【インタビュー】AA=、「『#』と『4』2枚合わせて“未来と過去”というのが自分の中のテーマになっています。過去を振り返ることがほとんどなかったから自分の中ですごく新しいこと」

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AA=が放つ約2年ぶりの4thアルバムは、前代未聞の“スプリット・アルバム”として世に出ることになった。すでに11月27日にリリースされた『#』(シャープ)は、サウンド的には激しくラウドなものに統一され、歌詞のメッセージも非常に攻撃的。一方12月11日リリースの『4』(フォー)は生々しいバンドサウンドを中心としたポップな楽曲がズラリと並び、メッセージは非常に情緒的でパーソナルなもの。2枚合わせて『#4』が完成するという凝った仕掛けだが、今回は『4』について深く掘り下げ、AA=すなわち上田剛士の持つメロディックでエモーショナルな側面にスポットを当てる。“ポップであることが自分の特徴”という言葉に込めた、彼の音楽性の幅広さと深さをぜひ感じ取ってほしい。

■今回はいろんな意味でバンドっぽいんですよ
■一番大きいのはAA=としてのストーリーだと思う

──『4』の詳しい解説に入る前に、今回の作品作りにおいて、レコーディング・メンバーとどんな話をして、彼らはどんなふうに貢献してくれたのか、それを聞きたいんですけども。まずは作詞とヴォーカルのタカ(Takayoshi Shirakawa/BACK DROP BOMB)さんはどうですか。

上田剛士(以下、上田):いつもそうなんだけど、自分は自分の部分を作って、それをテーマにしてタカはタカで作ってもらう。今回もそういう作り方なんだけど、前よりもタカはタカらしい自由さが出てきてる気がする。タカとの会話の中に出てきたんだけど、“これまで何枚か一緒に作ってきたけど、今回が一番バンドっぽいんじゃないか?”ということを彼自身が言っていて。それは最初にリハーサルから入って、という作り方のせいもあると思うんだけど、たぶん一番大きいのはAA=としてのストーリーだと思うんですね。そこで彼がそう感じてくれて、それはたぶん他のメンバー二人もそう感じてるんじゃないかな。だから今回はバンドっぽいですよ。いろんな意味で。

──ドラムのあっくん(Nobuaki Kaneko)は?

上田:基本的にはメンバーみんな信頼してるんで、テーマを投げて、それに対して感じたものをそのまま出してもらうだけ。あっくんは相変わらず切れ味抜群のドラムを叩いてくれました。

──彼のどこが好きですか。

上田:ドラマーはそれぞれ違うんだけど、彼のリズムはゴムのように跳ねるんですよ。表現するのが難しいんだけど、そういうリズムを持っている。自分は打ち込みを使って、機械でグリッドぴったりの音楽を鳴らしてるんだけど、そこに乗っかってくるものは、ギターにしろベースにしろ歌にしろ、グリッド通りでいてほしいとは思ってないんですよ。そこにヒューマンなものが入っていてほしくて、そこのせめぎ合いがサウンドの核になってると思っていて。その部分を、これほど機械と合わせながらも、人間らしい有機的なリズムを混ぜることのできるドラマーは、なかなかいないんじゃないかと思う。そういう意味で、彼の本来持ってるドラムのスタイルがすごくヒューマンでグルーヴィーなものなので、そこがマジックですね。

──まさに。彼自身はどうなんでしょうね。機械のビートに合わせるつもりでやってるのか、もっと自由奔放にやっているのか。

上田:たぶん、グリッド通りに鳴ってるリズムを気にしながら、その上で暴れるという感じだと思いますね。それは彼がよくそういう表現をしてるし、やってても感じるし。つまり自分がやってほしいと思うことをやってくれてるということなんだけど。

──その“グリッドの上で暴れる”という感覚はそもそもTakeshiさんのスタイルですよね。

上田:そうですね。

──ギターのMinoru(Kojima)さんは?

