【インタビュー】自分勝手な愛。米津玄師が語る2ndシングル「MAD HEAD LOVE / ポッピンアパシー」

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10月12日(土)~10月14日(月)まで徳島県徳島市で行なわれるアニメイベント・マチアソビにて、イベント司会として街を盛り上げたニッポン放送アナウンサー・吉田尚記(よしだ ひさのり)がパーソナリティを務める10月15日放送のラジオ番組『ミュ~コミ+プラス』(AM1242 ニッポン放送毎週月曜~木曜 深夜24時~)。このニュースはミュ~コミ+プラスとBARKSが連動し、聞けなかった人のために、誌上再現したものをお伝えする。

今回のゲストは偶然なのか、マチアソビの舞台である徳島県出身の米津玄師(よねづ けんし)さん。2009年より「ハチ」の名でニコニコ動画に自身が作詞作曲するVOCALOID楽曲の投稿を始める。再生数650万回を超える「マトリョシカ」や380万回を記録した「パンダヒーロー」など、今のニコニコ動画の人気を作り、そしてその枠の外へ飛び出し活躍し続ける米津さんが今回、10月23日に発売される2ndシングル「MAD HEAD LOVE / ポッピンアパシー」を引っ提げて登場。

愛を語るありふれた世の音楽を、愛の衝撃波で吹き飛ばす「MAD HEAD LOVE/ポッピンアパシー」について語る。

吉田尚記(以下、吉田):僕らは良いものは良いと思う瞬間もあるわけですよ。という事で、今日はゲストに来ていただきました。ミュ~コミ+プラス2回目の登場、米津玄師さんです。

米津玄師(以下、米津):宜しくお願いします。

吉田:6月3日以来、2回目のご登場です。

米津:お久しぶりです。

吉田:さっきまで凄いテンションの高いことをやっていたので、このテンションにあえて落として、お会いするのが不自然な感じがしてしまってならないんですけど。

米津:すいません。僕がテンション低いんで。

吉田:テンションが低いって、自分で思っているんですか?

米津:そうですね……低いですね(笑)。

吉田:だけど音楽的にはテンションが低いというのは、今まで一度も感じたことがないというか。

米津:あっ、本当ですか?でもポッピンアパシーなんて、めちゃめちゃテンション低い歌詞ですよ。

吉田:歌詞はね! 前回、来ていただいた時に、ものすごく普通の人だったら禍々しいことになってしまう言葉を使って、明るいことを書いているという話をしていただいて、全てが、本当に素晴らしくなかったことがない! と米津さんに対してずっと思っている訳ですよ。大変勝手ながら。

米津:ありがたいです。

吉田:で、次どうなるんだろうと、ちょっと期待しておりまして。今回の曲が、ラブソングだったのはもの凄くびっくりした。

米津:そうですか?

吉田:「MAD HEAD LOVE」という曲と「ポッピンアパシー」という曲に対して、僕が聴く限り、両方ラブソングに聞こえます。まず間違っていないですよね?

米津:「MAD HEAD LOVE」はそうですね。ラブソングって一般的に言われるのが“お互いを慈しみ合って”“優しく、優しく”みたいなイメージがあるじゃないですか? そうじゃないラブソングを作ろうと思ったんですね。

吉田:先にラブソングを作ろう!というのが来ていて、しかも普通じゃないラブソング。いわゆる世間的に言われるラブソングのラブって、あまりにも1つの意味過ぎって思う?

米津:1つの意味?

吉田:なんだろう。(ラブって)“それがあれば全て”みたいな感じになるじゃないですか?

米津:はい。

吉田:前々から米津さん以外のラブソングを聴いて、そういうパターンが多すぎるなと。愛といったら無敵ワードじゃないですか?

米津:そうですね(笑)。

吉田:本当にそうなのか?って思いませんか。

米津:う~ん。愛といったら無敵ワード……どうなんですかね。何か分からないですけれど。

吉田:昔、確か宮部みゆきさんが言っていたと思うんですが「愛は世界を救う」ってよく言うじゃないですか。あれは嘘ではないかと。愛は世界を救わない! もっと自分勝手なものだという話をしていて、本当にそうだなと思ってたんですけれど。

米津:救われていたらとっくに世界は救われていますよね。

吉田:ということは、もう少し自分勝手なものだと思いますか?

