループなんです。

取材・文●宮本英夫


New Album
『人間と動物』
2013年2月27日発売
【初回生産限定盤】CD & DVD
KSCL-2200~KSCL-2201 ¥3,990(tax in)
【通常盤】CD
KSCL-2202 ¥3,059(tax in)
[CD]
1.The Big Shirts
2.Missing Beatz (Album version)
3.Shameful (Album version)
4. P
5. Slow Motion
6. Prof. Radio
7. Upside Down (Album version)
8. Oyster (私は牡蠣になりたい)
9. 電気グルーヴのSteppin' Stone
※LOTTE ZEUS THUNDER SPARK TVCF曲「Shameful」&フジテレビアニメ「空中ブランコ」オープニング・テーマ「Upside Down」のAlbum Versionを収録
※「Missing Beatz」&「人間と動物」ダブル購入者プレゼント応募ハガキ封入
(応募締め切り:2013年3月29日(金) 当日消印有効)

[DVD](初回生産限定盤のみ)
電気グルーヴ LIVE at WIRE12 2012/08/25
1.Hello! Mr. Monkey Magic Orchestra
2.SHAME
3.SHAMEFUL
4.Shangri-La
5. キラーポマト / KILLER POMATO
6.誰だ!/ DAREDA!
7.虹 / Niji
8.wire, wireless
※初回生産限定盤のみWIRE12でのライブを完全収録したDVDとの2枚組
※メンバーによる副音声を収録!

アナログ盤(完全生産限定盤)
2013年3月27日発売
KSJL-6165~6166 ¥3,990(tax in)

<ツアーパンダ2013>
●2月27日(水)Zepp Fukuoka
(問)キョードー西日本 092-714-0159(平日10:00~19:00/土曜 10:00~17:00)
イープラス
http://eplus.jp/
チケットぴあ
0570-02-9999(Pコード:186-617)
ローソンチケット
0570-084-008(Lコード:83391)

●2月28日(木)Zepp Namba(OSAKA)
(問)キョードー大阪
06-7732-8888(10:00~19:00)
イープラス
http://eplus.jp/
チケットぴあ
0570-02-9999(Pコード:188-344)
ローソンチケット
0570-084-005(Lコード:56089)
CNプレイガイド
0570-08-9999
チケットぴあ発売日特電:0570-02-9580

●3月6日(水)Zepp Nagoya
(問)ジェイルハウス 052-936-6041(平日11:00~19:00)
イープラス
http://eplus.jp/
チケットぴあ
0570-02-9999(Pコード:187-254)
ローソンチケット
0570-084-004(Lコード:45954)
チケットぴあ発売日特電:0570-00-0074

●3月9日(土)Zepp Sapporo
(問)ウエス 011-614-9999(平日11:00~18:00)
イープラス
http://eplus.jp/
チケットぴあ
0570-02-9999(Pコード:185-348)
ローソンチケット
0570-084-001(Lコード:13243)

●3月12日(火)・13日(水)Zepp DiverCity(TOKYO)
(問)Zeppライブエンタテインメント 03-5575-5170(平日13:00~17:00)
イープラス
http://eplus.jp/
チケットぴあ
0570-02-9999(Pコード:188-273)
ローソンチケット
0570-084-003(Lコード:73129)
岩盤

開場 18:00 開演 19:00
料金:1F立見/2F指定  6,300円(税込・1ドリンク別)
※福岡・札幌公演は1F立見のみ
1/26(土)よりチケット一般販売スタート

◆電気グルーヴ オフィシャル・サイト
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