【ライブレポート】the GazettE、結成10周年のクライマックスに見せた貪欲なバンド魂「これから先も、いろんな夢を見ていきましょう」

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2002年3月10日の初ライブから丸11年。10周年イヤーを締め括り11周年が始まる記念すべき日に、the GazettEはさいたまスーパーアリーナのステージに立った。そこで我々が見たものは、昨秋(2012年)より行われていた全国ツアー<LIVE TOUR 12-13[DIVISION]GROAN OF DIPLOSOMIA>を締め括るドラマティックなクライマックス。そして、結成からの11年で彼らが遂げた進化と、11年前から変わらぬ貪欲なバンド魂だった。

◆the GazettE 画像

ツアーの軸となった最新アルバム『DIVISION』は、デジタリックな“ARTERY(=動脈)”とロックな“VEIN(=静脈)”の二部構成。また、ファイナル公演のタイトルは[MELT]ということで、二人の女性がゆっくりと歩み寄り、ぶつかり合って融解するという象徴的なオープニング映像に、まずは誰もが釘づけになる。そこで「さぁ、楽しんでいこうぜ、さいたま!」とRUKIが叫べば、約1万5千人のオーディエンスは一瞬にして沸騰。1曲目「DERANGEMENT」から一つの生き物のようにうねり、続く「GABRIEL ON THE GALLOWS」ではヘッドバンギングで風を起こし、「VENOMOUS SPIDER'S WEB」に到っては激しく身体を折りたたむ人々の塊が、今にもスタンドからこぼれ落ちそうだ。

巨大なさいたまスーパーアリーナを“ARTERY”サイドのデジタリックなビートが貫き、鋭くシェイプされたバンドサウンドが轟いて、オーディエンスの熱狂と共に創り上げる鬼気迫る空間は、まさに圧巻。加えてダイナミックな照明と、楽曲に合わせて時に美しく、時に猟奇的なほど創り込まれた映像が、意味深に場の空気を彩る。そして「THE SUICIDE CIRCUS」「DRIPPING INSANITY」と、緩やかにテンポを落とした中盤からは、生音のディープネスで迫る“VEIN”楽曲の出番だ。陰鬱なムード漂う「余韻」に、葵がアコースティックギターを奏でる「籠の蛹」等、RUKIの歌を中心に訴えられる生々しい感情が場内の拍手を招き、SEを挟んで「もっと深くまで行こうか、さいたま!」とキャッチー&アッパーな「歪」へ繋ぐ展開も見事。客席一丸となってヘッドバンギングとジャンプを繰り出し、楽器隊のパワーコーラスと共に目の覚めるような一体感を生み出す「VERMIN」で着火してからは、モニター上の赤い六芒星を背に戒のドラムが爆走する「SLUDGY CULT」、踊る観衆が激しく床を揺らす「HEADACHE MAN」と、再び灼熱のグルーヴで場内を席捲してゆく。

さらに終盤、「もっと腹から声を出せ!」というRUKIの激に応え、会場中が合唱する「ATTITUDE」に身を浸しながら痛感したのが、彼らの時代を読む力の鋭さだ。無条件に身体を揺らすデジタリックなビートと、ロックのタフネスを容赦なく噛み合わせた楽曲のハイセンスな咀嚼ぶりは、間違いなく彼ら特有のもの。そこから無機的なボーカルでシームレスに繋いだ「REQUIRED MALFUNCTION」でも、テクノな下地にデスボイスをブチ込んだ末キャッチーに抜けるという、the GazettEにしか生み出し得ないミクスチャーの真骨頂を見せつけて圧倒する。これぞ、自らの持つ武器を精査したアルバム『DIVISION』と、それを掲げて31本にわたり全国を駆け巡った成果なのかもしれない。

そんな常人とは違う彼らの発想力は、本編のエンディングでも存分に発揮されることに。5人がステージを去ってSE「[MELT]」が鳴ると、ステージ上では火花が飛び散り、頭上に組まれた照明トラスが破壊されて宙にぶら下がるという衝撃的な光景が!! あわや、事故かとざわめく客席は、やがて流れる音や映像と織り成すマッチングの妙に、それが演出であることを呑み込んで、大きな拍手と歓声を贈る。さいたまスーパーアリーナという会場の規模を活かした驚愕の仕掛け――そこにツアーファイナルとアニバーサリーという、このライブが持つ二つの意義の重さを改めて感じ取ることができた。

