【ライブレポート】サザンオールスターズがいる限り、僕らの人生はずっと夏のまま

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「(この5年間)私たちにとって一つだけ足りないものがありました。そうです。このバンド無くしては日本という国がおっ勃ちません。さあいよいよ私たちの前にこのバンドが登場します!」

日本列島各地で40度を超える猛暑を記録した8月10日土曜日、午後6時20分。場内アナウンス(もちろん定番のシモネタ入り)で開演を告げた瞬間、7万人の大観衆から湧き上がった拍手と大歓声に込められた様々な感情の濃さを言葉にするのは難しい。この日のハイライトのひとつは5人のメンバーがステージに登場した最初の瞬間。「ああ、本当にサザンが帰ってきたんだ」という安堵と興奮の入り混じった独特の空気感は、かつて他のどんなライヴでも感じたことがない厚みのあるものだった。曲を聴くよりも姿を見ただけで満足するなど軽薄で不埒なファン代表のようだが、サザンオールスターズという真の意味での国民的グループにはそれだけの価値があるということだ。しかし多分、5年間のブランクは小さくないだろうし、桑田佳祐の歌も以前とはやっぱり違うだろう。本当の本音を言えば「歌や演奏が昔とは違っていてもサザンがそこにいて歌ってくれればいいのだ」という「自分内ナツメロ完結」もちょっと覚悟していた。ところが、だ。

一体何なんだこのグルーヴの凄さは。1曲目(意外でした)から松田弘と野沢秀行を中心とした豊かなグルーヴが炸裂し、キレのいいホーン・セクションが熱風のごとく吹きつける。サザンお得意のラテン調リズムの楽曲は特にアンサンブルが素晴らしく、遠くから見てもバンドの一体感はバッチリ。そして桑田佳祐のあの、渋さと伸びやかさを併せ持つ素晴らしいブルース・ボイスの不滅ぶりときたら!

「みなさんありがとう! サザンオールスターズです! 5年ぶり、恥ずかしながら帰ってきました。7万人、遠くからも来てくれたんでしょう。疲れるから座っていいよ(笑)。ゆっくりやりましょう」

恒例の「スタンド! アリーナ!」という呼びかけをまじえ、フレンドリーに客席に話しかける桑田佳祐。それに対して笑いと歓声で応える観客。5年のブランクは、冒頭の十数分で早くもどこかに消え去ってしまった。

「心をこめて、魂こめて、一生懸命1曲1曲歌い、演奏します!」

まるで高校野球の選手宣誓のような叫びでファーストMCを締めくくると、そこからは怒涛の名曲」の連打また連打。セットリストにはどうやら「過去のオリジナルアルバムから最低1曲は歌う」というテーマがあったのではないだろうか?、つまり35年に及ぶ時代のすべてをたどることができる、まさに音のタイムマシン。歴代ヒットシングルは言わずもがな、『10ナンバーズ・からっと』からあんな曲、『タイニイ・バブルス』からこんな曲、『綺麗』からそんな曲と、初期の曲を知っているファンには泣ける曲が数々あるが、それもハツラツとした演奏と歌のおかげでまったくノスタルジーには聴こえない。このみずみずしさをナツメロと呼んでいいのか? いや、これは2013年のサザンオールスターズなのだ。サザンの曲には、現在のJ-POPにはなかなかない幅広い音楽要素と深みが溶け込んでいる。ブルース、ファンク、ラテン、ロックなど洋楽要素はもちろん、歌謡曲、GS、フォークソングなど邦楽要素が、どんなにシンプルなバラード1曲の中にも潜んでいるから、さわやかに通り過ぎたあとの心の中に豊かな後味が残る。

「涼しくなってきたね。5年前とはずいぶん違う。あの時は前が見えなかった、雨で(笑)」

そう、5年前にここで行なわれた<真夏の大感謝祭>は雨にたたられ、バンドの無期限休業を見送るまさに涙雨となったが、今日の復活祭はまさに灼熱のマンピー記念日。そして5年前は体調不良のため一部参加にとどまった野沢秀行が、元気に全曲でパーカッションを叩きまくる姿が何ともうれしい。メンバー紹介の際の一言コメントも、野沢の声が一際高く聞こえる。

