【ライヴレポート】ブルゼッケン88、4人の音と存在に対するオーディエンスの愛をひしひしと感じた@赤坂ブリッツ

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2013年12月8日。BULL ZEICHEN 88は、赤坂BLITZのステージに立った。

◆BULL ZEICHEN 88@赤坂BLITZ~拡大画像~

ドラムの淳士とベースのIKUOを中心に結成されたBULL ZEICHEN 88は、2006年の11月にライヴデビューを果たし、今年で丸7年、そして11月に8周年目を迎えた。実力派のロックバンドとして、一時代を築いたSIAM SHADEのドラマーである淳士も、ロックベーシストとしてだけではなく、絶対的な技術とセンスを要するフュージョンベースも弾きこなすIKUOも、すでに、ここで改めて説明する必要もないほど高度なスキルの持ち主であることは周知の事実であるが、ギターのSebastianも、ヘヴィなリフはもちろんのこと、その野性的なヴィジュアルとは相反した、美しく憂いのあるメロウなフレーズを得意とする個性的なギタリストであるのと、ここ最近では珍しい、安定したハイトーンを武器とし、最強の歌唱力を誇る、ボーカリスト・栄二郎と、BULL ZEICHEN 88は、とにかくエース揃いのバンドなのである。

そんなことから、フロアには真の音楽ファンや、プレイヤーとして彼らを尊敬しているのであろう若者なども目立っていた。

フロアから歓声が上がる中、ライヴは、ステージ後方からの光を受け、ステージとフロアを遮っていた紗幕に、ギターをつま弾くSebastianのシルエットが大きく写されるというドラマティックなオープニングから幕を開けた。Sebastianのギターに栄二郎が声を乗せ、2人のシルエットがさらに色濃く映し出されたその瞬間、淳士のカウントから勢い良くその紗幕は落とされたのだ。

届けられたのは「モンスター~3/4No good job night one show~」。オーディエンスは拳を振り上げながらステージへと押し寄せた。そんなオーディエンスをさらに加熱させるかのように、彼らは間髪入れずに「Reset」へと音を繋げた。隙間無く力強いリズムを刻む淳士のドラミングに、拍車をかけるように絡み付いていくIKUOの動きまくるフレーズが実に心地よく響く中、Sebastianはディープなギターリフをぶち込んでいく。圧巻のサウンドに動じることなく声を張る栄二郎のボーカル力もまた、さすがである。

「BLITZ! BLITZ! BLITZ! おい、BLITZ!!」栄二郎は、この瞬間を噛み締めるかのように何度も“BLITZ!”を連発した。彼らはここに辿り着くまで、ツアーや主催対バンライヴを行い、自らに試練を与えてきたのだ。赤坂BLITZは彼らにとって最大キャパとなるハコである。そこには1つの、大きな思い入れがあったに違いない。

「すっげぇ~、ブル(BULL ZEICHEN 88)、赤坂BLITZ来ちゃったよ! 俺さ、始まる前、結構緊張してて、ブルブル震えちゃってたんだけどさ、みんなの笑顔見たらそんなん吹っ飛んじゃったよ。2013年の溜まった嫌なこと、今日、全部ぶつけてけよ。俺以外の兄ちゃんが受け止めてくれるから。いいか! 俺たちのライヴはオマエたちのライヴだ!」(栄二郎)

何よりも愛しい存在であるオーディエンスに対し、ついつい雑な口調で、好きな子を苛めているかのような敵対的な言葉を吐く、ツンデレとは逆気質の栄二郎だが、どうやらこの日は最高に素直になれていたようである。

そんな言葉を受け、オーディエンスはさらに熱を発散していった。同期から始まった4つ打ちのダンス感が、オーディエンスの体を揺らした「Re+Load」。力強く握った拳を振り上げて盛り上がっていた「Prologue」。ヘドバンとクラップが入り乱れる中で声を重ねたオーディエンスを挑発するかのように、彼らは、IKUOの速弾きフレーズから、Sebastianの速弾きソロ、さらに淳士のドラムアプローチへと繋げていったのだ。轟音のような歓声を上げるオーディエンス。それは、純粋に音を楽しむ空間に、グッと心を掴まれ、彼らの世界に深く呑み込まれた感覚だった。

と、ここで。淳士がドラムセットを離れ、ステージへと出て来ると、なんと、ドラムセットが下手にゆっくりと移動し、上手からシンセドラムが運ばれてきたのである。淳士とIKUOもマイクを持ち、“一点突破”コールが投げかけられた。

「もう解るよなっ!」(栄二郎)

