【インタビュー】J、9thオリジナルアルバム『FREEDOM No.9』リリース「いまだに自分は“自由”を追い求めて、“自由”を得ている」

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Jの9枚目のオリジナルアルバムが完成した。王道と言われるロックンロールにあえてトライし、そこに自らの情熱とテンションを注ぎこんだという新作から見えてくるのは、Jというアーティストの核心だ。小学生のとき、パンクロックに撃ち抜かれ、ベースを手にしたJが得たものは、可能性を試せる自由。だからこその『FREEDOM NO.9』。この時代に彼が放つ熱い熱いロックを体感してほしい。

◆「NEVER END」ミュージックビデオ

■“Jってこういう音出すよね。こういうヤツだよね”っていう
■イメージのド真ん中のボールを投げてやろうと思ったんだ

──現在は全国ツアーの真っ最中で、ニューアルバムからの曲も披露しているんですよね?

J:そうですね。今は全国ツアーと並行して毎月、<TOKYO 10 DAYS!!>と題したライヴをやっていて、新曲もプレイしてるんですけど、いい感じのウネリが生まれてきてます。俺自身、過去にはCDをリリースする前にライブで演奏して、バンドでのし上がってきた経験があるから、逆に健全な在り方なのかなって。みんなの前で新しい曲を爆音でプレイできるのはすごく嬉しいこと。ノッてる人もいれば、じっくり聴いてる人もいるんだけど、そのリアクションがまた新鮮だったりするので。

──実際、ニューアルバム『FREEDOM No.9』はライヴを想定している部分もあると思うんだけれど、今まで以上にロックンロールでパンクでオルタナティブで、音がかなり削ぎ落とされている印象を受けました。

J:余計なものを省いていって自分が鳴らしてきたバンドサウンドをより強固で明確なものにしたいっていう想いが強かった。先の景色を求めるというより、あえて自分たちが今までやってきたことをなぞろうって。でも、それは同じ歩幅で遠くに飛ばなきゃいけないことを意味するから、自分たちにとってはやりがいがあることであり、最大のチャレンジでもあって……。“Jってこういう音出すよね。こういうヤツだよね”っていうイメージのど真ん中のボールを投げてやろうと思ったんだ。だからこそ、今まで以上のボールを投げられないと自分自身、納得できないし、ドキドキしないと思ったから、そういう意味では目標はハッキリしてた。

──これまで以上に強く速くダイレクトに届く球を投げたいって?

J:そうだね。よりそういう気持ちになったのは、この数年、いろんなイベントに出たりして、自分たちの音を自覚する機会を得たからだとも思うよ。その中で「こんなバンドサウンド、どこにもねーや」って感じたからこそね。8ビートを刻んでも今まで以上に最高のビートが生まれてると思ったし。

──ドラマーのスコット・ギャレット、ギタリストの藤田高志と溝口和紀、というメンバーでやり続けているからこその?

J:それもあるし、いろんなものにぶつかって、いろんなものを乗り越えているから、今、自分たちが鳴らすべき音が明確に見えているんだと思う。

──ボーカルとドラムだけになる箇所があったり、ギターだけになったり、かなり引き算したアレンジだと思ったんだけど、曲を作る段階からそういう構成だったんですか? それともバンドで形にしていくときに音が減っていった?

J:前者かな。音を重ねてパワフルにしていくって飽和状態になるし、必ず限界が来るんだよね。絶対的なプレイをしていれば、足していく必要がないというか、今の俺は削ぎ落としていくほうがクールに感じるし、強さを感じるんだ。なぜ、音を間引くかって言ったら、ボーカル、歌詞のメッセージもふくめてグルーヴしてる空気もレコーディングしたかったから。歌詞も言いたいことをシンプルに言うっていう。

──歌にしても共通したことが言えるんですね。

J:だと思う。いろんな想いやイマジネーションが染み込んでいける空間が欲しかった。そういう音楽のほうがいつ再生ボタンを押してもいろんなモノを受け止めてくれるでしょ? 昔から繰り返し聴いているアルバムには、ずっと色あせない何かがあると思うし、以前から普遍的で絶対的な音楽をつくっていきたいと感じてたんだけど、そういう欲がより強くなってるんじゃないかな。

──そのせいか、今回のアルバムって今のJでもあり、同時にクラシックロックに通じるダイレクトに興奮するフレーズが散りばめられてると思ったんです。

J:まさに、そこをなぞるというか、そこに向けて球を投げる勇気のある人間って、今あんまりいねーかなって(笑)。真っ向勝負するっていうか。

──ロックがまだ新しい音楽で、みんなが“うわ!こんなの聴いたことない”って思った時代の音楽に対抗するっていうか。

J:ははは。昔っから「3コードのロックンロールをカッコよく聴かせられるバンドがいちばんカッコいいんだよ」って俺は言ってるけど、3つのコードって縛りがあるのに、それがグッとくるのは鳴らしてる人たちがカッコいいからでしょ? ロックってそれで成り立ってしまうところがクールなんだから、そういう音を鳴らしたいってガキの頃から思ってた。だから、あえてなぞったし、それ以上の情熱、パワー、テンションを注ぎこんだら、今の俺たちなら最高のものが生み出せるって。王道をやってカッコいいと思わせるのはすごく高いハードルかもしれないけど、トライする価値があるし、チャレンジする意味があると思った。

──Jがベースを弾く原点はセックス・ピストルズだしね。3コードのロックンロールはスキルが上がれば上がるほど渋い方向に行きがちだけど、衝動性と破壊力を失っていないのがスゴイところだと思います。

J:嬉しいですね。だって、もともと、ロックンロールってみんなのモノだし、音楽の知識がないからって閉じてしまう世界じゃないでしょ?って。俺の中には、いつも前提としてそういう想いがあるので、曲もプレイも難しくならないよう、自分の中で防波堤を作っているところがある。いくら上手くなったとしても「俺らが“ウワーッ!!”って衝撃を受けたロックはそんなものじゃなかったでしょ」っていうリミッターがあるっていうか。だから、スキルと衝動を両立させられたら面白いと思うし、ガキの頃に思ってたことをなくさないように確認しながら、いつもプレイしているのかもしれないね。

──前アルバム『ON FIRE』に収録されていたロックンロール「storm rider」について、「こういうタイプの曲は一歩、間違えたらダサくなるから、カッコよくプレイするのはハードルが高い」って言っていたのを思い出したんですよ。今回のアルバムの曲ってそういうタイプの曲が多いなって。

J:まさに「storm rider」を作れたことによって見えた景色はデカかったと思う。だから、前作『ON FIRE』が今作『FREEDOM No.9』を作るための着火剤になってるのは間違いないと思う。タイトル通りね(笑)。ただ、それは2013年のいちばん新しいスタイルの音楽やその先のフォルムも見据えた上で鳴らしている音だから。渦巻いているエネルギーは、新しいパワーのある音楽と何ら変わることがない。そこがブレたら、ダサいもの、古くさいものになってしまうから。

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