「みんなの素敵な笑顔を見て、“生きてて良かった!”と思いました。愛してます!」

もちろん、新曲もしっかりやる。原由子がヴォーカルをとる「人生の散歩道」は、タイムリーに『あまちゃん』のパロディ演出を加えて賑やかに。そして「ピースとハイライト」では、歌詞にこめたメッセージ性をよりわかりやすく表現すべく、日本を始め世界各国の首脳を思わせる人物たちが仲良くダンスするCG映像を含んだ演出に会場が大いに沸いた。さらにデビュー10周年時の「みんなのうた」や、25周年時の「涙の海で抱かれたい~SEA OF LOVE~」など、名曲たちを次々と披露。「みんなのうた」では桑田佳祐が右手にマイク、左手にホースを持ち、客席に向かって放水するパフォーマンスも久々に見ることができた。(勢いあまってギターの斎藤誠を直撃したように見えたが、みんな笑っていたので、多分大丈夫(笑))。

「最近取材を受けていまして、久しぶりにメンバーが集まるとうれしいでしょう?と聞かれるんですが、別に……」

終盤の桑田佳祐のMCに笑いが起きるが、それはもちろんジョーク。

「22、23でデビューして、中身は全然変わってないです。ずっと同じジョーク言ってるしね(野沢に向かって)“準メンバー!”とかね」

35年という長い月日を越える変わらぬバンドの結束力。結局、最後まで桑田佳祐の歌が衰えて聴こえる瞬間はまったくなく、素晴らしい演奏のグルーヴが止まることはなかった。デビュー曲「勝手にシンドバッド」から最新シングル「ピースとハイライト」まで、なんと全32曲で3時間に及ぶスペクタクルなライヴは、派手な演出も随所に散りばめた華やかなものだったが、バンドはあくまで「歌と演奏をしっかり聴かせる」ことに徹していたということを、ここで強調しすぎるぐらい強調したい。もう敢えて「復活」の二文字は必要ないだろう。サザンオールスターズは2013年をバリバリに生きるロックバンドとして、最高級のライヴを見せてくれたのだから。

「素晴らしい夏をありがとう。素晴らしい人生を過ごしてな。ありがとう!」

ツアーはこのあと神戸、茅ヶ崎、名古屋と続き、9月22日の宮城スタジアムまで全9公演で35万人動員予定。宮城といえば、2011年の桑田佳祐<宮城ライブ>で作られた「虹の広場」や、2012年のソロツアーで会場周辺に飾られた1000個もの美しい提灯を思い起こすファンもいるだろうが、今回はその提灯が全会場を巡るということで、日産スタジアムのコンコースに飾られた提灯が終演後の観客を美しく見送ってくれた。

サザンの夏は9月22日まで終わらない。いや、きっとこれからずっと終わることがないだろう。サザンオールスターズがいる限り、僕らの人生はずっと夏のままでいられるような気がする。


text by 宮本英夫

【シングル】
タイトル:「ピースとハイライト」  発売日:8月7日(水)
・完全生産限定盤「“胸熱35”カートンBOX」 2,500円 CD(4曲入)+納涼サマーポンチョ付
・CD通常盤:1,400円
・アナログ盤:2,200円“胸熱35”ロゴ特大ステッカーシート付
・会場限定パッケージ:2,500円 紙ジャケット仕様・“納涼サマーポンチョ <スタジアム解禁!!ver.>”(ピンク色)

【配信】
サザンオールスターズ『ピースとハイライト』はじめ全シングル54タイトル サザンオールスターズ公式サイトsas-fan.netで絶賛配信中。

【<サザンオールスターズ SUPER SUMMER LIVE 2013「灼熱のマンピー!! G★スポット解禁!!」>公演日程】
8月10日(土) 8月11日(日)  日産スタジアム
 開場:14:30 開演:17:30 
 一般発売日:8月4日(日)
8月17日(土) 8月18日(日) 神戸ユニバー記念競技場
 開場:15:00 開演:17:30 
 一般発売日:8月11日(日)
8月31日(土) 9月1日(日)  茅ヶ崎公園野球場
 開場:15:30 開演:17:30
 一般発売日:8月25日(日) 
 ※茅ヶ崎公演は、ライブ・ビューイングも実施。
9月7日(土) 9月8日(日)  豊田スタジアム
 開場:15:30 開演:17:30
 一般発売日:9月1日(日)
9月22日(日)  宮城スタジアム
 開場:14:00 開演:17:00
 一般発売日:9月15日(日)
チケット料金:全席指定 8,800円

◆BARKS ライブレポ
◆sas-fan.net
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