アルバム『DIVISION』を具現化することに専念した本編から一転、インディーズ時代からの人気曲も数多く織り込まれたアンコールでは、ステージ上を自由に駆け回り、躍動するメンバーの姿が。登場するなり拳と拳をぶつけ、互いの意気を上げる戒とREITA(B)が勇猛に場内を震わしたリズムセッションに始まり、会場中が同じフリで踊る「赤いワンピース」では麗と葵のギター隊が左右花道の両端に展開。そこからセンターのお立ち台に集って向き合い、ギターをかき鳴らす華やかなパフォーマンスは、まるで本編楽曲に“MELT=融解”していた彼らが自我を持って飛び出してきたかのようにも見えて、心が躍る。

「11年いつも応援してくれてありがとう。超感謝してます。大の大人5人が10年以上やってるといろんなことがありますが、また一つになれた気が今日はしました。すごく濃い1年で、いろいろ勉強になったし楽しかったから……終わるのが、すごく寂しいです」

そう胸中を吐露したRUKIが、濃密だったツアーをさらなる充実のうちに完成させるべく「気合入れてかかってこい!」と煽ったのは「Filth in the beauty」。そこで一気に明るくなった照明の下、1万5千人が一斉に飛び跳ね、歌う様の壮観なことと言ったら! 初期から演奏され続けてきた代表曲「LINDA~candydive pinky heaven~」に到っては、オーディエンスもメンバーも声をあげ、文字通り“一つ”になってうねりをあげる。その10年経っても変わらぬ清々しい光景に、the GazettEというバンドの不変の魂を見た気がした。

「少しでも見たことのないようなものを見せてあげたいと回ったツアー、楽しめた? 終わってしまって今、すごく寂しいけど、すごく楽しかった。これから先も、いろんな夢を見ていきましょう」

オーディエンスが床に額づいて頭を振る「関東土下座組合」に続き、「☆BEST FRIENDS☆」に綴られた夢に向かう赤裸々な気持ちをメンバー含めた全員で合唱して、思い入れ深い初期曲を並べたダブルアンコールを終えたRUKIは、そう語った。数々の大きな夢を叶えてなお、夢を語り、夢を歌う彼らの胸には、未だキッズの心が生きている。その無垢な魂が11年で培ったさまざまな武器を纏って、次はいかなる夢を勝ち得てゆくのか? その手がかりは終演後に発表されたNEXT SCENE――8月のニューシングル「FADELESS」と10月のアルバム『BEAUTIFUL DEFORMITY』に、必ずや見出せるはずだ。

取材・文●清水素子

NEW LIVE DVD
『the GazettE LIVE TOUR12-13 FINAL MELT Live at 03.10 SAITAMA SUPER ARENA』
2013年6月26日発売

NEW SINGLE
「FADELESS」
2013年8月発売

NEW ALBUM
『BEAUTIFUL DEFORMITY』
2013年10月発売

<LIVE TOUR 13[BEAUTIFUL DEFORMITY] MAGNIFICENT MALFORMED BOX>
11/2(土) よこすか芸術劇場《HERESY限定公演》
11/6(水) 大宮ソニックシティ 大ホール
11/7(木) 大宮ソニックシティ 大ホール
11/10(日) グリーンホール相模大野
11/12(火) 新潟テルサ
11/13(水) 長野県・ホクト文化ホール 中ホール
11/15(金) 金沢市文化ホール
11/20(水) 市川市文化会館 大ホール
11/18(月) オリンパスホール八王子
11/22(金) 浦安市文化会館
11/27(水) 三重県文化会館 大ホール
11/30(土) 名古屋市公会堂 大ホール
12/4(水) 栃木県総合文化センター
12/7(土) 札幌市民ホール
12/10(火) サンポートホール高松 大ホール
12/11(水) 広島アステールプラザ 大ホール
12/13(金) 岡山市民会館
12/15(日) 福岡サンパレス
12/17(火) 神戸国際会館 こくさいホール
12/19(木) オリックス劇場(旧 大阪厚生年金会館)
12/25(水) 秋田市文化会館 大ホール
12/26(木) 盛岡市民文化ホール
12/28(土) 仙台サンプラザホール

◆オフィシャルサイト
◆BARKS ヴィジュアル系・V-ROCKチャンネル「VARKS」
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