【月刊BARKS つんく♂ロングインタビュー vol.1】「モーニング娘。は1年目の『紅白』で解散宣言するシナリオを考えてた」

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結成25周年を迎えているシャ乱Qのフロントマンであり、モーニング娘。やBerryz工房、℃-uteらが所属するハロー!プロジェクトのプロデューサーといえば、つんく♂。彼は同時に、総合エンターテインメントを手がけるTNXの社長であり、家庭に戻れば3児の父でもある。

多彩な顔を持つつんく♂は、今、何を考え、そしてどんな音楽を、どんなエンターテインメントを描こうとしているのか。今回、BARKSでは、つんく♂へのロングインタビューを敢行。つんく♂の軌跡をたどりながら、彼の描く未来に迫った。

第1回目は、誕生から16年目に突入したハロー!プロジェクトの展望。

  ◆  ◆  ◆

── いろんなところで聞かれているかと思うんですが、16年目のハロー!プロジェクトをあらためて振り返ってみてどうですか。やはり大変でした?

つんく♂:大変だったけどあっという間でした。先日、友達の高橋克典さんと一緒だったんですけど。そのとき「昨日モーニング娘。をテレビで観たけど、加護(亜依)ちゃんとかゴマキ(後藤真希)とかいないじゃん」って(一同、笑)。ま、彼も冗談で言ってるんですけどね。俺らオッサンになると辻(希美)がいて後藤がいてという10年ぐらい前の話がついこの間のような話になるんです。でも、世間から見れば10年というのはえらい昔で。俺らからすると15年なんてあっという間なんですけど、現場の子たちからすると15年前だとまだ産まれてないメンバーもいたりするわけですよね。

── それぐらい時間の経過がある訳ですから、その間に苦労された事もたくさん。

つんく♂:もちろんひとつひとつ思い出せばね。「急に辞めるって、どういうことやねん!」とか(笑)

── はははっ(笑)。では、この15年を振り返ってみて。そのなかで一番嬉しかったことというとどんなことが思い浮かびますか?

つんく♂:それはいっぱいある。最近だと「Help me!!」でオリコン1位とれたのはよくやった、と(※ 本インタビューは2013年4月に実施)。勢いある時にとってたのとは違って「よくやった!」と思いましたよ。スタッフもいろいろ作戦を練って、メンバーたちもキャンペーンやって、俺もこのシングルに関してはカップリングも含めてたくさんパターンを作って。みんなが手間をかけた。それでタイミングよく1位をとれたのはよかった。僕はよく「1位にこだわろう。」ってことを言うんですけど。だから(モーニング娘。として初のオリコン1位をとった3rdシングル)「抱いてHOLD ON ME!」も当時は相当嬉しかった。あのときも次はこういう曲で、時代感も考えてあんまり出過ぎず引っ込みすぎず(2ndシングルの)「サマーナイトタウン」の流れも汲んで……とか、自分の中でかっちり計算して作った曲だったんです。これが売れたらモーニング娘。の見え方も変わるな、プロデューサー・つんく♂の見え方も変わるな、と思って作った曲だったんで、1位とれたのは本当に嬉しかった。

── そして、その後は「LOVEマシーン」を筆頭にたくさんの1位を獲得してきたわけですが。

つんく♂:こういう風にどこかどこかに1位があると記録としてメモリーされていくので、時代を振り返れるからいいと思うんですよね。

── それがつんく♂さんが1位にこだわる理由ですか?

つんく♂:昔、まだモーニング娘。をやる前に、テレビの楽屋で、とある音楽プロデューサーと一緒になる時があって。その時、近くでその人が手がけていた女性アーティストが泣いてたんです。(その音楽プロデューサーが)「1位がとれなかったから悔しがってるんだよ。」と言ってたんですけど。僕はその時、そんなに1位にこだわりはなくて、どっちかというとたくさんの人に長く聴いて欲しいと思ってたんですよ。でもそのとき、彼が言ったことが面白かった。「女の子は枚数よりも1位とかわかりやすい結果のほうが嬉しいんだよ。」って。実際のところどうなのかは別として“あー、なるほどな”と。それがずっと頭の隅にあったから、モーニング娘。をプロデュースし出してから1位というメモリーを刻んでいくのは大事なキーワードなんだな、と思ってたんです。もちろん「1位とれよ」なんて彼女たちにはいわないですけど、とれたときには「良かったね」と声はかけます。

── そのモーニング娘。が、今、絶好調なわけです。プロデューサーとして、今の彼女たちの好調ぶりはどこからきてるんだと分析してますか?

