【ライブレポート】AUN Jクラシック・オーケストラ、和楽器でオールスタンディング

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2013年11月2日、shibuya duo MUSIC EXCHANGE。若手和楽器奏者8名で構成されるAUN J クラシック・オーケストラ(以下:AUNJ)の5周年記念ライブが開催された。和楽器とライブハウス、一見ミスマッチなようだが、彼らの音はコンサート会場でもライブ会場でも楽しめる音だ。

◆AUN J クラシック・オーケストラ画像

オープニングSE。2013年、配信されたオリックスバファローズの岸田護投手の登場曲「護 ~THE WIN~」に乗って最初に現れた文字は「BEYOND THE BORDER」。直訳すれば、「境界の向こうで」だろうか? 映像の中盤では、この文字に“世界を翔る”とルビが付く。あらゆる意味でのボーダー、境界を超える挑戦を意味するワードだ。すでに、このSEからライブは始まっている。

大島紬で作られた洋装で8人が登場。オリジナル曲「Go West 53」で幕が開く。続き、箏がひきたつ「青い薔薇」。そして、奈良県吉野町の桜応援ソング「桜小道」。彼らは8人それぞれが楽曲を創る。表現者だけでなく、創作者でもあるのだ。

ここで、井上公平から挨拶。「集大成の曲を」と紹介して演奏したのは「となりのトトロ」。これは、海外で演奏した際に、振り付けを逆輸入したもの。トトロ♪トトロ♪の部分に振りが入る。なんともキュートな振りだ。そして、4月に蔵王堂で共演した中孝介からのビデオメッセージのあと、川口恭吾の「桜」。十七絃(箏)で音を繋ぎながら、箏の市川慎、同じく箏の山野安珠美、尺八の石垣秀基、篠笛の山田路子で唱歌「もみじ」。この季節にぴったりな楽曲だ。

初めてAUNJのライブを観た人は、驚いているかもしれない。純邦楽と言われる世界に生きる演奏家たちが、AUNJという名前で活動するとき、純邦楽もJ-POPもクラシックも洋楽もJAZZも、いわゆるジャンルというものを超えた“音楽”を奏でるのだ。

三味線の井上良平、井上公平、尾上秀樹で「プレイバック」。この楽曲を初めて聴いたとき、「ロックだ!」と思った。三味線がギターに見えた。そして、いつかEXILEのような振りが付き、それが日々磨かれている。音楽を聴いてギターを手にするように、三味線を手にすることが、日常になればと思う。

再び8人に戻る。いつか8人の衣装がチェンジ。さっきまでのフォーマルな印象の大島紬から、大島紬の衣装デザイナーでもある服部幸之助氏のデザインによるカジュアルなシャツに。8人の衣装は、すべて柄の入り方が違う。そして、純国産ジーンズの“桃太郎JEANS”に、同じくMADE IN JAPANスニーカー“オニツカタイガー”だ。彼らが伝えるものは、音楽とともに日本。西洋のブランドも、実は日本のものを参考にしたという例もある。そう、日本のものは格好いいのだ。

続き、東京では初披露のラヴェル作曲の「ボレロ」。これまでにないクラシックのカバー曲。太鼓がインパクトを与える。もっと聴いていたいという気持ちが湧き上がる。

AUNJ結成から5年。人が集まりひとつのチームになっていくには時間がかかる。音楽に関わってきた環境も違うし、想いもある。AUNJ以外での活動もしている8人。そんな彼らが、2013年3月に発売したオリジナルアルバム『八人の響き』で、全楽器で演奏するという条件で全員が一曲ずつ曲を創るという挑戦した。それによって生まれた一体感もあるのだろう。それぞれの楽器の強み、個性を理解しないと8人で演奏する曲は生まれない。そのアルバムから山野安珠美作曲の「乱~RAN」。乱という言葉には、乱れるというイメージがあるが、そもそもは「治める」という意味を持つ。時を経て、ひとつになっていくという意味を感じる。

ここで、リクエストコーナー。事前に聴きたい曲を募集して選ばれた2曲。1位は、市川慎作曲、ライブ初披露の「白い追憶」。意味深なタイトル。しかし、理由は意外なものだった。これは、ライブ会場に来た人だけが知る事実となる? 2位は、尾上秀樹作曲の「斬月」。

MCでは、12月4日の世界遺産アンコール・ワットでの演奏から始まる<“One Asia joint concert”ツアー>の告知。このツアーの様子は、12月22日19:00~、これまでの世界遺産での演奏同様、「和の想い 世界遺産“アンコールワット”に響く!~若き和楽器奏者とアジア音楽との共演~」として、BS日テレで放送される。その告知を受け、「Oriental Journey」。

