【ライブレポート】オスカ:欧州のデカダンスとアヴァンギャルドを美しく描く期待のバンド

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ロキシー・ミュージックは1970年代、「A Song For Europe」や「In Every Dream Home A Heartache」などの名曲が象徴するように、ヨーロッパ、ひいては現代の退廃、デカダンスを見事に描いたバンドであり、その後のニューウェイヴ、オルタナティブロック、ポストロックに計り知れない影響を与えた。そこには詩人ボードレールが『悪の華』で描いた風景と同様の、退廃と官能の香りがある。ちょっと危険だが甘く美しい香り。現代のヨーロッパで、このような香りを持ったバンドにで出会うことは少し難しいが、ドイツ人日本人混合からなる5人編成のバンド、オスカ(OSCA)はその伝統を見事に継承し、かつ新しい試みを行っている希有なバンドである。

◆オスカ画像

2013年5月4日、ベルリン・フリードリヒ通りのライブ・ハウス、バー・タウゼント(Bar TAUSEND)にて、オスカ(OSCA)のライブが行われた。メンバーは以下のとおり。
・Yuka Otsuki(Vo, Violin)
・Matthias Erhard(Key, Whistle)
・Dominik Scherer(Tp, Perc etc)
・Chris Farr(D)
・Shota Higashikawa(B)

赤提灯が配置されたステージ上で、和風の赤と白の装束に身を包み、時にヴァイオリンを弾きながら、時に拡声器を取り出して歌う日系女性ヴォーカリスト、Yuka Otsuki。彼女はオペラ歌手のような唱法まで軽々とやってのける。日本語の歌詞の曲もある。Dominik Schererの演奏は、トランペットと呼ぶより、“ラッパの響き”と呼ぶ方がしっくりくるような、なんだか“差し迫る危機”への警告のラッパのような響き。彼は曲によってヴィブラフォンやコーラスでも、印象的な副旋律を奏でる。YukaとDominikは曲の間奏部でシアトリカルな寸劇を演じたりもする。

万華鏡を覗いて、『悪の華』の変化を眺めているかのように、オスカの楽曲はやや複雑な構成と展開を見せるのであるが、安定したテクニックを持つドラマー、Chris Farrと、7弦ベースを操る日本人ベーシスト、Shota Higashikawaが堅実でドラマチックなグルーヴを支えている。そしてキーボード奏者、Matthias Erhardの音色が楽曲に彩り豊かな風景を与える。とにかく、全メンバーがステージで演っていること、楽曲の構成が目眩く変化している感じで、全く観客を飽きさせないのだ。

オスカの曲は、女性ヴォーカリストYukaとキーボード奏者Matthiasによって書かれたものらしいが、構造的な美しさを持つ旋律、表情豊かなコード進行パターン、そして卓越した編曲能力から生まれる楽曲の立体美は、クラッシック音楽からの影響も感じさせる。しかし理屈っぽい音楽ではなく、踊れる音楽に仕上がっているところが素晴らしい。

ロキシー・ミュージック、ジョイ・ディビジョン、デヴィッド・ボウイのベルリン3部作などヨーロッパの退廃を美しく描いた音楽のファンや、上野耕路と戸川純のゲルニカ、そして椎名林檎の世界が好きな人ならば、確実にオスカの音楽を好きになるはずだ。また、ロシア・アヴァンギャルド、ダダイズムなどヨーロッパの前衛芸術のファンもオスカの音楽を気に入るだろう。オスカの今後の活動に注目しよう!

文&写真:Masataka Koduka

◆OSCAオフィシャルサイト
◆OSCA YouTube動画
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