【ライブレポート】Berryz工房が初の日本武道館公演。やっぱりあなたなしでは生きてゆけない

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中盤では、スペシャルゲストとして℃-uteもステージに登場する。9月10日(℃-uteの日)に開催された、彼女たちの日本武道館公演ではBerryz工房がお祝いに駆けつけたこともあり、今回、大方のファンが℃-uteの出演を予想していたことだろう。しかし、彼女たちの出演後からの展開はBerryz工房のメンバーを含めて誰も予想できないものだった。

「Berryz工房が℃-uteの単独ライブ、日本武道館に来てくれた時に、ハロー!プロジェクトキッズの時のね、写真を用意してくれたんですよ。なので、Berryz工房のも用意しました!」

℃-ute・岡井千聖の発言に「聞いてない聞いてない!」と動揺を隠せないBerryz工房。「それ、リハーサルでやってないよね?」と徳永が訊くが、サプライズなのでやっていないのは当然である。そして、キャプテン・清水の写真から、ステージ上のスクリーンに表示されていく。岡井の説明によると、公開された写真は完全初出しの、デビュー前の衣装合わせの時のものだ。

笑いと歓声が入り混じる会場で、「田舎臭い!」と座り込む清水。「この時から肌が黒い」と、写真と同じポーズをとる徳永。24時間アイドルモードであるはずにも関わらず、時空の狭間を狙って写されたかのような11年前のももちに「怖いよ!」「ガン飛ばしてるよ」と誰もが戦々恐々。一方、当時170cmもなかった、“急成長前”の熊井には「かわいい!」の声が上がる(なお、現在の身長は、公称・176cmである)。

「出来上がってる!」「変わらないね、あんまり。」と誰もが驚いたのは、雅ちゃんの11年前。「うちのパパ、けんちゃんって言うんですけど、けんちゃんが雅ちゃんを見て、『千聖、オーディション落ちるよ』って。」と、岡井はキッズオーディションの際に、父親から敗北宣言を早々に出された思い出を語る。もっとも、そう思ってしまっても仕方がないほどの完成度を誇る夏焼 雅(10歳)。ただ、結果的に岡井千聖もオーディションに無事合格。雅ちゃんが海外ファンから“美しさの絶対基準”とまで言われる存在にまでなる一方で、岡井も℃-uteのムードメーカーとして、トークにダンスに、そして歌になくてはならない存在となっている。

「かわいすぎる~。」と、天使のような可愛さに1万人が大興奮の菅谷梨沙子。そしてラストは須藤茉麻。ところが、スクリーンに映しだされたのは、半目で正面を見ている少女の写真。「ちょっと待って!」「NG!」「放送事故!」と、ステージ上では、みんな両手で×を作って、若手お笑い芸人のような振る舞いですっちゃかめっちゃかの大騒ぎ。さらにももちが「茉麻、再現お願いします。」と、要求。須藤は「さすがにできないよ」「ちょっと待ってよ。この写真ないでしょ。」と言いながらも、11年の時を経ての自分自身とのコラボレーションを実現させた。

なぜかBerryz工房とは関係ない℃-ute・リーダーの矢島舞美の11年前の写真も飛び出して、あらためてつんく♂マジックの恐ろしさ、つんく♂プロデューサーの女の子を見抜く力の凄まじさを知ったのち、「みんなが集まったということで、キッズに戻って、この曲を歌いたいと思います。」と、雅ちゃんからの曲紹介。そしてチャイムが鳴り響いて、まだ全員小学生だった時にシングルVでリリースされた、ハロー!プロジェクトキッズのデビュー曲「がんばっちゃえ!」を12人で披露する。卒業などあり、ステージ上は、当時よりも少しだけ寂しい景色ながら、今も変わらないキッズとしての絆(℃-uteの武道館公演でも少し触れたが、彼女たちは卒業していったメンバーとも変わらずに連絡を取り合うなど仲がいいそうだ)。そしてなりより、この12人が、今やアイドルシーンでも一目置かれる存在、日本武道館公演を実施するまでになったという事実。昔から彼女たちを見てきたファンたちは、この日の「がんばっちゃえ!」(そして「ライバル」)で、胸がいっぱいになったはずだ。

℃-uteが「愛ってもっと斬新」を披露したのち、今度はハロプロ研修生がフレッシュに登場。研修生の定番ソング「彼女になりたいっ!!!」をステージパフォーマンスする。ところが、何か様子がおかしい。ところどころ、フレッシュさが足りない気がする。それだけでなく、やけに背の高い研修生がいたり、スクリーンにチラチラ映る「徳永」「須藤」「熊井」「菅谷」「清水」という、見慣れない研修生Tシャツがあったり。早くも何かに気づいた観客からは、笑いにも似た声援が送られる。

歌唱後、研修生の浜浦彩乃が、同じく研修生の金子りえに「見たこともない研修生が混ざってる」と、呼びかける。すると、自己紹介していなかった、「徳永」と書かれたTシャツを着たひとりのメンバーがステージ中央に。「新しくハロプロ研修生に入った“ちなちな”です! 好きなご飯のおかずは、炙りしめ鯖です。」と、元気な笑顔を振りまいている。さらに、「同じく、新入りしました“すどすど”です! 好きな自動車メーカーは……」と、発言したところで、金子が「もういいって!」と一喝。先輩に怒られて怯える“新加入”メンバーたち。そこに、「ハロプロ研修生のみんなぁ~。ハロプロ研修生の憧れの存在、ももちお姉さんだよ~。」と、ももち結びを揺らしながらももちが登場。思えばももち結びは、武道館公演の最後まで、その形状を維持したままで揺れ続けた。驚くべきキープ力と同時に、つま先から髪の先まで見事なアイドルだ。

