人間椅子へ、BARKSが宛てた質問公開「ああ、今回のアルバムは聴いてくれる人が増えるな、と思いました」

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人間椅子のニューアルバム、『萬燈籠(まんどろ)』がついに発売された。人間椅子は、2013年5月に行われた<OZZFEST JAPAN 2013>に出演し、そこで存在感を示したことにより、改めて注目を集めている。

約2年ぶりとなる新作『萬燈籠』。今作も一枚を通して、人間椅子の世界を存分に堪能できるものとなっているが、そのアルバムについて、BARKSが投げかけた質問に和嶋慎治(G&Vo)に答えてもらった。

  ◆  ◆  ◆

──<OZZFEST JAPAN 2013>にてももいろクローバーZとの共演という初の試みがありましたが、演奏してみていかがでしたか?

「彼女たちと初めてお会いしたのは、オズフェストに向けてのリハーサルの時。キラキラ輝いていて、まるで天使のようでした!
隣のスタジオではスリップノットが練習していて、夢のようでもあり、とっても楽しかったです。
本番当日。まず、ももノフのパワーに圧倒されました!そして何といっても、ももクロの一所懸命さに感銘を受けました。
僕も、トップアイドルとの共演という稀有な時間を、目一杯楽しみました。
終演後、ステージ袖で見ていたスリップノットのメンバーに、「グッジョブ!」と声を掛けられたのが嬉しかったです」

──その<OZZFEST JAPAN 2013>出演で反響を受けて、アルバム制作に影響した部分はありましたか?

「オズフェストの出演が決まった時から、ああ、今回のアルバムは聴いてくれる人が増えるな、と思いました。
したがって、どうしたって気合は入りましたし、第二のデビューアルバムぐらいの気持ちで制作に臨みました。
心掛けたのは、自分たちらしいロックな楽曲を作ること、です。
で、気がついてみたら、ブラックサバスに影響を受けた不気味な音(短5度)が随所に盛り込まれていて、アルバムの副題をデビルス・トーン、あるいはデビルス・インターバルと呼んでもいいくらいになりました」

──アルバム『萬燈籠』のジャケットでは、メンバー様の姿と大きな月が描かれた、とてもインパクトの強いアートワークとなっておりますが、これはメンバー様はどの場所からどんな想いで萬燈籠を見上げているのでしょうか。

「アートワークのコンセプトとしては、僕たち(そして皆さん)がいるのは、現在の、それぞれの状況に置かれた地上です。
そしてイメージの世界を見上げています。ミュージシャン(アーティスト)はまさに、そのイメージを作品として現出させるのが仕事ですし、どんな形であれ、人は自らの描いたイメージに向かっていくものではないのかな、との思いを込めました」

──収録曲「此岸御詠歌」は2013年からのライブのSEとなっており、『萬燈籠』でも1曲目となっており、“始まり”を意味する楽曲でもあるのでしょうか。

「まず、前作『此岸礼讃』からの続き、という意味合いがあります。
地味めな曲ですが、『萬燈籠』のオープニングSEのようになればいいと思い、1曲目にしました」

──収録曲に「地獄変」、「蜘蛛の糸」と地獄をイメージした楽曲がありますが、和嶋さんが想像する地獄の様子(どのような人がいて、どのような構造になっているのかなど)を具体的に教えてください。

「仮に肉体的に他者を傷付けたことのない人でも、憎悪、執着といった感情に捉われた状態の人は、自身がその感情の坩堝で苦しむ。
地獄もそういったようなもので、人間自らの想念が作り出したものではないかと思います。
18世紀の科学者、神秘思想家のスウェーデンボルグの著作には、闘争を好む人は死後もそのような世界を作り出し、永遠に戦争を続けているとあります。
地獄も然りでしょう。
階層もまた、砂の粒、星の数を誰も数えることができないように、悪想念に応じて無数に生み出されて行く。
しかし想念の作り出したものですから、悪が消え去れば、地獄もまたひとつづつ無くなって行くものと思われます」