米津:う~ん。「MAD HEAD LOVE」では自分勝手で、あまり自分を相対化しない、自分と相手しかいない。それ以外は目にも入らないような、極端な愛情表現を描きました。……

大抵、喧嘩している二人(恋人同士)って、そんな感じだと思うんですよ。自分が喧嘩したときとか、喧嘩している人を見たときとかも思うんですけれど、「相手を如何に懲らしめてやろうか」「相手を如何に苦しめてやろう」ということしか頭にない。そういう、ある種の盲目的なまでの感情も、愛情というか……。

吉田:もう何にも考えずに突っ走る感じ。

米津:そうそうそう。それがやっぱり人間として一番美しいと思うんですよね。こう、自意識にまみれて「これをやれば、こうなる」みたいに、自分のやることなすことに客観的に見ようとして、結局何もできないみたいな人間というのは「しょうもないなぁ」と思って。それは自分にも当てはまると思うのですが。

吉田:一回、こう、ぐるぐる(自分の中での葛藤)しないでいきなりドーンって飛べる人はいいなと思うんですけど、できなくないですか?

米津:できないですね。

吉田:でも、ぐるぐる回っているだけじゃダメで、どこかでドーンと飛ばなきゃいけないってちょっと思いますよね。

米津:そうですね~。

吉田:曲作れる人がいいなぁと思うのが、米津さんの曲では凄い感じるんですよ。つまり、ぐるぐる回った上で「もういいや!飛んじゃえ!」と、今までぐるぐるしているから、飛ぶ時に単なる放物線じゃなくて、放物線の周りに色んな言葉が張り付いているという曲が多いんですよね。今回、一番グッと来たのが愛という言葉が多く出てくるんですけれど、そこに“爆破”という言葉が出てきて「あっ!!」と思ったんですよ。その喧嘩している時に相手を爆発させたいし、どうせなら自分も爆破されたいって思ってない? と思ったんです。そうは思ってないですか? 爆破させたいだけ?

米津:それは分からないですけれど……う~ん、あるのかなぁ……。「あるものを破壊する」という攻撃的なニュアンスが、「MAD HEAD LOVE」を表現するのに合うと思いました。

吉田:ちょっと思うのは今までの米津さんの作品って、クリーチャー・怪物がたくさん出てくる。怪物って我々が自分の力じゃどうしようもないようなモノの象徴。実は最近、「ROCKIN’ON JAPAN」誌でもそういう連載がスタートしていて、もの凄い智力を尽くして戦うのに、自分の智力が及ばないモノに惹かれていく……。

米津:僕としては怪獣というものに凄く特別な思い入れがあって。というのは自分が凄いイビツだなと思うので、怪獣というのは自己投影なんですよね。

吉田:戦う相手じゃなくて、自分が怪獣だと思う?

米津:自分が怪獣だと思っている。

吉田:ということは、怪獣だけれども仲間に入れて欲しいのか、それとも怪獣だから相手のことを踏みつぶしちゃったりしたいのか。どっちでしょうね。

米津:僕が言う怪獣というのは、凄いしょうもない自意識の問題で、自分が変な人間・イビツな人間という自意識があって、それの具現化ですよね。なので、そこに破壊衝動がないわけではないですが、そこと怪獣の存在を深く結びつけて考えたことがないですね。

吉田:なるほど。怪獣は怪獣としてそこにあるだけで、破壊したいというよりも、むしろ「普通だったら楽なのになぁー」とか思う感じですかね。作曲についてですが、どこまでいっても普通って偽装でしょ。普通じゃない部分を出さないと曲は作れないですよね。

米津:そうですね。

吉田:普通じゃなく、パッと曲を作れたときって、翻って、気持ちよかったりします?僕は正直、この歌(MAD HEAD LOVE)は気持ちいいだろうなと思うんです。

米津:気持ちいい……どうなんですかね。自分らしい曲に出来たと思います。う~ん……そういう意味では気持ちいいですね。気持ちいいです!

吉田:無理に言わせているような感じになっちゃいましたけど(笑)。じゃぁ曲紹介していただいてもよろしいでしょうか。

米津:米津玄師で「MAD HEAD LOVE」


吉田:聴いていただいているのは、今日ゲストに来ていただいている米津玄師さんで、「MAD HEAD LOVE」。これはさっきも言った通りポッピンアパシーとの両A面(CDにおいて、タイトル曲となるものを2曲収録した場合の呼称)なんですけれど、これって生バンドですか?