ももちは、“業界臭を感じさせる囁き”を巧みに利用して、もっとカッコいい曲を演りたいという研修生たちを説得し、「ももち!許してにゃん♡体操」を披露する。会場全体が、遅ればせながらの準備体操の様相を呈した後は、この日のひとつのクライマックスのような瞬間が訪れる。

夏焼 雅の登場に、会場のサイリウムは、一気に紫色の光を放ち始める。

まず特筆すべきは、クラウンを被り、女王の眩さを放ちながら、真紅の絨毯を彷彿とさせる花道を歩いて行く彼女の立ち居振る舞いだ。“QUEEN of IDOL”というフレーズは、きっと彼女のためにある。そう確信せずにはいられない。もしくは、サンドロ・ボッティチェリは、名画「ヴィーナスの誕生」で、海の上に浮かんだ貝殻の上に立つ愛と美の女神・ヴィーナスの姿を描いたが、11月29日の日本武道館のキャンバスに描かれたのは、紫色の幻想的な海の上に浮かんだステージと、そこに立つ、愛と美の女神。

これは誰の目から見ても明らかであった。

「今のmiyaの心境を話したいと思うんですけど……すっごい。ほーんとに緊張する。すごい綺麗ですね……。」と、眼前の光景に見とれている雅ちゃん。振られた紫の光ひとつひとつ、1万人の視線が、ステージの中央に立った彼女へと注がれる。そして「miya!」の大歓声。「泣いちゃう泣いちゃう!」と口にする彼女の瞳は、すでに涙でいっぱい。「ほんとに、武道館は……あ、泣きそう。ちょっとね、ヤバいんですよ。ふふっ。」と、雅ちゃんのお茶目な姿にちょっと笑いも起こる。

思えば「なんだろ、私、こんな泣かなかったのに。」なんて言葉が、3月の<ひな祭りフェスティバル 2013>の時にも聞けたが、最近の雅ちゃんがよく涙を見せるのは、それはきっと、彼女が多くの人のやさしさに包まれて大人になったから。Berryz工房として、夏焼 雅として辛い想いも苦しい時期も確かにあった。ただ、人は、痛みのぶんだけやさしさを知ることができる。そして、彼女にとって、昔から夢として掲げてきた武道館公演。これまでの苦しみや痛み、辛い時期があったからこそ、今、夢のステージに立っているという事実。さらに1万人の大観衆から受け取る暖かい声援。すべてがリンクして、自然と涙がこぼれ落ちたのだろう。

「武道館はBerryz工房の夢であった場所だったから、今日できるなんて思ってなかったし。なんか、すごく嬉しいです。やった! ほんと。リハーサルの時から、Berryzみんな緊張してて、ずっと確認したり、ずっと音楽聞いたり、毎日、その日が続いて。なんかやっぱり、武道館って聞いた時に、すっごく不安というか、どれだけの人が集まってくれるんだろうとか、すごく思ったし、考えたし。キャプテンといっぱい話し合ったから……」

一言ずつ、気持ちを噛みしめるように話し続けたが、キャプテンという単語を発した時に、ついに涙で言葉が詰まる。4月には正式にBerryz工房副キャプテンを拝命した彼女は、キャプテンとは違う視点、違う角度から、Berryz工房を見て、そして時には厳しさとともにチームをまとめてきた。また、特にキャプテンとは、もっといいBerryz工房を作るために話し合い、悩みを相談し、一緒に涙してきた。キャプテンという単語が、これまでの日々と様々な感情を思い出させ、胸を熱くさせたのだろう。

「ほんとにこんなに集まってくれるとは思ってなくて。」と言うのが精一杯な彼女を後押しするかのように、自然発生する「雅! 雅!」の大コール。Berryz工房の“B”をかたどったオリジナルペンライトも、この瞬間だけはMIYABIの“B”の輝きへと変わる。「ほんとに泣くつもりじゃなかったのに(笑)。だけど本当に感動してます。」と、キラキラ輝く瞳で、雅ちゃんは再び笑顔をのぞかせた。

「武道館ってすっごいこんなに広いじゃないですか。だからシャ乱Qさんのライブにゲストで出させていただいた時は、『ここでBerryz工房で埋められたらいいねー。』って言ってたし。いろんなアーティストさんのライブを見に来たりとか。ハロプロのライブや、今日来てくれた℃-uteのライブを見に来たり、出たりしたんですけど、その時も、自分のライブじゃないのにすっごく緊張したし、同期だからっていうのもあるけど、すっごく感動したし。今日、Berryz工房で武道館……できるなんて思ってなかったから、ほんとにほんとにできて、すっごく嬉しいです。集まってくれてありがとうございます。」

万雷の拍手を受けて、「拍手の音がすごいですね。」と、再び、感極まる雅ちゃん。「じゃあ……どうしよう。歌うのもすごい緊張する。」と、いつものセクシーにクールにキメてくる彼女から出る弱気な発言に、「がんばれー!」の声が飛び交う。そして、雅ちゃんは、つんく♂プロデューサーから、武道館公演でソロを歌うように指示され、「みんなに早く会いたいって気持ちがすごく強くて。」と、自らセレクトし、愛を詰め込んだ「あいたいけど…」を歌い始める。

<君はいつの日も / がんばり屋さんだね>
<今日も明日も / 好きでいます>

艶やかで伸びやかな歌声が、武道館を埋めていく。雅ちゃんは歌詞にファンひとりひとりの顔を思い浮かべたのかもしれないが、ファンが思い浮かべたのは、10歳でオーディション合格後、Berryz工房のメンバーとして活動し、21歳のこの日、夢の日本武道館のステージの上で歌う、ひとりの女の子のこと。彼女の姿を思い浮かべ、その歌声に涙したのだった。
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