【インタビュー】コシミハル「好きなことをずっと続けてきたので、このまま、また時間をかけて音楽を作っていくだけです」

ポスト

■古い音楽が聴かれることがないまま
■埋もれてしまうのは寂しい

――「Bonne nuit minouche」「Mona Lisa」に登場する雌鹿姉妹という架空の女性コーラスグループの活躍ぶりも素晴らしいです。コシさんが一人で多重録音されているんですよね。

コシ:はい。デビューは「ペリカン通り殺人事件」(2000年)ですけれど! ビッグバンドのコーラスグループのイメージです。

――「Un jour mon prince viendra」は白雪姫の曲ですよね。ディズニーの原曲と同じく、ヴァースの部分から始めるというのはどんな意図ですか?

コシ:古い楽曲って、メインのメロディの前にヴァースがあり、スタンダードで歌い継がれていくと、そういう部分は省かれていくことが多いので、あえてそこは最初の形に戻したかったんです。オリジナル録音のオーケストレーションがすごく綺麗だったので、その響きを大切にしながら、クラシックの歌曲に近い感じでやってみました。

――セルフカバーの曲も入っていますが、「Bonne nuit minouche」「希望の泉」の2曲を選んだのは?

コシ:「Bonne nuit minouche」は、時々ライヴでも演奏していた曲で、「希望の泉」は作曲したときにビッグバンドのイメージがあったので、両曲ともに今回の作品の時代性に近かったので、今回は生演奏で録音してみようと思いました。

――ラストの「Wiegenlied(シューベルトの子守唄)」だけは少し時代が違うんですね。でも、コシさんのお母様がよく唄ってくださっていた、ルーツの曲だというのがとても素敵なエピソードだなと思いました。

コシ:去年の夏に母が亡くなってから、ずっといろんなことを考えていて、レコーディングするには精神的にも辛い思いもあったんですけど。でも、振り返ると母との時間が今の音楽に大きな影響があったのだなという思いになったんです。あまりに自然な感じでそこにあったので気づかなかったんですが、母がいなくなって初めて気づいたんです。母は音大でオペラの勉強をしていたので、家ではいつも歌っていました。

――家でピアノを前に一緒に唄ったりしてたんですね。

コシ:はい。母の歌の伴奏をするのが楽しい遊びのひとつで、いろんな曲を覚えました。だから、今も沢山のメロディが頭の中でいつも鳴っていて。それが、特別な感じがなかったんです。普通に生活しているのと同じで意識もしていなかったので。それが、ある時、突然シューベルトの「野ばら」が歌いたくなって、『ボーイソプラノ』というアルバムを作ったのですが、昔、母がとても綺麗で高い声で唄っていた、その歌声が記憶の中にあって、それに導かれるようなところもあったのだと思います。

――今作に入れるべき曲だったんでしょうね。

コシ:はい。母が亡くなったことと作品とは別に考えたほうがいいのかなとか思ったんですが、私の音楽の中でとても大事なことだったので。19世紀の歌曲なので、クルーナーの時代から比べるととても古い曲ですけど。

――とても普遍的な作品ですよね。こういった30年代、40年代の古い音楽って聴く機会もなかなかないですが、今やるから、次にまた残って繋がって行くんだなぁと思いました。

コシ:そうですね。古い音楽が聴かれることがないまま、どんどん埋もれてしまうのは寂しいかなぁと思って。これからもずっと続けたいと思っています。

――こういう古い音源は、常に探しているんですか?

コシ:いつも聴いています。

――音楽と一緒に映画もさらに詳しくなりますね。

コシ:そうですね。古い映画は、映像も、美術も、衣装も、音楽も、素敵なものが沢山あって、俳優も輝いていて、様々な楽しみ方ができます。

――7月にはこのアルバムを引っさげてのライヴもありますね。小さなダンス付きとのことですが。

コシ:ふふふふ(笑)。バレリーナたちは出演しませんが…。今回はベースとドラムスとピアノのトリオで、このアルバムを中心に、オリジナル作品を織り交ぜて演奏します。

――今年はデビューから35周年ですが、これから挑戦したいものってありますか?

コシ:あまりそういう風に考えたことがないですね。好きなことをずっと続けてきただけなので、このまま、また時間をかけて音楽を作っていくだけです。

取材・文●大橋美貴子


『Madame Crooner』
5月22日(水)リリース
VICL-64033 \3,150(tax in)
01.Polka dots and moonbeams
02.You do something to me
03.C’est si bon
04.Un jour mon prince viendra(Someday my prince will come)
05.Bonne nuit minouche
06.Ich bin von kopf bis fuB auf liebe eingestellt(Falling in love again)
07.Kinder, heaut'abend, da such ich mir was aus
08.Parlez-moi d’amour
09.Mona lisa
10.La vie en rose
11.希望の泉 (Source d'espoir)
12.Les roses de Picardie (Rose of Picardy)
13.Wiegenlied (シューベルトの子守唄)

<コシミハル コンサート“Madame Crooner">
2013年7月3日(水)北沢タウンホール
出演
コシミハル(Chant, Accordeon, Glockenspiel, Piano)
フェビアン・レザ・パネ(Piano)
浜口茂外也(Percussions)
渡辺等(Contrebasse)
チケット発売受付:2013年5月10日(金)12:00より コシミハルのサイトにて
チケットお取り扱い/お問い合わせ:ミディアム
e-mail: info@daisyworld.co.jp(コシミハル コンサート係)
tel : 03-3440-6464(12:00-18:00/土日・祝日は除く)

◆コシミハル オフィシャルサイト
◆ビクターエンタテインメント
この記事をポスト

この記事の関連情報