【インタビュー】リトル・ブーツ、「気持ちや思いを包み隠さず表現したい」

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英国の音楽関係者、メディアなどがその有望新人を選出する<BBC SOUND OF>の2009年度で1位に選出、前作『Hands』は本国でゴールド・ディスクを獲得と、音楽シーンに彗星のごとく登場するとともに大ブレイクを果たしたリトル・ブーツ。日本でも<SUMMER SONIC '09>と単独来日公演で“TENORI-ON”を駆使したパフォーマンスが鮮烈な印象として残っているリスナーも多いに違いないエレクトロ・ポップの妖精が、待望の2ndアルバムをついに完成させた。『Hands』リリース後の4年間の彼女の経験がリアルに反映した今作、今作『Nocturnes』。そこに込めた心情や、リトル・ブーツ独特の音楽観の源など、BARKS初登場インタビューということで様々な角度から彼女の深層に迫ってみた。

◆リトル・ブーツ画像

──極上のダンスミュージックであり、極上のポップ・ミュージックでもあり…。両方の要素を見事に兼ね備えた作品で、とても聴き応えがありました。

リトル・ブーツ:(日本語で)アリガトウゴザイマス! レーベルによってはそのどっちかにして欲しいみたいに言われることも多いと思うんですけど、今言われた“ダンス”も“ポップ”も自分にとってはまさに両方やりたいものだったので、それを感じ取ってもらえて本当に嬉しいです。

──そんな今回のアルバムと、前作の『Hands』を作っていた頃とでは、意識の違いみたいなものは何かありましたか?

リトル・ブーツ:意図的な変化と意図的でない変化、両方あると思いますね。『Hands』をリリースした2009年の頃と比べると、音楽業界自体がすごく変化しているっていう意味で自分の意図的でない変化はやっぱりありますし。それと同時に、この4年間で自分も人間として成長したっていう、意図的に変化した部分もありますよね。で、その意図的な変化というのは、『Hands』を作っていた当時の自分はすごくナイーヴで、純粋で…。当時はすごく純粋だったがために、ソロアーティストとしてポップミュージックをリリースしてその世界に入れるっていうことへのワクワク感がすごくあったんですけど、一度それを経験してみて感じたのが、全てが本当に美味しいわけじゃなくてすごく辛いこともあるっていう。楽しいこともあれば、本当に信じられないような辛いこともあれば、またそれ以上にすごく楽しいこともあったりだとかすごく二極ある世界なので、そういうことの経験も今回のアルバムのサウンドや歌詞に表れていると思います。例えば、1曲の中でも、空に手をかざしてワーッと喜ぶような感覚があったと思った1分後にはすごくダークな雰囲気になっていたり。すごくアップダウンがある、曲がりくねったような要素を持っているっていう、色んな“旅”をしているアルバムになっていると思います。

──確かに、アップダウンはすごくありますね。オープニングナンバーの「Motorway」とエンディングナンバーの「Satellites」などを並べてみても、まさに好対照な雰囲気になっていたりしますし。

リトル・ブーツ:はい。そのスムースじゃない感覚、サウンドのアップダウンに、まさに自分がしてきた4年間の“旅”が表れているというか。それと、このアルバム全体を通して“夜”みたいな雰囲気がある気がしたので、タイトルを『Noctornes』に決めたんですよね。アルバム全体が出来てみて、その要素は一貫性があるなと思って。

──“Noctorne”は、“夜想曲”という意味ですね。最初にも言ったんですが、すごくノレるダンスミュージックの用件を備えているのと同時に、でもいわゆるパーティーチューン的な感覚ではなくて、どこか哀しげなもの悲しい雰囲気が漂っているというか…。

リトル・ブーツ:そうですね。まさにその通りで、自分が好きなポップソングの名曲にも、悲しみと喜びが混じってような曲が多い気がするんですよ。踊ってるのに泣いてる、とか。音的にはすごくハッピーな歌なのに、歌詞を読むとすごく悲しいとか。そういう両面を持っている曲ってすごく魅力的だと私は思っていて、例えばペット・ショップ・ボーイズとか、ビーチ・ボーイズとかにもそういう名曲が多いですよね。自分はそういう音楽がすごく好きで、そういうインスピレーションがみんなに与えられる、すごく正直な曲が書きたくて。ポップスターだったりミュージシャンってすごく良い職業だと思っていて、確かに、本当に世界一良い職業だなと感じる瞬間も多いんですけど、さっきも言ったようにそうじゃない辛い経験をするときもやっぱりあるわけで。そういう、自分の気持ちや思いを包み隠さず表現したい、自分に正直でありたいっていう気持ちが表れてますね、このアルバムには。

──それこそダークな、自分の中の陰の部分とかにも向き合わなければ曲が作れないという面はすごくあるでしょうし。ただ刹那的に楽しむ音楽ではなくて、その中に自身のリアルな体験を投影しているからこそ、今回のアルバムのような深い聴き応えのある作品が生まれるのかなという気がしました。