──収録曲に「十三世紀の花嫁」がありますが、ここで描かれている“十三世紀の花嫁”と現代の“二十一世紀の花嫁”との違いを教えてください。

「この曲では、優しさについて歌いたかった。それは損得などの介在しない、素朴さから自然と生まれてくる感情です。
十三世紀といえばちょうど清貧を旨とするフランシスコ修道会が設立された頃ですが、「十三世紀の花嫁」は、僕が夢で聴いた詞曲を形にしたものなので・・・・なぜ十三世紀かと問われれば自分でも分かりません。
“十三世紀の花嫁”と“二十一世紀の花嫁”との違いですが、現代においても優しさを素直に表すことができるならば、そこに本質的な違いはありません」

──収録曲前半は、幻想的なもの、怪奇なものなど、さまざまな非日常な物語が描かれており、終盤の「月のモナリザ」~「衛生になった男」までの流れは、このアルバムのコンセプトでもある“可能性は無限”というメッセージやエネルギーのようなものが強く出ているなと思うのですが、アルバム1枚をとおして、ストーリー設定のようなもの、あるいはこの曲順にした意図的なものはあるのでしょうか。

「曲順はすぐに決まりました。まずは1曲目を前作からの流れである「此岸御詠歌」にする。
アルバムのサウンド全体は、ヘビー→軽快・ミドルを繰り返し→再びヘビーに至る、といった流れにする。
結果的に、「ヘビーさ」~「和風」~「非現代性、SF的幻想性」~「現実肯定、未来への可能性」と、コンセプトアルバムにふさわしいものとなりました」

──これまでのファンの方は、人間椅子の真骨頂であり、人間椅子の醍醐味を味わうことのできる『萬燈籠』だと思うのですが、新規のファンの方がこの作品にふれる際にオススメしたい聴きどころはありますか?

「いや、もうすべては聴き手の自由に委ねられています。
とにかく、ロックサウンドの持つカッコよさ、解放感を味わっていただければ。
表現というのは何でもできるのです。
あまり流行歌に馴染まない題材でも、ロックだったら取り上げることが出来る。
そこに“無限の可能性”“自由”を感じ取っていただければ幸いです」

──アルバムリリース後、レコ発ツアーを敢行されますが、どのようなツアーになるでしょうか。

「いわばレコ発ツアーというのは新曲の発表会なわけですから、ことさらにワクワクします。誰も聴いたことがないことをやるというのはひとつの挑戦であり、どのような反応があろうと、きっとそこには何か新しい発見、感動が生まれるはずです。
有り難いことに動員が増えつつある昨今、そのことを皆さんと共有できるのを今から楽しみにしています。
どうぞよろしくお願いします」

  ◆  ◆  ◆

さらに、和嶋慎治は各収録曲を制作するにあたってのキーワードを教えてくれたので、お届けする。曲世界への妄想をさらに掻き立てられるような、キーワード、できれば楽曲を聴きながらご覧いただきたい。

