全国に23万人いる自衛官の中で唯一のヴォーカリスト、三宅由佳莉が8月28日、アルバム『祈り~未来への歌声』でCDデビューする。正確には彼女は海上自衛隊東京音楽隊に所属する3等海曹。自衛隊というイカついイメージとは裏腹に、彼女の透明感あふれるソプラノは柔らかく美しく、歌っているその姿がYou Tubeにアップされるや、再生回数30万回を突破するなど、今巷で話題の女性自衛官である。そんな彼女に話を訊くべく、海上自衛隊東京音楽隊を訪ねた。制服姿で現れた彼女は歌声と同様、透明感のある清楚な女性だった。

■海上自衛隊に入った初日から戸惑いはあって
■なんでこんなところに入ったんだろうって後悔しました(笑)

──三宅さんが今着ているのは海上自衛隊の制服ですか。

三宅由佳莉(以下、三宅):はい。夏の制服になります。海上自衛隊は、夏は白い制服なんです。

──世の中には制服萌えがいたり、最近では自衛隊萌えも一部でブームになってますが、この(東京音楽隊の建物)周辺に追っかけが来たりはしませんか?

三宅:来ないです(笑)。自衛隊萌えとか制服萌えっていうのは今初めて聞きました(笑)。でも海上自衛隊の男性はセーラー服で、すごくカッコイイんですよ。だから私もセーラー服は大好きです(笑)。

──三宅さんは昔から自衛官に憧れたりしていたんですか。

三宅:いえ(笑)。もともと小さい頃から歌が大好きで、祖母や母と童謡を歌ったり、家族と一緒によく歌っていたんです。小学校の5年生から合唱団に入って、高校3年の時には声楽を専門的に習うようになって、大学は芸術全般に触れる機会がほしかったので日本大学芸術学部へ進んだんです。大学では有志でミュージカルや舞台をやったりして、すごく楽しかったんですが、音楽を仕事にするのはなかなか難しいことですし、卒業後は自立しなさいと親にも言われていたので、普通に就職活動をして内定ももらっていたんですよ。

──一般の会社に就職が決まっていたんですか!

三宅:はい。そしたら内定が決まったあと、大学の先生に「海上自衛隊でヴォーカリストを1人募集してるから受けてみたら?」って言われて。正直、その時は受けるつもりは全然なかったんですが(笑)、4年間お世話になった先生がおっしゃるんだから、とりあえず説明会に足を運んでおこう、と。それで説明会に行ってお話を伺ったら、すごく心を動かされたんです。海上自衛隊はこういう組織で、その中の部隊である音楽隊は全国各地で演奏をしていて、世界中でも演奏しているっていうのを聞いて、世界かぁ……いいなぁと。で、一度は歌を仕事にすることをあきらめたんですが、最後に挑戦してみるのもいいかもしれないと思って、まぁ募集は1名だし、受からないよねっていう軽い気持ちで挑戦したら、ありがたいことに受かってしまったと(笑)。

──ちなみに、小さい頃から歌が好きだったということですが、どんな歌を聴いたり、歌ったりしてたんですか。

三宅:歌謡曲とかも聴いてはいましたが、自分で歌うのは祖母から聴いた童謡とか、合唱団でみんなで合唱するような歌が好きでしたね。だから、周りの子とはちょっと違うかなっていうのはありました(笑)。

──憧れの歌手とかは。

三宅:中学の頃は宝塚が好きだったので、姿月あさとさんとか大好きで。姿月さんのビデオはよく観たりしていました。

──そんな三宅さんが海上自衛隊に入隊して……今、何年目になるんですか。

三宅:4年経って、今年で5年目になります。

──自らの意志で飛び込んだとはいえ、最初、戸惑いとかはありませんでしたか。

三宅:もちろんありました(笑)。入った初日から、なんでこんなところに入ってしまったんだろうって後悔しました(笑)。

──何が一番、後悔の原因だったんでしょう。

三宅:私は今もここ(官舎)で暮らしているんですが、ここでの生活にはいろんな規則があって。朝は6時に“総員起こし”っていう起床の号令がかかってそれで起きたり、消灯時間も決まってたり、門限もあったり、あと、携帯も稼業時間中は使えないんですよ。大学時代は自由な生活をしていたので、今まで経験したことのない環境に置かれてビックリして、“あ、これは無理だ”って1日で思いました(笑)。でもやっぱり音楽隊に入って歌いたいっていうのがあったので、何とか頑張って。そしたら次第に慣れてきて、慣れてしまえばもう、それが普通になりました(笑)。

──自衛隊っていうと“匍匐(ほふく)前進”みたいなイメージもありますけど。

三宅:ありますよね(笑)。実際に海上自衛隊でも匍匐前進の訓練はやります。私も音楽隊に配属されるまでの最初の5ヶ月間はいろんな訓練を受けました。走ったり泳いだり、腕立てをしたり腹筋をしたり。あとカッターっていう16人乗りのボートを漕いだり、“結索(けっさく)”といって海上自衛隊ならではの紐を結ぶ訓練をしたり……。

──そこでも“もう無理!”みたいにはなりませんでしたか。

三宅:もちろんしんどいなと思うことはありましたが、私はもともと体を動かすことが好きで、大学時代は空手をやったりもしていたので、そこまで苦しいという感じではなかったです。訓練そのものも徐々に体力をつけながら、みたいな形でしたので。

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