米津:生で撮りましたね。「MAD HEAD LOVE」は。

吉田:ポッピンアパシー、実はちょっとだけ聴いてもらいましたけれど、あっちはバンドっぽくないですよね。

米津:あっちは全部自分で打ち込み(打ち込みとは、あらかじめ入力しておいた音を用い、それを再生することで演奏させる技法)でやっています。

吉田:普通、両A面で出す時って、演奏する人たちは両方とも作っていたりすることが多いと思うのですが…。

米津:別に自分としては分けようとか考えていた訳ではなくて、結果としてそうなったんですよね。デモで作っている段階でポッピンアパシーは、全て打込みのサウンドが合うなと思ったので、意図してこうなった訳ではなく、両方ともバンドでできるんだったらバンドでやりましたけれど。

吉田:両A面になっていて、今、聴いてもらっている「MAD HEAD LOVE」についてリスナーさんが「なんと言うか、色々考えさせられる曲」と言っていて。

米津:何かすいません(笑)。

吉田:いや、いいんじゃないですか。僕は気持ちよくなりつつ、あれっ!?っと考えさせられるのですけれど。それに対して、さっきのポッピンアパシーというのは、やはり考えるには考えるんですけれど、もっと一人ぼっち感があるというか。「MAD HEAD LOVE」は完全に二人の曲ですけれど。あっ、バンドと打ち込みの違いってそういうこと?


米津:確かに、後々考えるとそういうことだと思います。でも自分で意識をしていなかったですね。

吉田:今回、この曲をライブで披露したりするのかなぁと思っていたのですが……米津さんは実は今まであまりライブってしていないんですよね?

米津:したことないですね。

吉田:ただ今回、Ustreamの生放送が今後予定されているのですが、これはどうするんでしょう?

米津:これは……やりますね。

吉田:演奏するんですか?

米津:はい、弾き語りを。月に1回くらいのペースで続けてます。

吉田:そうなんですか!? 一応、予定されているのが10月19日(土)21:00からUstream生放送があったりしまして、今回はスペシャルプレゼントキャンペーンとかもあったりするんですよね。CDの帯の裏面にあるバーコードを切り取るとトートバックとか壁紙が当たるらしいです。そして、今回のリリースと同時に、“ハチ”名義で2009年から2011年に発表した2枚のアルバム『花束と水葬』『OFFICIAL ORANGE』が再発売されるということになっております。ちなみに、正直に話すと、今日からこのミュ~コミ+プラスの放送がBARKSの記事になるということを突然知ったので、米津さんのインタビューを無理矢理、格好良くしようとしたんですが失敗してしまいまして。

米津:すいません、何か良い話できなくて(笑)。

吉田:本当はこの曲はこんな感じだった! と言い残したことがあれば聞きたいなと思うのですが。

米津:いや、何一つ嘘はついてないので、この会話の中で出てきたことが本当なんだからそれでいいのではないかと。

吉田:普通じゃないラブソングを作ろうと思ったところが一番、嘘のないところ?間違いのないところ?

米津:ですね。

吉田:分かりました! すいません、ラジオが好きだということで毎回色々考えてきてくれるんですけれど、また次回、チャンスがあったら生放送に来ていただけると嬉しいなと思っております。ということで今日のゲスト・米津玄師さん、ありがとうございました!

米津:ありがとうございました!

放送終了後、普通なラブソングが蔓延する世に、一石を投じるようなラブソングを作り、歌い上げる米津さんに「MAD HEAD LOVE / ポッピンアパシーをどういった人に、どういう風に聴いて欲しい」か聞いてみた。

「同世代の人間に、より深く聴いて欲しいと思います。同じような悩みや、葛藤を持った人には深く共感してもらえるのではないかと思います」(米津さん)

愛に対して、偽ることなくさらけ出すようになった若者の心・思いを表現する「MAD HEAD LOVE/ポッピンアパシー」は10月23日に発売。乞うご期待。

~吉田尚記の放送後記~
今日の話で言うと、愛は地球を救うというのは嘘だと思う。宮部みゆきさんは、じゃぁ何が世界を救うのかといった時に“親切が世界を救う”と言っていたんですよ。そうすると愛は別に親切でも何でもないよねという風に言っている歌はあまりなくて、これってまさに、そこを指摘しているのはさっき言っていた爆発というのはよく言うけれど、爆破というのは全然親切じゃない。そういう風に言っているのがこの歌の良いところなんだと思います。

ミュ~コミ+プラス:
※ゲストへのメッセージの宛先は、mc@allnightnippon.comへ

「MAD HEAD LOVE/ポッピンアパシー」
10月23日(水)発売
【初回限定盤(DVD付)】UMCK-9639 ¥1,890(tax in)
ディスク:1
1. MAD HEAD LOVE
2. ポッピンアパシー
3. 鳥にでもなりたい
ディスク:2
1. MAD HEAD LOVE (Music Video)
2. ポッピンアパシー (Music Video)
【通常盤】UMCK-5447 ¥1,260(tax in)
1. MAD HEAD LOVE
2. ポッピンアパシー
3. 鳥にでもなりたい

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