【インタビュー】PAX JAPONICA GROOVE、新設レーベルを立ち上げ通算8作目となるオリジナル・アルバム『Knock!Back!Rock!』をリリース

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黒坂修平によるソロ・プロジェクト、PAX JAPONICA GROOVE(パックス・ジャポニカ・グルーヴ)が、通算8作目となるオリジナル・アルバム『Knock!Back!Rock!』を2013年12月4日にリリース。これまでPAX JAPONICA GROOVEとして7枚のアルバムを発表している他、様々なアーティストへの楽曲提供も行っているが、サウンド・クリエイターとして素顔の彼を知る者は少ないかもしれない。今年、新設レーベル「Office Premotion」を立ち上げ、これまで以上にアーティストとしての自意識を感じているであろう黒坂に、新作の内容を中心に話を聞いた。

■テーマに「融合」というものがあって日本という意味の「和」と
■ユニティ・融合という意味の「和」を表した名前がPAX JAPONICA GROOVE

――PAX JAPONICA GROOVEは黒坂修平さんによるソロ・プロジェクトということですが、黒坂さんのアーティストとしての出発点を教えていただけますか?

黒坂修平(以下・黒坂):本格的に音楽をやり出したのは大学の時で、J-POPやロック、ソウル、ジャズなんかに影響を受けた生音のバンドで自分はキーボードと曲作りをしていました。そのバンドが卒業と同時にそれぞれの道に進んで行ったので、僕は1人でやっていくことにしました。前の事務所に送ったデモ・テープをきっかけにクラブ・シーンのアーティストとしてはじまった感じです。

――バンドではどんな音楽をやっていたんですか?

黒坂:その頃はIncognitoとかBrand New Heaviesが大好きで。なり切っていました、完全に(笑)。

――クラブ・ミュージック系の音楽でデビューしたのは?

黒坂:ちょうど僕がデビューする頃って、ハウス・ミュージックが盛り上がってたんです。Studio Apartmentとか(後に彼らのレーベルからデビューすることになったのですが)が売れている時で。僕もそういう音楽にハマっていて、作ってる音楽も4つ打ちビートの感じだったんで、それがうまくデビューにつながったんだと思います。

――PAX JAPONICA GROOVEというアーティスト・ネームにはどういう意味合いが込められているんでしょう?

黒坂:自分の中のテーマに「融合」というものがあって、日本という意味の「和」と、ユニティ・融合という意味の「和」を表せる名前として名乗り続けてます。

――バンドとは違う、ソロ・アーティストとしてはどんな音楽から影響を受けているんでしょうか?

黒坂:僕はあまり誰か特定の影響を受けていて音楽が降ってくるタイプではなくて、その時々の気分で作ろうと思って曲を作る方ですね。

――クラシック・アレンジのアルバム『Classical Adventure』もリリースしていらっしゃるので、元々クラシックがルーツなのかな、と思ったんですが?

黒坂:いや、僕は全く独学です、鍵盤は。

――え、そうなんですか?譜面も独学で?

黒坂:いや、譜面も読めないです。言ってしまうとコードも良くわかってないです(笑)。一応は覚えたんですが、あまり考えてないですね。全部耳で聴いて鍵盤を押さえています。相対音感しかないんですが、割と聴いたらすぐ弾ける気がしますね。ただ、特にジャンルにこだわらずにその時その時で良い音楽を取り入れています。

――1stアルバムのジャケットがマイルス・デイビィスの『ビッチェズ・ブリュー』を思わせる混沌としたアートワークですが、これは「融合」を表しているんでしょうか?

黒坂:はい、まさにそうなんですよ。マイルスとは中身は全く違うんですが、とにかく融合ということを常に考えていて。やっぱりその頃出てきたクラブ・シーンの音とは違うようなことをやってたつもりではあったので、そのイメージを浮かべた時におこがましいですが、マイルスが出てきたんです(笑)。

――なるほど。その1stから数えて8枚目のアルバム『Knock!Back!Rock!』は、新設レーベル「Office Premotion」からのリリースということですが、レーベルを立ち上げた経緯を教えてください。

黒坂:次のアルバムをどうしようか?という時に、自分がメインで歌う「STERBEN」というバンドも並行してやることになりまして。それと元DOPING PANDAの北條太朗さんと一緒に組んだエレクトロ・ロックの「Unfinished Monster Machine」というのを来年から動かして行くことになったりとか、色んなことを演じたいという気持ちがあって。そういうことを考えた時に今の事務所に居続けるのは難しいな、と。悩みに悩んだ結果、自分でちゃんと主導権を持って考えて行きたいと、一発奮起して始めました。

――これまでJUJUさんをフューチャリングした楽曲や、ERIKA(沢尻エリカ)、MAX、スマイレージ、玉置成実といったアーティストへの楽曲提供やリミックスをやっていらっしゃいますが、その分アーティストとしての黒坂さんご本人の姿ってなかなか見えにくいと思うんです。

黒坂:ああ、そうでしょうね。

――これからご自分がフロントに立つバンドや、ユニットで活動していこうというのは、もっと黒坂さん自身をアーティストとして全面に出して行こうという気持ちがあったんでしょうか?

