【コンサートレポート】吉松隆 還暦コンサート、超満員のオペラシティから大歓声

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<吉松隆 還暦コンサート《鳥の響展》>が3月20日(祝)東京オペラシティコンサートホールで行われた。一部は室内楽とピアノ・ソロ、二部・三部はオーケストラと協奏曲で、トータルで4時間弱となる「集大成」に相応しい規模の音楽会となった。

◆<吉松隆 還暦コンサート《鳥の響展》>画像

前半では吉松作品に縁の深いピアニストの舘野泉、田部京子、サックス奏者の須川展也、ホルン奏者の福川伸陽、チェリストの長谷川陽子らが出演。田部京子と小川典子の二台のピアノによる「ランダムバード変奏曲」(1985年)は、吉松が愛する鳥のテーマが、スカルラッティのピアノソナタのような可憐なさえずりから、ヒッチコックの恐怖映画にも似た過剰な音の殺到に至るまで、ダイナミックな変化を見せた。

吉松作品を意欲的に録音で採り上げる指揮者の藤岡幸夫と東京フィルハーモニー交響楽団による後半は「鳥は静かに…」(1998年)、「サイバーバード協奏曲」(1994年)と幻想性と典雅の趣に溢れた曲から始まり、続く作曲家25歳の管弦楽「ドーリアン」(1979年)では、ストラヴィンスキー風のパーカッシヴな変拍子が爆発。調性音楽が冷遇されていた時代にオリジナルな語法を模索していた若き吉松の、野心とフラストレーションが結晶化された一曲で、ロックンロール的な躍動感がホールを満たした。

最後の部は、大河ドラマ「平清盛」(2012年)と「タルカス」(2010年)がフルパワーで演奏され、オーケストラのダイナミックな咆哮に聴衆の熱狂も最高潮に。「タルカス」の原作者であるキース・エマーソンが主役と手を取り合ってステージに上がり、ピアノで「Happy Birthday」を歌い始めるという一幕も。

超満員のオペラシティの客席からは大歓声が湧き、還暦の赤いちゃんちゃんこを着た吉松は恵比寿尊のような福福しい姿で祝福を受けた。「孤高の作曲家」の軌跡を追った濃密な4時間はあっという間に過ぎ、各曲に秘められた吉松作品の巨大な普遍性に圧倒されるばかりだった。

文:小田島久恵
写真:(C) 中島正之
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