【インタビュー】THE NEATBEATS、このアルバムは「お願いします、聴いて下さい」っていうよりは「買っておいた方がええんちゃう?」って感じですね

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1997年に大阪で結成されたロック・バンドTHE NEATBEATS。ザ・クロマニヨンズのヒロト、マーシーから若手のOKAMOTO'Sまで、多くのミュージシャンからのリスペクトを集める“ミュージシャンズ・ミュージシャン”である彼ら。ニュー・アルバム『DANCE ROOM RACKET』はマニアックな選曲が光る洋楽カバーと、60年代マージー・ビートを彷彿とさせるオリジナル曲が詰まったロックンロール・アルバムとなっている。年間100本を超えるライヴ活動の傍ら、プライベート・スタジオでヴィンテージ機材を使ったこだわりのレコーディングをおこなう彼らの音楽への愛情をVo.GでありリーダーのMR.PANに語ってもらうべく、“Grand-Frog Studio”を訪ねた。

■ストレイキャッツが再結成したのが僕には凄くデカくて
■高校の頃はロカビリーが大好きで、とにかくウッド・ベースみたいな

――THE NEATBEATSは今年結成16周年とのことですが、MR.PANさんの音楽体験はどの辺から始まってるんですか?

MR.PAN(Vo.G.リーダー):高校の頃にレンタル・レコード屋にずっと通ってて、お店がCDに移行する時に、“レンタル落ち”のレコードを店主のおっちゃんにタダで6,000枚もらったんですよ(笑)。それから急速に聴くようになって。もちろん全部は聴けないけど、パンクだけは絶対残してたね。中学、高校の頃はパンク・バンドをやってたから。クラッシュとか、バズコックスとか好きで。

――その頃ってバンド・ブーム最盛期ですよね?

MR.PAN:そう!バイブルは宝島(笑)。そこからRCサクセションを聴いて山口冨士夫さんを知ったりして。当時大晦日の「ロックンロール・バンド・スタンド」っていうイベントをNHKが放送してたんだけど、そこに冨士夫さんのティアドロップスが出てたのが強烈で(笑)。「ヤバいなこの人!NHK大丈夫?」みたいな(笑)。

――清志郎さんもそうですが、その当時はテレビで何を歌い出すかわからない人たちがいた時代ですね。

MR.PAN:そうそう。僕はRCの『COVERS』が発売中止になった“素晴らしすぎて発売できません”ていう広告が新聞に出てるのを見てから学校に行ったからね。圧倒的な影響力があったから。子供ながらに「何故これが歌えないのか?」っていうことを考えたりして、「なんか胡散臭い世界だな」って感じたよね。当時はチェルノブイリの事故っていう遠い国の話でも、若者が反応してたんだけど、現在の日本の状況はあんまりダイレクトではないよね。みんな「これを歌ったらどうなっちゃうのか?」っていうことを考えて。でも清志郎さんって、それが無かったと思うんだよね(笑)。

――そうですね(笑)。歌いたいことを歌ってるだけという。

MR.PAN:今歌いたいことを歌ったら反対されて喧嘩をその都度やってるという(笑)。でもそれが見てて凄く楽しかったよね。僕らはベビー・ブーム世代でクラスにも人数が多い中で生活してきたから、「右向け右」の中で左を向くというか、異論を唱えることの楽しさがあった。だからパンクを好きになるっていう筋はあったんだろうね。

――その頃にパンク・バンドを始めたんですか?

MR.PAN:クラッシュが好きで、ライヴのブート音源を聴いたりしたんだけど、全然上手くないんだよね、演奏が。ジョー・ストラマー全然声出てないみたいな(笑)。「何これ!?ヒドイ!」って思ったんだけど、それが僕ら中学生は嬉しくて。歌とか演奏は技術ではない、ということを知ったというか。それと、パンクを聴いて昔のオールディーズとかルーツ・ミュージックを知ることが出来たのも大きかったね。

――僕は1993年に川崎でキンクスのライヴを見たんですけど、完全にパンク・バンドでした。

MR.PAN:キンクスはモロにそうだよね! あの当時パンクって言葉が無かっただけで。『ひねくれ者たちの肖像』っていうキンクスのストーリー本読んでも生い立ちからしてパンクだもんね。ヤバいなこの兄弟みたいな(笑)。

――パンク少年だったMR.PANさんが現在のニートビーツのような音楽をやるようになったのはどうしてなんですか?

MR.PAN:高校生になって、パンク・バンドやってた人間がだんだんハードコアに流れて行って。S.O.B(海外のバンドにも多大な影響を与えたハードコア・パンクバンド)の流れというのもあったし。みんなだんだん嗜好が分かれて行ったんだけど、その頃にストレイキャッツが再結成したのが僕には凄くデカくて、もう高校の頃はロカビリーが大好きで。とにかくウッド・ベース、みたいな。

――でも高校生でロカビリーのファンって周りにいないんじゃないですか?

