元ラヴ・タンバリンズのeliと日本屈指のP-FUNKバンドFREEFUNKの共演。私、ライターの池上尚志とFREEFUNKによるライヴ・イベント<Tokyo Chitlin' Circuit>に出演していただけることとなったeliさんにインタビューを行った。

◆eli画像

ラヴ・タンバリンズといえば、渋谷系のソウル・サイドを担う重要アーティストとして、絶大なる人気を呼んだバンド。その一方で、バンドとしての実態はあんまり知られていないように思う。特に、シンガーのeli(当時はELLIE)は、誰もがその歌の実力を認めるものの、「なぜ?」が付く存在だった。

例えば、ヴォーカル・スタイルもそうだが、その出自であったり、渋谷系の中にあってどこかズレているというか、妙な居心地の悪さを感じなかっただろうか。もっと言えば、バンドからもeli一人が浮いていた。その違和感にどれだけの人が気付いていたかは分からないが、少なくとも僕は、彼女らの存在を初めて知った「Cherish Our Love」以外の作品は、渋谷系云々とは別のところで聴いていたような気がする。

eliは渋谷系をどう見ていたのか。本当は何をやりたかったのか。今も多いラヴ・タンバリンズの熱狂的なファンが読んだらショックを受けてしまいそうな内容もあるが、腑に落ちることもたくさんあるだろう。また、話は現在の音楽シーンや業界のことにも及び、かなり踏み込んだ興味深い内容となったが、ここではeli自身の音楽の話を中心にお届けする。

インタビューにはFREEFUNK艦長もたまに出現します。

■渋谷系はニュージャック・スウィングを理解できない

──僕はラヴ・タンバリンズの曲の中では「Midnight Parade」が好きで、自分のバンドでもカヴァーしたことあるんですが、歌詞の中に"Say No!"ってあるじゃないですか。"No!って言え!"って、今もだけど当時もそういうのはなかったから、それがすごく印象に残ってるんですよ。

eli:"No!"って言っても、"Yeah!"って返してくる。分かってないんだなぁって(笑)たぶん、英語が理解出来てないから…洋楽とか聴かないのかな? そういう(ほかに)ないものをやるというのはいつも思ってた。例えば、あたしがいた(渋谷系の)シーンに、あたしが言ってるようなことを言ってる人はほかにいないわけですよ。スノッブだしアイロニックだし、そういうのが美意識としてあったから。東京の子ってこうなのかなと。結局、生粋の東京っ子って、友達の友達くらいが有名人だったり、学校にモデルがいるとか、確かにそういうのが近くにあるんだけど、別に自分が華やかなわけでもなんでもなくて。で、(東京の)外から来る人たちがボンボンとビル建てるわけよ。地方出身者の方がギラギラで来るわけ。(夢に)破れた人は東京なんてバビロンだとか言って(笑)、それを引いて見てるのが東京っ子だと思う。クルーエル(註:ラヴ・タンバリンズ時代の所属レーベル)だと、あたしはもう別の人種みたいな感じ。浮いてるし。

──あの辺のシーンはフリッパーズ・ギターを中心に回ってましたね。

eli:そうそうそう。ブリッジとかね(笑)。あたしとはぜんぜん合わない。この中で水着で出るとか、そんな人いないの、一人も。みんなボーダーのシャツ着てさ、カンゴールの帽子被ってみたいな。そんな感じだったから。その中に肉体的な人がいるっていう。だって黒人音楽ってそうじゃん。

──いちばん最初の「Cherish Our Love」のジャケ写ってかわいらしい感じじゃないですか。柔らかい感じで。あの写真しか知らないから、小柄でほわっとした…。

eli:ほわっとした、確かに(笑)

──かわいらしい感じの女の子が歌ってるんだなってイメージだったのが、2枚目が出たら"Say No!"じゃないですか。3枚目が出たら脱いでるじゃないですか(笑)なんなんだろう、この人は?って(笑)

eli:あはは。あたしはざっくり黒人音楽全部と、あとレッド・ツェッペリンとかハードロックが好きで。別におかしくないじゃん?