つんく♂:今のモーニング娘。が世間的に見てどこまで好調なのかは別として、ここ4~5年、ちょっとぬるい感じがしてたハロー!プロジェクトの中で刺激を感じてもらってるのかな、という気がして。それは4年半ぶりぐらいに9期の新メンバーが入ってきての刺激だと思うんですけど。それでちょっとひっこんでたファンのみんなが、また戻ってきた感じがあって。「やっぱりモーニング娘。はこうだよね」っていう刺激。それと、曲調もちょっと変わってきたでしょ? ここ3~4年“J-POPのアイドル界の曲はこうでしょ”というのが何となくあったんですけど、そのアイドル界の流れとは少し違うところに(曲調を)ガーンと「ピョコピョコ ウルトラ」あたりから振り始めて。次の「恋愛ハンター」辺りからは面白がってくる手応えもあったんで、“ちょっとやっちゃいますか”と、しばらくそっちを突き詰めてみようと思ったんですね。サウンドがそうやってだんだん尖っていくと本人たちの顔つきも変わっていくし、グループ自体がおしゃれに見えていく。それで「モーニングコーヒー」を歌ってた頃のモーニング娘。とはまったく違うモーニング娘。が今いるわけです。

── 変わってきたといえば、今のモーニング娘。はダンスをフォーメーションで見せるものが昔よりも多いじゃないですか。そこにはどんな狙いがあるんですか?

つんく♂:わかりやすいんですよ。遠目から見たときに。チアリーダーとかマーチングバンドとかを本気でやってる人たちに比べるとまだまだ弱いと思うんですね。彼女達はツアーしながらレコーディングしたり握手会があったり、いろいろやりながら限られた時間内で完成形を作らなきゃいけないんで難しいんですけど。たまにポロポロ崩れる感じも含めて、そういう人間っぽい部分も含めてモーニング娘。が存在しているのかなって気がしてる。本当はもっとそこは詰めたいんですけどね。俺としては。

── そうなんですか?

つんく♂:ええ。動くときにズレたりするでしょ? そこはもっとピシーっといきたいんですけどね。それがズレてても許されてるのは日本の芸能界の曖昧さ。その中にいるから、いまのモーニング娘。でも鋭く見えるだけですから。

── そんな厳しい意見も出たところで、モーニング娘の12期メンバーの話にいきたいと思います。最初にその報道が出たとき、つんく♂さんから「数で勝負する」というお話が出て、ファンの間では「12期は20人くらい一気に入るんじゃないか?」と噂になったこともありましたが(笑)。

つんく♂:(笑)あれはスター性がなければ大量投入もありかな、ということ。

── スター性っていろいろあると思うんです。圧倒的に歌が上手いとか、トークが上手い、ルックスに華があるとか。つんく♂さんが考えるスター性の基準ってどんなところにあるんでしょうか。

つんく♂:別に歌が上手いからといってスター性があるとも限らないので、具体的に、と言われると難しいんですけど。なんか持ってるヤツというのはキランとするはずなんです。放っといても。だから、いまもし、安室奈美恵みたいな14歳がいたら強力だろうな、とは思いますね。当時の辻、加護、後藤にしても松浦亜弥もそうだったんですけど。キランとする“存在感”があったんです。

── 初めて本人を見たときからそれはあるものなんですか?

つんく♂:ありますね。鼻につくぐらい、くるんです。グイグイグイって。でもタイミングっていうのもあるんです。例えばね、今の芸能界にいる子やアナウンサーの中でも「私モーニング娘。に憧れてたんです」って人はたくさんいるんです。今、TVやCMで引っ張りだこの彼女も、実はモーニング娘。のオーディションを受けてたしね。でも、出会うタイミング、それからスター性はあってもそれがモーニング娘。という集団に入って輝くスター性なのかどうか、というのもあるんです。ソロのほうがスター性を発揮すると思えば、松浦なんかのようにモーニング娘。ではなくてソロでとるし。田中れいなが卒業して、今のモーニング娘。に入ってどう化学反応を起こすかということも含めて、スター性があって「モーニング娘。といえばコイツ」と言われるような子が見つかればいいんですけど。そうい子が入ると、他のヤツらの顔つきが変わってきますから。

── そうやって常に新鮮なモーニング娘。をこれまでずっと作ってきたわけですが。

つんく♂:世界を見渡してもここまで女性グループが長く続くのって珍しいと思うんです。
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