リトル・ブーツ:ありがとうございます。そんな素敵な言葉を言ってもらえると、本当に幸せです。前作で自分を知ってくれた人は、例えばそのときのリード曲を知っていて他の曲を知らないとか。もしかしたら、中には一発屋じゃないですけど、1曲だけが有名になったアーティストなのかなと思っている人もいるかもしれないですけど、自分が成りたいのはそういうアーティストではなくて。ずっと、ずっと、今回のアルバムのように自分のありのままの気持ちや思いを表現することがすごく大切なんじゃないか、持続的にアーティストとして良いものを発信していくことが大事じゃないか思ってます。

──そんなリトル・ブーツのルーツ・ミュージックや、今よく聴く音楽はどんなものなんですか? さきほど“ポップミュージック”という言葉もありましたが、どんな音楽からインスパイアされることが多いのかに興味がすごくありまして。

リトル・ブーツ:色んな音楽が好きなんですけど、ルーツというか、自分が常に好きな音楽はやっぱり今言われた“ポップミュージック”とかなので、ビーチ・ボーイズからブリトニー・スピアーズまで聴きますね。で、サウンド・プロダクションというか、細かい音の部分で言うと、やっぱり1980年代のシンセ・ポップだったり、ハウスだったりディスコだったりは制作面ですごくクオリティが高いなと思っているのでよく聴いてます。今現在の音楽に関しては、よっぽどすごいプロダクションが良いものでないかぎり実はあんまり聴かないので、よく聴くのはやっぱり今言ったような素晴らしいクラシックな音楽が多いですね。

──確かに、シンセ・ポップやハウスを、今の時代の形として独自に解釈されているという印象は受けました。リトル・ブーツ流の新しいフィルターにかけて。

リトル・ブーツ:そうですね。自分の軸は失わないようにしているというか、それはもうずっと存在し続けているものなので、1stアルバムが好きな人も今回の2ndアルバムをきっと好きになってもらえるんじゃないかと思います。ただ、色々な音楽にインスピレーションを受けて私は自分の音楽を作っているので、新しいインスピレーションとこれまで自分の中にあったものが、いまおっしゃってくれたような“フィルター”を通って今回のアルバムのような作品が出来ているような気がします。

──この新作の曲がライブでどう表現されるのかも気になります。日本でのステージが、近いうちに実現するかどうかも含めて。

リトル・ブーツ:ぜひまた日本には戻ってきたいなと思っていて、ラッキーであれば夏フェス、そうでなければ単独で戻ってきたいですね。自分がライブを表現するにおいては、CDと同じじゃつまらないと思っているので、そういう意味で色んな工夫をしながら良いライブ、良いステージを皆さんに届けたいなと思っています。また日本に戻ってくれる日がすごく楽しみです。

──色々な工夫というところでは、僕も前回の来日時に観させて頂いたんですが、リトル・ブーツといえば“TENORI-ON”を使ったパフォーマンスが印象に残っている人が多いと思うんです。あれを使い始めたきっかけというのは?

リトル・ブーツ:元々は、私がレコーディングをしていたスタジオに“TENORI-ON”が置いてあって、見た目もすごく面白いなと思って(笑)。それで好きになって、すぐに借りて帰って色々使ってみて、映像を作ってYouTubeにアップしたらすごく反響があって。“TENORI-ON”って、機材っていうよりも、ガジェットというか。押して遊んでも楽しいし、ビジュアルのクオリティが良いので、そういう見ても聴いても楽しめるもの、オモチャみたいなものが好きなんですよね。そういう意味でも、今後もそういう色々なものを使ってライブをしていきたいと思ってます。

──ということは、また来日されるときには新しい仕掛けを見せてくれるかも?

リトル・ブーツ:メイビー! 例えば、なんですけど…。“PocoPoco”って知ってますか? ちょっと3Dっぽい機材というか、押すと、♪ポコポコポコ~って音が鳴りながらボタンが浮き上がるっていう感じの機材なんですけど(笑)。

──あぁーっ、はい!ニュース番組で取り上げられていたのを、以前見たことがあります。開発中の電子楽器ですよね?

リトル・ブーツ:そうそう。東京の大学で開発されている“PocoPoco”っていう新しい機材があって。まだ開発段階でまだ持ち歩ける機材として機能は無いかもしれないんですけど、じつは今日、その開発チームの方々と会うんです。もしそれがきちんと開発されたらツアーに持って行きたいなと思っているのと、“TENORI-ON”はもちろんこれからも使うんですけど、それは全曲っていうよりも、使う曲もあれば使わない曲も出てくると思います。というのは、“TENORI-ON”ってすごく独自の機材なので、他の機材だったりバンドメンバーとシンクしにくくて実はかなり使いづらい機材なんですよ。そういう意味でも、“TENORI-ON”は愛情を持ってこれからも使うんですけど、違う機材もまた増えたりすると思います。

──新しいアプローチがさらに出てくることを期待しつつ、まずは今日“PocoPoco”開発チームとのミーティングが上手くいくことを願ってますね。

リトル・ブーツ:ミー・トゥー(笑)!



取材・文●道明友利
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