結成から8年にして、もしかしたら一番大きなターニング・ポイントを迎えているのかもしれない。かりゆし58のニューシングル「青春よ聴こえてるか」は、「青春」という形のない、しかし誰にとってもリアルな存在との対話を通じ、今の自分を見つめ直すという手法で描かれた、新しいタイプの物語歌。かりゆし58らしい心地よいレゲエのリズム、語りかけるような優しいメロディ、斬新な表現方法とが共存するこの曲をきっかけに、バンドは次のステップへと大きく足を踏み出した。

■「青春」という奴が「最近どうよ?」って聞いてきたら
■オレはちょっとハッとするんじゃないかな?

──「かりゆしらしい、すごくいい曲だな」というのと同時に、「これは今までのかりゆしとは違うぞ」というところも、強く感じる曲なんですよ。

前川真悟・Vo&B(以下、前川):自分が今いる場所のことをよく考えてみて、結局こういうものが出来上がってきたんです。正直、何を自分は言いたいんだろう?という心の声みたいなものが、最近あんまり聴こえなくなってきていたので。

──そうなんだ。それはなぜなんだろう?

前川:たとえば、僕らにとって転機になった「アンマー」という曲があって、あの時は、次の曲の結果が悪かったらもう契約はないかもしれないという、「人生で最後の作品かもしれない」という覚悟を決めたことで生まれた曲だと思うんですよ。でもそのあとは、「今回がダメでも次があるさ」とか、どこかで考えているような気がしていて…。この、自分が今いる場所に対する興奮の無さは一体何だろう? ということがあったんですよね。それと、自分たちの良しとされてきたものって、「青くさいことを正直な顔で言うから恥ずかしくなく聴けるよね」というふうに評価してもらうことが多かったんですけど、そのこと自体に自分がシラけそうになる年でもあったりするんですよ。

──ああー。なるほど。

前川:それを恥ずかしがってたら、じゃあ自分のバンドとどう向き合うの? ということになるじゃないですか。だから今はもう一度足元を見つめ直して、もう一回まっすぐで、もっと太さが増したやつを作っていくべきだと思いつつ、いろいろ考えながらやってる時期ですね。

──その一つがこの「青春よ聴こえてるか」?

前川:そうですね。ちょうど分岐点になる曲じゃないかな、という気がしてます。

──曲調は、かりゆしが得意とするレゲエ調になっていて。

新屋行裕・G(以下、新屋):自分たちが得意なリズムだったり、出したい音とかを、わりと散りばめられたかなと思います。

前川:今までは最初にはっきりしたデモを作って、それをなぞっていく感じだったんですけど。これはコーラス部分を直樹が作って、(新屋)行裕と(中村)洋貴のアイディアも入ってるし、それぞれが曲作りに参加してるんですよ。

新屋:前まではプロデューサーさんとか、いろんな人の手を借りてやってきたんですけど、31歳になって、そろそろ自立しなきゃいけないなと思ったんですよね。今後バンドを続けて行くにあたって。だから今回は本気でやってみようという気持ちにはなってました。気づくのが遅いですけど(笑)。

──それぞれ、演奏のこだわりポイントというと?

宮平直樹・G(以下、宮平):こだわりは…徐々に、ドッカーンと来る感じ。

全員:(笑)。

前川:だいたいの曲はそういうふうにできてるよ!(笑)。

宮平:そこにちょっと、男らしさもあり…みたいな。

中村洋貴・Dr(以下、中村):ドラムは、最後のサビが勝負です。そこまでは無心の境地で、最後のサビでストレス発散、みたいな。オレもいるよ!みたいな(笑)。

──今までよりも、バンド全員で作った感覚は強い?

中村:そうですね。最後のサビとか、なかったんですよ。ラップみたいなところは、ドラムを録音したあとに作ったから。

前川:歌録りが終わったあとに、「ここ何か淋しいから、ノリで入れてみない?」って。今までは、「これで良し」というイメージがあって、それをバンドで具現化して行く作り方だったけど、今回は、どこに向かってるかわからないものを、みんなであっちこっち行きながら作ったんですよ。こんなにフワフワしたこと、なかったよな? 作りながら。

宮平:なかった。

前川:そこで一人一人のアイディアがなかったらこうなってなかった、という作品になったから。「こんなに頼りになる人たちとやってたんだ」と思いましたね、今回の曲は。

──で、歌詞なんですけどね。舞台は学校の校庭で、そこで「青春」が「あいつらは今どうしてんだ?」と「僕」に聞いてくる。すごく面白い擬人化だと思うけど、これ、どういうふうに思いついたんですか。

前川:出どころはどこなんかな? わかる? オレ、おまえ(新屋)に相談しながら書いてた覚えがあるけど。

新屋:歌詞は相当迷ってて、「どうしたらいい?」ということはあったよね。

前川:オレ、自分が書くものは何を書いても「イヤイヤ」ってなってた時期だったんですよ。子供が2歳ぐらいになると、何でも「イヤイヤ」する時期があるっていうじゃないですか。たぶんそれと同じですね。最初は、地元の友達と一緒に酒を飲んでて、なんとなく遠い目で青春を語る奴がいて、「そんなのやめろよ」というふうな歌詞にしようと思ったんだけど、「なんだこの上から目線は?」ということになって、「これはイヤ」と。それから、「おまえ大丈夫か、しっかりやってるか」という矛先を自分に向けてみようと思ったんだけど、それを自問自答してるのもうじうじしてるみたいで「これもイヤだ」と。そうやって、「これもイヤ、あれもイヤ」ってつぶして行って、最終的に…誰に言われたら一番ハッとするかな? って考えた結果、過去の自分とかではなく、誰にでもまんべんなく訪れる「青春」という奴がいて、そいつが「最近どうよ?」って聞いてきたら、オレはちょっとハッとするんじゃないかな?と思って、ここに行き着いたんだと思います。

──かりゆしには、実話に基づく物語調の歌はあったけど、擬人法というのか、半分空想のような、こういうの書き方は今までなかったでしょう。

前川:ですね。いつもの手法に逃げずにやったことが、うまく行ったかどうかは別として、一つの形になったかなと思います。でも、よく形になってくれたと思いますよ。今までで一番不安でした、出来上がったものに対して。

──これは本当に、すごくいいと思う。空想の力を借りて、逆にリアリティが増したというか。

前川:良かったー。

──最初のフレーズが「青春が僕に聞いてきた」で、最後が「青春よ聴こえてるか」。起承転結もばっちりはまってるし。

前川:まだ、運に見放されてないなと思いました(笑)。なんか、狙ったようにそうなりましたね。

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