上田:今回『4』のほうで特になんですが、ギターのアレンジを二人でいろいろ楽しんだ感じがあって、ダビングも多く入れてるんです。それは自分らが十代後半でバンドを始めて、初めて曲を作ってアレンジをし始めた時に、いろいろ試すじゃないですか? その時の感じに似ているというか、“この感じ、懐かしいね”とか言いながら重ねるギターを考えたり。ギターアレンジという意味では、今回一番やってますね。今までの中で。

──確かに。それはすごく感じます。

上田:それは今回、こういう形(2枚に分ける)でアルバム作りをしたことがきっかけになってると思います。だからミノルにも“もっとやって。もっと遊んで”という気持ちでした。

──その話に続けて『4』の全曲解説に行きたいんですけど、1曲目の「HUMANITY2」って、あの「HUMANITY」と関係あるんですよね?(MAD CAPSULE MARKETS「HUMANITY」/1990年)


▲『4』VICL-64082 \1,800(tax in)

▲『#』VICL-64081 \2,000(tax in)
上田:そうです。あれの続きということではないんですが、自分がこの曲を作った時に、一番ふさわしいタイトルだなと思ったので。あれは二十歳の頃に作った「HUMANITY」で、今自分が考える「HUMANITY」はこういうものであると。そういうことがありながら、ミノルがこの曲を聴いた時に“「HUMANITY」っぽいよね”っていうふうに言ってくれて。それは曲としての「HUMANITY」というよりは、あの頃やってた曲に雰囲気が似てるということなんだけど、その一言で“ああ、やっぱり”となった時に、もう「HUMANITY」というタイトル以外は考えられなくなった。自分としても“こういうタイトルをつけるべきか?”って悩んだりしたんだけど、それ以上ぴったり来る言葉がなくて、それが今の自分のリアルなんだなということがわかったことによって、この曲が「HUMANITY2」というタイトルになって、それによって『4』のテーマが見えてきたんです。

──この歌詞は何か具体的な出来事を踏まえてるんですか。すごくせつない“男達の別れ”といったイメージがパッと浮かぶんですけど。

上田:まあ、自分の過去を振り返った時のことがテーマになってるんだけど。それは結局『4』というアルバム全体のテーマに広がっていったんだけど、そういうものがあるんで…そういうことですね。

──いろいろ想像しちゃうんですけどね。“オレたちは/別の夢見ていたんだ”というフレーズとか。

上田:そこは何が答えなのか、あえて自分で言うことはないですけど。

──歌詞の面で言うと『#』のテーマが未来で、『4』のテーマは過去なんですね。

上田:そう。2枚合わせて“未来と過去”というのが自分の中のテーマになっています。特に過去というのは、今まで振り返ることがほとんどなかったから、そこは自分の中ですごく新しいこと…というのは変だけど、今までにやったことのないことでした。

──どういう作業でした? 過去を見つめ直して、言葉にするということは。

上田:やり方としては特に変わらないんだけど、どっちを向いてるのかわかんなくなることはありました。『4』は過去をテーマにしてるけど、自分自身は未来に向かっているし。『#』は未来に向かっているけど過去を引きずっていて、そういう意味では『#』と『4』がぐるぐる回る感じ? そういう感覚ですね。

──2曲目「||:Repeat:||」は?

上田:今言ったことをそのまま表現してる感じですね。「HUMANITY2」で見えた世界がここにつながってます。

──高速四つ打ちのパンキッシュなロックンロールに、途中でスカのパートが飛び込んでくるのがすごく面白いんですけど、これは最初から?

上田:そう、そこだけガラッと変えたいなというのがあって。丸っきり違う世界観にしたくて、あえてそこはタカに全部やってもらいました。わざとノイズが出るくらいの加工をして、スピーカーやヘッドホンでこの音源を聴いてる向こうに、もう一個違う音源があるという世界観を表現したくて。もう一個向こうの世界から、自分にとって大事なメッセージをもらうというか、僕自身が聴きたい曲がそこで鳴ってるという感じです。

──その次が「The Jam」。

上田:これは基本的にはイケイケの曲。攻撃的ということではないけど、過去を継承しながら未来に向かって行くという、『#』で言えば「WILL」みたいな立ち位置の曲ですね。

──こういう曲には生々しいバンド感がものすごく出ますね。

上田:そうですね。これはかなりバンド感を意識してます。

──こういう曲の場合、剛士さんはどこまで指示を出すんですか。リフまで指定する?

上田:リフまで全部指定しますよ。それをみんなに投げて、いろんなアイディアを返してもらって。曲の元になっている基本的なリフはほとんど変わらないです。あとはそれぞれのリズムの取り方とかがあるんで、そこでどんどんバンドらしくなっていくという感じです。

◆インタビュー続きへ
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