栄二郎の叫びから、曲はお馴染みの「モラトリアム」へ。オーディエンスも共に歌い届けられたこの曲で、会場は1つになった。

意表を付かれたのは、さらにここからであった。

3人がステージから捌けたステージで、Sebastianが1人、黒いアコースティックギターをそっと包み込むように構え、美しいアルペジオを響かせ始めたのである。その音色は「ホワイト・クリスマス」から、ゆっくりとPRINCESS PRINCESSの「M」へと曲を変えていったのだった。柔らかで優しく響くSebastianのギターソロに、フロアは聴き入り、その時間に大きな拍手を贈ったのだった。

3人がステージに戻り、再び爆音を放ち、一気に柔らかな空気を打ち消して「flywar」「虹」。

淳士は、スタンダードなドラムセットへとスタンバイしなおし、オーディエンスをドラムソロへと誘った。Sebastianのギターソロに続き、ナント、ベースとドラムソロも用意されていたのである。

1980年代のロックシーンでは、各楽器のソロコーナーはテッパンであったが、ここ最近のライヴではなかなかお目にかかれないとあって、オーディエンスはここにもさらなる興奮を覚え、大きな歓声で彼らの音に応えた。淳士からのパスを受け取ったIKUOは、ネックを這う左手と、スナップを利かせ弦を弾く右手を目を見張るスピードで操り、単音ではなく、まるでギターのようなフレーズでベースソロを魅せた。どよめきのような歓声がフロアから上がると、絶妙なタイミングで淳士のドラムソロへと繋がれた。全身を使い、タムとバスとシンバルの音をかき鳴らす淳士のドラムプレイにも、溜め息にも似た歓声が上がっていた。淳士はさらに、ステージの照明を落とし、光るスティックと、叩かれたタムやバスの枠が光るという演出で、ドラムソロを視覚的にも楽しませてくれたのだった。

圧巻。まさに、それは言葉を発することを忘れるほどに見入ってしまった時間となった。

後半戦では、曲の中頃でSebastianがボーカルを取る「Someday」が届けられたのだが、これもいつものお約束。Sebastianの歌が合格点に達していたら、曲の後半へと繋がれるのだが、たいていのところ一度でクリアしたことは無い(笑)。しかし、やはり赤坂BLITZのステージに立つということで、家で200回歌い込んで来たというSebastianのこの日の歌は、1回目から果てしなく合格点に近かったのだが、赤坂BLITZということで、メンバー3人とオーディエンスの合格点の設定が高かったようで、曲は、Sebastianの歌パートの後、ブツリと止まってしまったのである。視線はSebastianへと集まった。

「おいッ! はよ入らんか! ボケッ!」(Sebastian)

恥ずかしさのあまり暴言を吐くSebastian。

その後も、メンバーからの、“ファルセット禁止令”を受けながら、何度も何度も歌いなおさせられるという辱めを受けることに(笑)。“自分では思ったより上手く歌えたのに……”と凹むSebastianに、オーディエンスからの“どんまい!”の声がかけられていたのだった。

愛されてるな。そう思った。4人の放つ空気を、全身で楽しむオーディエンスは、本当に彼らの音と存在を愛しているのだというのが伝わってきた瞬間でもあった。

彼らはアンコールで、オーディエンスをステージに呼び込み、そのコーラスの後に続き、みんなで声を重ねる「No.1」を届け、この日のライヴを締めくくった。そして。こんな言葉を残したのだった。

「2013年の最後にこの素敵な景色を見せてくれてありがとう! 先月BULL ZEICHEN 88は8周年を迎えました。“10年続けるバンドが出来たらいいね!”って言葉から始まった僕等ですが、8年続いたことと、こんな景色を見られたことに、僕等が一番驚いています。マイペースな僕等ですが、僕等が信じるBULL ZEICHEN 88に、どうかこの先もずっと付いて来てください。僕等はこの先も、絶対にこの会場以上の所を目指します! 今日はありがとうございました!」(栄二郎)

ラスト。4人はしっかりと手を手を結び、深く頭を下げ、オーディエンスと共に、5回のバンザイとジャンプで『赤坂BULLッツ2013』の幕を下ろしたのだった。


結成から8年。自分たちのペースで音源をリリースし、自分たちのペースでライヴを行い、自分たちのペースで歩みを進めてきた彼らは、この日、10年に向けてのスタートを切った。その約束の証として、この日の最後に、2014年の3月3日の柏PLOOZAから、『初心忘るべから…。88』と名付けられた新し旅に出ることを約束したのだった。

最高に自分を開放出来る場所をくれる彼らが作る空間は、何よりも強く背中を押してくれる居場所である。BULL ZEICHEN 88の音と歌、そして、オーディエンスと共に魅せてくれる強い力を、この先も楽しみにしていくとしょう。

取材・文●武市尚子
撮影●maru
撮影●R7


◆ブルゼッケン88 オフィシャルサイト
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