本編も終わりが近づき、石垣のひと声で、会場はオールスタンディングに。和楽器で、オールスタンディング! 初めて見る光景だ。「TRICK STAR」。ラストには横浜DeNAベイスターズ様のスペシャルイベント『勝祭(KASSAI)』用に書き下ろした「勝祭-KASSAI-」。最高の盛り上がりのなかで、ライブは幕を閉じた。

続くアンコール。井上良平が挨拶をし、しっとりと「道」。もう5年ではなく、まだ5年。おそらくここから勝負。これまでにない形で演奏を続ける彼らには逆風もある。しかし、背中を押してくれる多くの人がいる。そして、何より彼らの楽曲を愛してくれる人たち。そして、和楽器に憧れる子供たち。日本って素晴らしい、日本って格好いい。胸を張って言い続けられるよう、一人ひとりが“道”を探し続ける。そんなことを思うライブとなった。


AUN Jクラシック・オーケストラ メンバー:井上良平(和太鼓、三味線)、井上公平(和太鼓、三味線、笛)、石垣秀基(尺八)、山田路子(篠笛)、市川慎(箏)、山野安珠美(箏)、尾上秀樹(中棹三味線)、秀 -HIDE-(鳴物)

<“One Asia joint concert”ツアー>
●カンボジア公演
日時:2013年12月4日(水)19:00~21:00(時間調整中)
会場:アンコール・ワット東参道門付近 屋外特設ステージ
出演:AUN J クラシック・オーケストラ(日本)、カンボジア伝統楽器奏者、タイ伝統楽器奏者、インドネシア伝統楽器奏者、ベトナム伝統楽器奏者

●タイ公演
日時:12月8日(日)19:00~21:30
会場:AKSRA THEATRE(アクサラ・シアター)
出演:AUN J クラシック・オーケストラ(日本)、Boy Thai 〔ボイタイ〕(タイ)
※タイ伝統楽器奏者ボイタイは、昨年文化交流使AUNJのメンバー井上良平、井上公平、HIDEが東南アジアツアー及び2013年東北公演にて、共演したタイの人気伝統楽器グループ。

●インドネシア公演
日時:12月10日(火)19:30~21:00
会場:Usmar Ismail Hall(ウスマル・イスマル・ホール)
出演:AUN J クラシック・オーケストラ(日本)、Byes Saprudin(インドネシア)、Deri Bow(インドネシア)、Elang Rahayu (インドネシア)
※Byes Saprudin, Deri Bow, Elang Rahayuの3名はバンドンにあるインドネシア教育大学の伝統音楽学部の優秀な卒業生。打楽器を最も得意とするが、インドネシア民族楽器の多くを演奏可能。

●ベトナム公演
日時:12月12日(木)20:00~21:30
会場:Youth Theatre(青年劇場)
出演:AUN J クラシック・オーケストラ(日本)、Tra My Tram (ベトナム)、Nguyen Thanh Thuy (ベトナム)
※Tra My TramさんとNguyen Thanh Thuyさんは、昨年文化交流使AUNJのメンバー井上良平、井上公平、HIDEと東南アジアツアーで共演した、ベトナム国立音楽院の講師兼アーティスト。

<AUN Jクラシック・オーケストラ コンサート鑑賞付きアンコールワット5日間ツアー>
2013年12月3日 成田発 12月6日 成田解散
http://www.his-j.com/kanto/corp/group/event/aun_j/

テレビ放送「和の想い 世界遺産“アンコールワット”に響く!~若き和楽器奏者とアジア音楽との共演~」
2013年12月22日 19:00~21:00 BS日テレ

<AUN J クラシック・オーケストラ~ONE ASIA ジョイントコンサート凱旋記念~>
2014年2月2日(日)
@日本橋三井ホール
OPEN 17:30 START18:00
全席指定 5,800(税込・ドリンク代別途必要)
[問]0570-00-3337 サンライズプロモーション東京
プレイガイド:★オフィシャルHP先行★
受付期間:11月9日(土)12:00~11月25日(日)23:59
受付専用URL:http://eplus.jp/aunj-hp/
一般発売は2013年12月21日(土) 10時より発売開始
サンライズオンライン、チケットぴあ、ローソンチケット、CNプレイガイド、イープラス

AUN J クラシック・オーケストラ『八人の響き』
FAMC-099 2,625円(税込)

[寄稿] 伊藤 緑:http://www.midoriito.jp/

◆AUN Jクラシック・オーケストラ・オフィシャルサイト
◆AUN J クラシック・オーケストラ・オフィシャルブログ
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