【ライブレポート】MASH A&R、音楽ファン終始熱狂の<MASH FIGHT! Vol1.5──夏のセミファイナル!>完全レポート 決勝シード権獲得はSwimy&かたすみ

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音楽雑誌「MUSICA」、flumpoolやONE OK ROCKなどが在籍する「A-Sketch」、音楽専門チャンネル「SPACE SHOWER TV」、サカナクションや系列会社にBUMP OF CHICKENが在籍する「HIP LAND MUISC」の4社共同プロジェクト「MASH A&R」が主催するイベント<MASH FIGHT! Vol1.5――夏のセミファイナル!>が、8月13日に大阪・心斎橋Music Club Janus、15日に東京・新代田LIVE HOUSE FEVERにて開催。このイベントは、年末12月26日に予定されるファイナルオーディションに向けたセミファイナル イベントとして企画され、各日共にオーディションアクト3組、ゲストアクト3組による計6組のアーティストが出演、約4時間にわたる熱のこもった競演が繰り広げられた。

 ▲Swimy

 ▲Moccobond

 ▲The Modern Age

13日の大阪公演、MCの飯室大吾によるイベント趣旨と審査投票の説明が終わり、まずステージに呼び込まれたのは滋賀出身、男女トリプルヴォーカルという変則バンド・Swimy。所々にタメやフックを差し込みつつもカラフルに開けていくポップメロディが爆発。アマチュアらしからぬ頼もしいパフォーマンスで会場を一気に盛り上げた。

続いて登場したのは、Moccobond。こちらも地元・大阪では既に定評のある実力派バンドで、柔らかな丸みのある男女ヴォーカルの掛け合いとセンチなキーボードのラインがきらりと光る。観ている誰もを幸せにするような温かさのあるポップバンドだ。

オーディションの最後は、高校時代の同級生で結成したという名古屋拠点で活動するThe Modern Age。くぐもった歌声に、まるで挑発するようにアグレッシヴなバンドアンサンブルが絡み合い、緊張と興奮が会場を包む。まだ粗削りな部分もあるが、可能性はひしひしと感じることができた。

オーディション3組が終わり、ゲストアクトへのセットチェンジの間に、もう一度、会場のお客さんへ向けて審査への参加が呼び掛けられた。ライヴを観て自分が一番だと思ったアーティストへ投票ができ、その結果が最終審査にも反映されるのだ。実際に参加できるイベントだけあって会場の様子も他人事ではなく、オーディション特有のかしこまった厳粛さも皆無。出演者は存分に自らの実力と想いをアピールし、フロアはそれを目一杯の力で向かい受ける熱気のあるライヴイベントとなった。ちなみに、審査投票に参加した人には、もれなくゲストアクト3組のオリジナル缶バッヂがひとつもらえるという嬉しい演出も。投票ボックスには長蛇の列ができていた。

 ▲THE ORAL CIGARETTES(ゲストアクト)

 ▲フレデリック(ゲストアクト)

 ▲アルカラ(ゲストアクト)

ゲストアクト1組目は、昨年度のMASH FIGHTグランプリにして8月にはMASH A&Rから第1号アーティストとしてデビューするTHE ORAL CIGARETTES。奈良出身で関西のライヴハウスを中心にキャリアを築いてきたバンドだけあって、東京での彼らのライヴとは違うホームの熱狂感がある中、本人達もいつも以上に気合いの入ったパフォーマンスを見せてくれた。自分達がオーディションに参加した時の思い出をMCで交えつつ、破壊力のある強靭なロックチューンでフロアの温度をさらに過熱させる。

続く、昨年度の審査員特別賞を獲得したフレデリックも、負けじと濃度の高いライヴを披露。ぬるりと感性の間に沁み込んでくるような三原健司/こーじの双子によるヴォーカルの掛け合い、軽やかに常識を否定していく非日常のロックは、人知れない愉しみを覚えた時の背徳感のようでクセになる。昨年度グランプリ・特別賞の2組による素晴らしいライヴパフォーマンスは、MASH A&Rというプロジェクトが2年目にして早くも成熟を迎え、ひとつの到達点に至りつつあることを感じさせてくれた。

