【ライヴレポート】浅井健一、フルアルバム『PIL』を引っ提げての大興奮のツアーファイナル

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3月4日(月)SHIBUYA-AXで、浅井健一として約3年ぶりのフルアルバム『PIL』を引っ提げて全国各地を熱狂の渦に巻きこんできた<Pocky In Leatherboots>のツアーファイナルが行われた。

◆浅井健一~拡大画像~

超満員のフロアーは開演前から、興奮状態。男性ファンが口々に「ベンジー!!」と絶叫し、拍手を送り、前へ前へと押し寄せる。

やがて暗転。映画「バグダッドカフェ」の主題歌として一世を風靡した曲「Calling You」が流れる中、メンバーがステージに登場すると、言うまでもなく怒濤の大歓声。浅井をサポートするのは加藤隆志(G/東京スカパラダイスオーケストラ、LOSALIOS)、渡辺圭一(B/JUDE、HEATWAVE)、茂木欣一(Dr/東京スカパラダイスオーケストラ、FISHMANS)の強力な面々だ。

ライヴはためらうことなくアクセルを踏みこむような激しく衝動的な「見た事もない鳥」(最新アルバム収録曲)で始まった。向かい合って呼吸を合わせるようにギターをかき鳴らす浅井と加藤。シンプルかつ強靭なビートを叩き出す茂木。ワイルドに動きまわりながらグルーヴィーなベースで揺らせる渡辺。焼け付くような熱量のせいか、2階席で見ているにも関わらず、ライヴハウスの前列で見ているような錯覚に陥る。身体がひっぱられるような、この感覚は何だろう。

続いて1stソロアルバムの中の曲「原爆とミルクシェイク」が演奏されるとフロアーはモッシュ状態。まだワンツアーしか廻っていないとは思えないぐらい4人の息はピッタリだ。アルバム『PIL』には浅井がPro Toolsを使い、多重録音した新たなアプローチの楽曲も収録されているが、ライヴは浅井健一バンド始動と言ってしまいたくなるぐらいの佇まい(実際、浅井健一&Bad Teacher Kill Clubというバンド名が付けられていた)。

古いパンクのビデオを見ている主人公が“ブラックスリムのGパン まったく足が通らねえ”とつぶやく歌詞もゴキゲンなエッジーなロック「OLD PUNX VIDEO」では、指笛がとびかい、前半戦にして、やばいほどの盛り上がり。その空気に反応した浅井が「盛り上がろうぜ」と珍しくみんなを煽り、演奏したのはBLANKEY JET CITY時代からの盟友、照井利幸と組んだPONTIACS時代のナンバー「GALAXY HEAD MEETING」で、意表を突かれたフロアーはますます火をつけられる。

天才的なひらめきと衝動性、センシティブな感性を持ち合わせているベンジーこと浅井健一がロックシーンのカリスマ的存在であることは語られ続けているが、さまざまなバンド、ソロ活動を経て、突き抜けたアティテュードでライヴを120%楽しんでいることが感じられたのがこの日のステージだった。

浮遊するグルーヴに身体を揺らされるロックンロール「FRED&SUSAN」を演奏し終わったあとに「今日はみんな、来てくれてありがとね」と言ったのも驚きだったが(ライヴ中に話すことはほとんどない)、イントロのギターからしてベンジー節の「MORRIS SACRAMENT」で弦楽器陣の3人が振りをキメて、いっせいにネックを持ち上げるパフォーマンスを披露したのも、最高のサプライズ! ロックンロールの快感、ツボを知り尽くしているメンバーが繰り広げるステージはマジックの連続だ。内側に熱を秘めたクールなボーカル、「そーゆーこと」の後半のギターソロは完全に羽根が生えているかのようだった。

そして、もうひとつ、集まったファンを熱狂させたのは、セットリストだ。『PIL』の曲を中心にしつつも、BLANKEY JET CITY時代の代表曲「ガソリンの揺れかた」や、「SWEET DAYS」(大合唱になった)、「SALINGER」も本編に盛りこまれ、初のソロアルバム『Johnny Hell』からも名曲がセレクトされ、浅井の願いがこめられた透き通った涙のようなバラード「人はなぜ」も絶妙なポジションで歌われた。

メンバー紹介で「ファイナルなので、せいっぱい楽しんでいこう」と伝えた渡辺。「またとない最高の夜だね。最終日、思いきり燃え尽きようぜ」と叫んだ茂木。「20代から大きく影響を受けた浅井健一さんとツアーを廻れて光栄に思います」と言い、バンド名が決まったことに触れた加藤。最後に紹介された浅井は「この3人と一緒にやれて、すごいうれしい。いつもうれしいんだけど」とみんなを笑わせた。

本編ラストは浅井健一ワールド炸裂のロックンロール「LOVE LIVELOVE」。コンビニ強盗をつかまえようとミッキーマウスがとびかかり、店の中に飛び散るコールスローにまったく気付かず、買い物を続けているおばあさん。そんな、ぶっとんだ愛らしい歌詞をゴキゲンなビートに乗せて歌うのが彼の魅力だ。決して敷居の高いカリスマなんかじゃない。

アンコールではJUDE時代の「チキチータブーツ」やBLANKEY JET CITYの「SKUNK」も飛び出し、全員が去っても鳴りやまない熱狂コールに応えて、ダブルアンコールが実現。真夏並みに気温が上昇した会場でラストは「SEA SIDE JET CITY」で締められた。

取材・文●山本弘子

◆浅井健一オフィシャルサイト
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