  ◆  ◆  ◆

1.此岸御詠歌──仏教的世界観。無常。今いると思い込んでいるところは幻影に過ぎない。リフは、琵琶曲の「平家物語」からインスパイア。


2.黒百合日記──恋の迷妄さ。しかし一片の純粋さ。いってみればアウトロは鎮魂歌。中間部はプログレバンド「ゴブリン」からの影響。恐怖映画。

3.地獄変──地獄は本当はない。自らが生み出しているもの。しかしながら、悪への憧れは誰もが持つだけに、魅力的だ。中間部の嗚咽断末魔の声が絶品。


4.桜爛漫──外人が聴いて「Oh Japanese!」を目指す。大正琴。今は疎遠になっている人に語るように歌う。悩んでいる人よ──。

5.ねぷたのもんどりこ──地域限定型土着性。ノスタルジー。田舎者の持つある種の怖さ、怪物性。祭囃子のプリミティブなパワー。

6.新調きゅらきゅきゅ節──北島三郎さんのデビュー曲「ブンガチャ節」。ナンセンスソング。メタルでやったら?東大寺の梵鐘。

7.猫じゃ猫じゃ──江戸趣味。小唄端唄。地口。恋の悲しさ。アコギ等、普段使わない楽器の導入。

8.蜘蛛の糸──地獄においてもなお地獄的視点から逃れられない男の視点。クールな質感。メンバー三人の共作。

9.十三世紀の花嫁──優しさについて。寺山修司。ポエトリー・リーディング。眠れる魂を覚ますために、今もサイレンは警告を発している。

10.月のモナリザ──YouTubeで見たアポロ20号。月面都市。異星人のモナリザ。死は存在しない。

11.時間からの影──コズミック・ホラー。H・P・ラヴクラフト。途方もない宇宙の果てで、神は夢を見ている。クラリオン星人とコンタクトを取ったマオリッツオ・カヴァーロ氏の話。

12.人生万歳──人生は自分の選んだ通りにしかならない。己れのしたことの大体は、生きてるうちにはね返ってくる。だから、面白い。シンプルなハードロックでストレートに。

13.衛星になった男──宇宙に出ようとする男の気持ち。犠牲的精神。失敗を恐れぬ心。星には辿り着けずに、衛星となって廻っている。そこに孤独はありや。ヘビーなリフ。


New Album 『萬燈籠』
TKCA-73939 ¥3,000(税込)
2013年8月7日発売
1.此岸御詠歌
2.黒百合日記
3.地獄変
4.桜爛漫
5.ねぷたのもんどりこ
6.新調きゅらきゅきゅ節
7.猫じゃ猫じゃ
8.蜘蛛の糸
9.十三世紀の花嫁
10.月のモナリザ
11.時間からの影
12.人生万歳
13.衛星になった男

<人間椅子レコ発ツアー ~萬燈籠~>
9月12日(木) 札幌ベッシーホール
9月15日(日) 青森クォーター
9月16日(月) 仙台enn2nd
9月20日(金) 博多DRUM Be-1
9月21日(土) 熊本DRUM Be-9 V-1
9月23日(月) 大阪ROCK TOWN
9月24日(火) 神戸チキンジョージ
9月26日(木) 名古屋Electric Lady Land
9月29日(日) 渋谷O-WEST
9月30日(月) 渋谷O-WEST
※全公演のチケット一般発売 7/21(日) 各プレイガイドにて

<AOMORI ROCK FESTIVAL ’13~夏の魔物~>
9月14日(土)青森県東津軽郡平内町夜越山スキー場
http://www.natsunomamono.com/
6:30 リストバンド交換開始 7時オープニングアクト開始
※再入場可能 (受付にてリストバンド提示)
※雨天決行(荒天時、天災時除く)
■チケット
オフィシャルホームページ限定早割りチケット
一人券 ¥6,600
4人券 ¥25,000
一般販売(プレイガイド情報後日更新)
一人券 ¥7,000
4人券 ¥26,500
中高生 1人券 ¥3,000 (当日券のみ)
出演アーティスト(第一弾)
人間椅子/ROLLYwith人間椅子/ZAZEN BOYS/TOTALFAT/group_inou/でんぱ組.inc/BiS/アップアップガールズ(仮)/曽我部恵一/ひとりTOMOVSKY/ザ50回転ズ/Wienners/非常階段/初音階段/三上寛/GOMA&The Jungle Rhythm Section/桃井はるこ/milktub/DJ.ダイノジ/大仁田厚/DDTプロレスリング/MC.アントーニオ本多 and more

<LIVE DVD 発売記念ツアー「四半世紀中」>
11月3日(日) 大阪BIGCAT
筋肉少女帯/人間椅子

◆人間椅子オフィシャルサイト
◆徳間ジャパンオフィシャルサイト
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