この日のトリを務めたのは、アルカラ。今最もライヴバンドとして勢いのあるバンドのひとつであり、THE ORAL CIGARETTESやフレデリックにとっても地元の兄貴分的な存在だ。のっけから“いびつな愛”“踊れやフリーダ”といった定番曲で一気に場の空気を掌握すると、笑い満載のMCも炸裂。出演バンドへの愛に溢れた稲村流のイジりで、夢に燃える若いバンドへのエールを送っていた。お客さんも含め、関西から全国へ向けてこれからどんどん独創的なムーヴメントが起こっていきそうな予感と熱がJANUSに満ちていく。兄貴バンドとして意地と圧巻するほどの実力差を見せつけた分、これからの若いバンドの希望も一緒になって輝いた夜だった。

すべてのアクト終了後、いよいよオーディションの結果発表の時――。MASH A&R審査員の鹿野氏によって呼び込まれたのは、この日トップバッターとしてステージに立ったSwimyだった。どのバンドが勝ってもおかしくない高レベルで拮抗したオーディションの中、僅差で掴んだ決勝の舞台へのシード権だった。


 ▲軍艦オクトパス

 ▲かたすみ

 ▲Local Blue Sheeps

15日の東京公演、この日のフロアは大阪とはまた違う空気に包まれていた。年齢層も大阪よりは若干高め、おそらく目の肥えたコアな音楽ファンが多いからだろう。どこか張り詰める緊張感のようなものが漂う中、MCの藤田琢己によって呼び込まれたのは軍艦オクトパス。鮮烈なキーボードの音色と芯の通った強い女声ヴォーカルが、日常の感情を綴った歌詞に色をつけていく。メリハリの効いたサウンドが印象的だった。

2組目は、どこか掴み所のない男3人によるロックバンド、かたすみ。ずっしりと重心の重いリズム隊と我の強いヴォーカルがフォーキーかつ気骨のあるロックを奏でる。ステージ上での立ち振る舞いも含めて、かなりのアクの強さを感じさせたが、だからこそロックバンドとしてのキャラクターは他のバンドを圧倒していた。

続く3組目は、八丈島出身の4ピースバンド、Local Blue Sheeps。あどけなさを残す女声ヴォーカルとエッジの鋭いギターのリフのコントラストが面白く、おそらくかなり場数を踏んでいてバンドとしての経験値も高いのだろう。安定感のある演奏や、童謡“むすんでひらいて”を引用した“むすんで”で会場全体を巻き込んだパフォーマンスはとても頼もしかった。

 ▲フレデリック(ゲストアクト)

 ▲THE ORAL CIGARETTES(ゲストアクト)

 ▲赤い公園(ゲストアクト)

この日もゲストバンドには大阪と同じフレデリックとTHE ORAL CIGARETTESが出演。両バンド共、まだ初対面のお客さんもたくさんいる中、最初の盛り上がりこそ大阪より熱は低かったが、セットリストを進めるにつれて次第にお客さんの感情を鷲掴んでいく。

フレデリックは、一番のキラーチューン“SPAM生活”で、THE ORAL CIGARETTESは新曲“Mr.ファントム”で、それぞれハイライトに達し、バンドの雄姿を観客の心に刻みつけていった。

東京公演のトリでステージに登場したのは、前日14日にファーストアルバム『公園デビュー』をリリースしたばかりの赤い公園。お馴染みの白で統一された衣装で神秘的かつアクロバティックなパフォーマンスは、圧巻のひと言。衝動というにはあまりに美しく、芸術と呼ぶにはあまりに破天荒で緻密なアンサンブルでフロアをばっさばっさとなぎ倒していく。途中、倖田來未の物真似をするやしろ優の物真似をするといったお茶目さも垣間見せながら、ヒリヒリした耳鳴りを余韻に残し颯爽とステージを去っていった。

東京公演でシードを勝ち取ったのは、かたすみ。ビール瓶を片手に登壇する大物ぶりを見せたが、審査員・観客による投票共に賛否がわかれた中での決断だったことを聞いて苦笑い。しかし、その不遜なキャラクターこそが決勝への進出を決めた最大のポイントとなったようだ。これが吉と出るか凶と出るか――Swimy、かたすみの2組に加えて、これからも続くオーディションで選ばれたアーティストやバンドと共に年末に行われるファイナルオーディションの行方がひと際楽しみになる夜だった。


写真◎迫田ひとみ[大阪公演]・Viola Kam (V'z Twinkle)[東京公演]

◆MASH A&R オフィシャルサイト
◆MASH A&R オフィシャルYouTube
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