【ライブレポート】Berryz工房が初の日本武道館公演。やっぱりあなたなしでは生きてゆけない

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雅ちゃんのソロコーナーが終わると、再びメドレーで、ライブは加速度をつけて終盤へと向かっていく。そしてBerryz工房のライブでの定番曲である「スッペシャル ジェネレ~ション」。「もっと!もっと!」と歓声を求めるステージに、大声援で応えるオーディエンス。会場が一体となり、その熱量は、一気に頂点へと達する。勢いは続く「一丁目ロック」でも醒めることなく、特にサビでの大声援は、さながら国立競技場のピッチに立ったサッカー選手が受ける応援歌のそれのよう。そして本編ラストは、タイの国民的歌手・BIRDことトンチャイ・メーキンタイ「ROW MAH SING」のカバーでもある「cha cha SING」。ボルテージが上がりきった状態で投下される<cha cha la cha cha cha la la cha cha la cha cha~>で、武道館は1万人が熱狂するエスニック・ダンスホールへと豹変した。

暗闇の中で揺れる光と「Berryz行くべ!」の声が、Berryz工房を再度ステージへと誘う(ちなみにこのコールすらBerryz工房のライブの楽しみのひとつだったりもするのだが、話が長くなるので割愛)。「なんちゅう恋をやってるぅ YOU KNOW?」でスタートしたアンコールでは、すでに菅谷梨沙子の瞳から涙が溢れ、声を震わせる。そして、ひとりひとりの挨拶へ。

サイリウム瞬く客席を宇宙空間にたとえ、「こんなにたくさんの人が集まっていただいて、たくさんの人の前で自分の好きな歌やダンスができて、ほんとに幸せものだなって思います。Berryz工房の夢でもあった武道館、ゴールではなく通過点にできるようにこれからも頑張っていきたいと思います。」と、徳永千奈美。

須藤茉麻は「日本武道館でライブやらせてもらったのはすごい嬉しい。」としながらも、大きな会場、小さな会場関係なく、「こうやってみなさんが集まってくださるからこそ、素敵な空間が作れるんじゃないかなと思ってます。これからもみなさんの笑顔が私たちは一番見たいので、なので、これからもこういった素敵な空間が作れたらいいなと思っています。」と、頭を下げる。

「今日は、Berryz工房に会いに来るために、ここ、大きな玉ねぎの下、いや、大きな黄色の桃の下にお越しいただき、どうもありがとうございます!」と、あいかわらずの安定したトークは、ももち。さらに2020年の東京オリンピックにかけて「Berryz工房はアイドル界の金メダルを獲りたい」と、宣言して会場を沸かせた(ちなみにBerryz工房は、今のところ、2晩考えて“銅メダル”だそうだ)。

全国各地のどのイルミネーションよりも、11月29日の日本武道館のステージから観る光景が一番綺麗だという熊井友理奈は、「汗だか涙だかわからないんですけど」と、感極まりながら、「ほんとに私は、周りのたくさんの人に支えられてるなって、すごい思いました。」と感謝の気持ちを語る。

そして夏焼 雅は、「すごい緊張したんですけど、あっという間に終わっちゃって、早かったなって思うんですけど、ここに集まってくれたみんなと、Berryz工房と、最高の思い出ができたなって思います。」とコメント。そして「今日はですね、武道館で……」と、ピストルの形にした右手を顔の横に。さらに、いたずらっ子のような笑みを浮かべて「み・や・ビ・イ・ム♡」と一言。よく見ると、雅ちゃんのグローブは“MIYA”とデコレーションされており、さらに人差し指の先には、伝家の宝刀・みやビームの増幅装置のようなものが取り付けられている。

しかし、さっきまで“QUEEN of IDOL”たる風格を漂わせていた雅ちゃんの、嬉々とした仕草。確かに自身のレギュラーラジオ番組『爆夜』(ラジオ日本 ド深夜3時~)の中で、なにかしらの必殺技を出すと宣言してはいたが、とはいえ「記念すべき日本武道館公演なのに、ラストの感動的なスピーチなし?」と、思ってしまったのも事実。ただ、この振れ幅も雅ちゃんなんだから、しょうがない。グローブが特別仕様になっていることを考えると、武道館公演を前にした打ち合わせなり衣装合わせの段階で、大人の人たちに「みやビームを撃ちたい」と、きっとちょっと恥ずかしがりながら提案したであろう雅ちゃんの姿を想像するだけで、それだけでもうファンは満足というものである。