MR.PAN:うん、超少なかった(笑)。でも唯一、和歌山に当時「ゴールデン・バット」っていうロカビリー・ショップがあったの。そこにポマードとかレコード売ってたりとか溜まり場になってて、そこが原点になってるんですよ。それで、高校を卒業してイギリスに留学に行ったんだけど、その下宿先の一階がたまたまロカビリーとかロックン・ロールを扱うインディー・レーベルの事務所だったんだよね。そこの社長と仲良くなって、ますますそっちに引き寄せられて。そこでトーラグ・スタジオ(※Toe Rag studio‐イギリスのヴィンテージ・スタジオ)の人と知り合ってスタジオに遊びに行ったら、エンジニアの人がアビーロード・スタジオの機材を使ってたりして。白衣を着てエンジニアをしていて。

――あ、それでMR.PANさんもMVで白衣を着てるんですね?MR.PAN:そうそう(笑)。そういう感じが、衝撃的でね。僕が持ってたブリティッシュ・ビートのイメージが変わってきて。そうこうしてるうちに、カイザース(KAISERS)というバンドがトーラグ・スタジオにレコーディングに来たんだけど、キャバーンクラブに出てた頃のビートルズ・スタイルでやっていて。もう直感で「この感じやりたい!」って日本に帰って、ビートルズ初期のスタイルのバンドをやろう、と。スーツを揃えてリーゼントっていうバンドは当時いなかったから。隙間産業っぽい感じで(笑)。

――このスタジオ(取材場所の「Grand-Frog Studio」)はいつ頃出来たんですか?

MR.PAN:2007年くらいですね。機材は10年ぐらいかけてちょこちょこ集めてたんだけど。

――機材はマニアックなヴィンテージものが多いようですが、どんな方法で入手しているんですか?

MR.PAN:マニアックです(笑)。例えばSelmer(セルマー)っていうメーカーのアンプを探しているって言ったら、それが手に入ったらイギリス人の楽器屋の人が連絡くれたりして。

――それは実際に見に行って試してから買うんですか?

MR.PAN:いや、もう型番を聞いて買う。もう別に動かなくても良いの(笑)。見た目が全てですから。鳴る、鳴らないはともかく所有する喜びというか。これは俺が救出せんと、誰が買うねん?って(笑)。

――機材のことは勉強したんですか?

MR.PAN:資料は揃えたね。誰がどんな風に使ったのか?とか。例えばセルマーを誰が使ってたのかとかを全部調べて、そのバンドの音源も聴いて、「これ、もしかしてセルマーの音じゃない?」って想像したりとか(笑)。今でもそういうのを凄く研究してる。でもギターとの兼ね合いもあるから、それも想像して、「このバンドは当時売れてないから、ギブソンとフェンダーは買えないはずだ」と。じゃあヘフナーのギターだとして、この音になるな?とか。

――失礼ですけど、そこまで行くと偏執的ですよね(笑)。

MR.PAN:わははははは! まあ、変態ですよ、僕(笑)。妄想族ですから(笑)。

――機材は良くても、再現するには演奏技術が必要ですよね。ニートビーツは演奏も上手いですけど、技術を身に付けるにはどんなことをしてきたんですか?

MR.PAN:僕は最初YAMAHAの音楽教室に通ったんだけど、最初にキース・リチャーズ・モデルのテレキャスを買ったんだよね。だからキースがやってる6弦を外したオープン・チューニングで弾きたかったんだけど、先生と話が合わないんだよね(笑)。

――そりゃそうですよ(笑)。

MR.PAN:「君、6弦張ってよ」「いや、キースは5弦だから」っていう不毛なやりとりをして(笑)。「習いに来てるんだから6弦まで張って来てくれ」っていうんだけど。でもこっちは「オープン・チューニングで教えてくれ」って言い張って。結果、「もう来なくて良いよ」って言われて(笑)。

――そうなっちゃいますよね(笑)。

MR.PAN:ある程度、基本だけ教わって辞めて。その時に、僕はテクじゃなくて雰囲気が好きなんだなって思って。それで気が付いたんだけど、当時のミュージシャンが使ってるギターとかアンプってあんまり良くないのよ。パワーが無くて音も小さかったり。でもその中でみんな頑張って弾いている感じがレコードに表れてて。みんな上手く弾こうとしてるんじゃなくて、頑張ってるんだよね(笑)。だから自分がギターを持った時に、あえて弾きにくいポジションで頑張って弾くことがカッコイイんじゃないかと思ったんだよね。ボリューム10なら、良い感じで弾けるものを、7くらいにして頑張ろう、と。「指頑張ろう、指!」って(笑)。

――ははははは!

MR.PAN:そういうのを自分に課すのが楽しくなって。他のバンドのレコーディングをするときもみんな大きな音でやりたがるから、「いや、小さな音でやろう!」って言って。みんな「えぇ~!?嫌や~!」っていうけど(笑)。

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