──ラウドネスやってたって聞いたんですけど。

eli:うん。やってました。まぁ、ラウドネスはさておき、モトリー・クルーとか好きだったのね。そういうのとブルースを感じるロックの人が好きで。ジミヘンとかジャニス・ジョプリンと黒人音楽。そこからスライに行って。プリンスだってロックっぽいことやってたじゃん。ボビー・ブラウンとかからだよ、そういうとこからちゃんと通ってる人、ちゃんと踊れる人は理解できるの。通ってないんだもん。そこを度外視にして急に黒人音楽語ってるのね、渋谷系の人って。だから、ほんと気持ち悪いの。あはははは。

──プリンスとかボビー・ブラウンとかそういうのを専門的に聴いてた人は、いわゆる渋谷系、フリーソウル、サバービア、そっちの方面に対してはものすごくアンチなんですよ。根っからのソウルファンは。あんな聴き方をするっていうのはまったく理解できない。

eli:KC松尾さん(註:松尾潔。ブラック系専門の音楽ライター出身で、現在はEXILEなどのプロデューサー。特にアメリカのR&Bに造詣が深い)っているじゃないですか。「Bitches In Babylon」を出したとき、ようやくあたしのインタビューをするようになったんだけども、やっぱり今まで(渋谷系的なイメージが)嫌いだったってハッキリ言ってた。(渋谷系は)モッズからのブラック・ミュージック、パンクとツートーン/スカ。で、モッズはいちおう黒人音楽ではあるので、そこから入って行ったがためにスタイル・カウンシル的な方に行くっていう(笑)

──王道のパターンですね。

eli:ブルー・アイド・ソウルなんだよね。要するにイギリスなんだよ。イギリスも時代的にソウル II ソウルとかいたからね、もちろん勉強はするんだけど。あとアシッド・ジャズ、トーキン・ラウド、それこそブランニュー・ヘヴィーズとかさ。でも、やっぱり生々しくないのよ。洒落てるの。洒落てるのはやろうと思えばやれちゃうじゃない。ステキな感じで。メジャー7th(註:4和音のコードの1つ。軽やかでオシャレに聞こえる。CM7はド+ミ+ソ+シ)だね。

──それ、ポイントですね。

eli:そこじゃなくって、マイナーをやるんだけど、スケールが全部ペンタトニック(註:一般的には、ロックなどで最もよく使われるベーシックな五音音階のこと。小沢健二がソロになったとき、ペンタトニック・スケールを使ったソロを弾きまくったりして、渋谷系ファンの人たちからは驚きの声が上がった)だとか、R.ケリーなんかそう。アリーヤもそうだし。全部そう。それが理解できない。あとニュージャック・スウィングを通ってない人たちが多くて。

──あれはファンクですからね。

eli:なんでボビー・ブラウンなんか聴いてるのか理解できないわけよ。あんなダサいものをっていう。洒落てるか洒落てないかで判断する。

──まぁ、ボビー・ブラウンはボビ男くん(註:ボビー・ブラウンのマネをして刈り込んだ髪型が流行った)とかいたから、一般的にも誤解されるようになっちゃったけど。

eli:その後GUYがきて、テディ・ライリーがプロデューサーとしてすごくなって、そうなったらみんな認めるのよ。あと、あたしが好きだったのはジョディ・ワトリーとかペブルス。

──ペブルスかわいかったよね。

eli:かわいかったよねぇ~。ちょっとアンニュイな感じで。あそこらへんの細声の人が出てきてジャネットがその後に来るんだけど、そのちょっと前に、ハーブ・アルパートの「ダイヤモンズ」を聴いて。それにジミー・ジャム、テリー・ルイスが入ってジャネットが歌ってるの。そのPVをMTVかなんかで見て、何かに殴られた感じで、これだ!!って。やりたいのはコレだ!!コレなんだ!!って思って。なのに、一緒にやってる人たちがモッズだったから。スペシャルズとかツートーンとか。だからレゲエはやってたんですよ。ON-Uサウンドっていってダブ・レゲエをやってたんですけど。

──エイドリアン・シャーウッドね。

eli:懐かしい名前が出たんだけど(笑)ゴールデン・ダブ・アパッチってグループで、そのとき斉藤圭市っていってラヴ・タンバリンズで一緒に曲を作ってた彼もいたんだけど、もうひとり変わった人がいて、岡田くんっていってピュンピュンマシン(註:ダンスホール・レゲエで使われるピコピコピュンピュンいったサイレンの音を出すマシン)を作った最初の人。だから、レゲエの友達に聞くと、えっ、あの人?みたいな。みんな知ってた。そこで繋がるとは思わないからびっくりして。でも、ON-Uでしょ、暗ーいの(笑)

──音響の世界ですからね。

eli:そう、音響の世界。