D'ERLANGER、4年ぶりの新作完成に寄せて『MASSIVE Vol.10』登場

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2007年4月22日、東京・日比谷野外音楽堂にて<薔薇色の視界>と銘打たれたD'ERLANGERの復活公演が実現した。そのステージ上、フロントマンであるkyoは、この復活劇をかならずしもシンプルではない感情とともに待ち焦がれていたオーディエンスに向かって「今夜は特別な夜です」と語りかけ、「17年間、閉じていた扉を開く夜です。その先に、素晴らしい景色があるのを確かめる夜でもあります」と言葉を続けた。

それからちょうど6年が経過した今、このバンドのニュー・アルバム完成についてお伝えできることを心から嬉しく思っている。
▲インタビューに先駆けて行なわれた撮影時の各メンバー。どの写真が誰であるかは、改めて説明するまでもないだろう。
メンバーたちは去る4月15日の深夜をもって、オリジナル作品としては実に4年ぶりとなる新作の音源制作をすべて終了。通算第6作に似つかわしく『#Sixx』と題されたこの作品は、彼らにとってはワーナーミュージック・ジャパンへの移籍後第一弾にあたるもので、5月22日に発売を迎えることになる。

取材者特権でいち早くこの音源に触れた者としてまず言っておきたいのは、この『#Sixx』が、まさにD'ERLANGERの史上最高傑作と呼ぶに相応しいものだということ。確かに、ファンが往年の作品に対して抱いてきた長年の愛着を一瞬にして飛び越えるというのは、限りなく不可能に近いことではある。が、この作品に収録されている全10曲と実際に向き合ってみて僕自身が何よりも強く感じたのは、このバンド自体が、他の誰にも足を踏み入れることのできない領域へと歩みを進めているのではないかということだ。

僕にはここに詰め込まれている音楽を、既存の言葉でカテゴライズすることができない。かつてサディスティカル・パンクという呼称を自ら提唱した彼らだが、そのときに彼ら自身のなかにあったのは“他の何かと一緒にされたくない”という青くさい信念だったのではないかと思う。そして17年にも及ぶ音楽シーンでの不在を経ながら、彼らには“ヴィジュアル系の先駆者”といった肩書が伴うようになった。もちろん彼らがその世界における先駆けだったことは間違いないのだし、それを敢えて否定する必要もないだろう。が、今やそうした言葉でこのバンドについて形容すること自体に無理がある。

たとえば現在のMOTLEY CRUEを指して、今さら“L.A.メタルの先駆者”と呼ぼうとする人たちはいないだろう。むしろ単純に“ロック・バンド”でいいはずだ。D'ERLANGERについても同じことがいえる。1980年代の音楽を同時代的に吸収しながら、いわゆるジャパニーズ・メタルから欧州的なゴシックの匂いまでをも自分たちの血としてきたこのバンドの音楽は、今や4人の類いまれなミュージシャンたちの“人間力”の集合体として成り立っている。すべてのパートについてほんの数テイクで録り終えてしまう技量と、その場の空気を音に変換するスポンテニアスな力、そして独特としか言いようのない混沌の美学を併せ持ちながら、さまざまな感情を吐きだしている。それが現在のD'ERLANGERなのである。大袈裟な言いぐさだと笑われるかもしれないが、ある意味これは、ロック・バンドとしての禁断の領域に近いものではないかと僕は感じてしまう。

さて、前置きが長くなったが、この最新アルバム『#Sixx』の完成に伴い、先日、僕はメンバーたちとの個別インタビューを行なった。これら4本のロング・インタビューは、僕自身が制作を手掛けている音楽誌『MASSIVE Vol.10』(5月20日発売/シンコー・ミュージック・エンタテイメント刊)にたっぷりと掲載されることになっている。しかも表紙・巻頭特集である。実際に原稿が完成する以前にこんなことを言うのもおかしな話ではあるが、ファンはもちろん、これまで彼らに興味を抱いてこなかった人たちにもお読みいただきたい内容になっていると自負している。アルバムともども、その発売を楽しみにお待ちいただきたい。

現在、音源制作を終えたメンバーたちは、この『#Sixx』のリリースに伴うさまざまな調整に追われている。アルバム自体の詳細(収録曲、アートワーク、具体的な仕様等)については、4月24日までには具体的にお伝えできるはず。そしてすべてのファンが心待ちにしているはずの新たなツアーについての詳報も、遅くとも今週のうちにはお知らせできる見通しだ。現時点で僕に言えるのは、この『#Sixx』が必聴作品であることと、このアルバムに伴うツアーが実践される頃には季節が“夏”に変わりつつあるということだけだが、どちらについても、期待を膨らませていてほしい。きっと彼らはそれをいとも簡単に超越してみせるはずだから。

増田勇一
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