黒坂:そうですね、はじめはそういう気持ちもあったんですが、単純にやってみたい、というのが理由ですね。ただ確かに今までは姿が見えなさすぎて、どちらかというと一枚一枚の作品がオムニバス的な感じがあったんで、スタイリッシュに作りこんでいきたいというのもあるんですが、これからは人間としてのエネルギーというのも出して行きたいと思っています。

――STERBENというバンドでボーカルをやるというのは、まったく別の人格でやってる感じですか?

黒坂:はい、そうですね。

――話していると、黒坂さんは誠実で親しみやすい人だというがわかるんですが、バンドのビジュアルを見ると凄くクールですよね。

黒坂:バンドの写真とかはカメラマンさんとかの撮り方というのもあると思うんですが、僕自身はどこに行ってもこんな感じで、ライヴ前でも同じ感じなんですよ(笑)。曲作りでもレコーディング中でも。

――バンドのビジュアルとは結構ギャップがありますね。

黒坂:PAXの時でも写真がクールな感じなんで、地方のライヴとかでMCをすると、「イメージと違う!」ってめちゃめちゃ言われました(笑)。

――みんなクールな方だと思ってるんですね。これからはパーソナルな面も見せていけたら、と。

黒坂:そうですね。

――今回のアルバムについては「原点回帰」ということを掲げていらっしゃいますが、「融合」という一貫したテーマはありつつも、ここに至るまで作風の変化というもあったんでしょうか?

黒坂:1stアルバムでは自分のやりたいことを全部やったんですが、2nd、3rdに行くにつれて自分のやりたいことと、ユーザーが求めてること、レーベルが求めてること、色んなものを総合して考えて作る必要があったんです。自分でも満足ではあったものの、そのやり方がどうなんだろう?っていう気持ちもあって。今回は全部自分主導ということで、これまで聴いてくれた人が気に入ってるPAXの質感というのはキープしつつ、さらに上の次元の作品を作って行きたいなと思って制作しました。

――アルバム一曲目から中村仁樹の尺八をフューチャリングしていますが、尺八という楽器ってそれ自体が凄く存在感がありますし、クラブ・ミュージックに取り入れるって難しくなかったですか?

黒坂:元々、中村さんとはスクウェア・エニックスとYahoo! JAPANのオンライン・ゲーム『戦国IXA(イクサ)』のテーマ音楽を作った時に参加していただいたんです。その頃から融合っていう部分で、和のテイストと西洋音楽と、クラブのビート感を融合したものを実験的にやりたいなと思っていたんです。デビュー曲の「SHOU-RYU」がそうだったんですけどね。同じことをやってる人はいないんじゃないかなという自負もあります。今回も4つ打ちのビートなんですがテンポは6拍子で、ちょっとアウトした感じのギターも入れたりとか、PAXらしい融合感を出した曲として一曲目にしました。

――Skrillex、David GuettaなどのEDMが流行している一方、ダフト・パンクが『Random Access Memories』でナイル・ロジャース、ジョルジオ・モロダーを起用してファンクやソウル、ディスコを再現させました。彼らにはダンス・ミュージックの歴史があると思うんですが、日本人が作るダンス・ミュージックとして、どんな意識を持っていますか?

黒坂:変な話、僕は普段制作のためにはあんまり音楽を聴く方じゃないんです。むしろすぐ影響を受けすぎてしまうタイプなので(笑)何かに似てしまうことがないようにということもあるんですが。初めに、「こういうことを作りたい」と漠然と曲を作り始めるんですが、最後に出来た時に「ああ、こういうのが作りたかったんだ」ってなることが多いんですよね。僕は必ずイントロから時系列に沿って作っていくんです。サビが浮かんでイントロを後で作るとかじゃなしに。

――何か浮かんだフレーズをためておいて、切り貼りする人もいますが、そういうことはしない?

黒坂:それはないですね。

――曲作りの途中で煮詰まった時はどうしているんですか?

黒坂:もう、ずっと向き合いますね。必ずその先に抜けるというのは知ってるんで。気分転換したとしても、そこで止まっちゃうんで。

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