久しぶりの「みやビーム」によって、武道館が雅ちゃんにメロメロになってしまったのち、菅谷梨沙子の挨拶が始まる。メンバーの中でもひときわ感受性豊かな彼女は、すでに号泣し、言葉にならない。さっきまで茶目っ気たっぷりだった雅ちゃんが、副キャプテンの顔で、そっと菅谷の背中に手を伸ばす。

「昨日の昼くらいまでは全然実感沸いてなくて。夜くらいになって“明日本番じゃん”ってどんどん緊張しちゃって。こんな大きなところで演るのってすごい久々だから、なんか、こんな、平日なのに集まってくれると思わなかったし。スッカラカンだったらどうしようとか。すっごい不安だったんだけど、平日なのに、こんなにこんなに、私たちの……(嗚咽)……私たちに会いに来てくれたのが、すごくすごく嬉しいです。まだまだBerryz7人で力を合わせて頑張りますので、応援よろしくお願いします。」

グループ内最年少ながらにして、この10年近くの間、いわゆる“センター”に立つ機会も多かった。時に、大きな期待とプレッシャーにもさらされ、負けないよう必死に頑張ってきた。そして迎えた夢のステージで、菅谷梨沙子は一体、何を思ったのだろうか。その涙の意味を知りたくて、誰もが彼女の言葉にそっと耳を傾けていた。

キャプテン・清水佐紀は、長いまつげを濡らしながら「ほかのグループがいろんな結果を出していく中で、Berryz工房、なかなか結果を出せなくって。」と、悔しい想いから始まった2013年を振り返る。

もっとよくしたい、みんなで嬉しい気持ちを味わいという想いから、4月に「Berryz工房で日本武道館公演を実現させる。」と宣言したこと。5月に武道館公演が実現するかも、もしくはシャ乱Qの公演になるかも、という状況まで持っていくことができたこと。そして今日。

Berryz工房がリーダーではなくキャプテンである理由。それは、彼女たちの間に上下関係がないから。上下関係厳しい、組織の長としてのリーダーではなく、同列の仲間の中の代表者だから、キャプテン(代表者でしかない、とも言える)。そのシステムは、現在を見てわかるように、Berryz工房を実に個性的な7人の集団へと成長させた。ただ一方で清水佐紀は、モーニング娘。や℃-uteの好調ぶりと比較して、なんとなくBerryz工房にまとわりついていた停滞感のようなものと、それゆえに本来ならリーダーにのしかかってくる責任と同じものを感じていたのだろう。

「武道館決まってから、私が上手にグループをまとめられなくて、ちょっと意見が合わなくなったりした時とかもあったんですけど、でも、日にちが近づくに連れて、みんなの気持ちもひとつになって、みなさんと一緒に楽しいライブを作りたいっていう気持ちで、今日、このライブを楽しいライブにすることができたんじゃないかなと、思います。」

そして2014年、Berryz工房丸10年を前に「さらにいろんなところで活躍できる、いろんな方に愛されるBerryz工房でありたいなと思うので、これからもBerryz工房から目を離さないでください。」と訴えた清水。日本武道館公演実現の立役者たる彼女の瞳は、自信の色を完全に取り戻していた。

ラストは「友情 純情 oh 青春」の大合唱が日本武道館を包み込む。夢ならどんな時も描けばいい、と歌うこの曲。Berryz工房と会場を埋めたファンは、次に向けてどんな想像を始めたのだろうか。もしかしたらそれは、武道館の暗闇に輝いたサイリウム光の数だけあるかもしれない。しかし、Berryz工房のこの7人なら、そのひとつひとつを叶えてくれるのではないか。そんな気持ちにさせてくれる一夜だった。

そして、この公演を経て、我々はあらためて気づかされたはずだ。2004年3月3日。幼い魔女達がかけた魔法。それはやっぱり、一生解けない魔法なのだ、ということ。

そして“After all, I can't live without you.”だということを。


text and photo by ytsuji a.k.a.編集部(つ)

◆BARKS アイドル
◆Berryz工房 オフィシャルサイト
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