【インタビュー】ロジャー・テイラー、「クイーンはマザーシップ(母艦)さ」

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12月初め、15年ぶりとなるソロ・アルバム『ファン・オン・アース~地上の愉楽~』をリリースしたロジャー・テイラーに、新作やクイーンの新しい展示会について話を聞いた。インタビューが行われたのは、アルバムが制作された自宅内にあるスタジオ。ドラムはもちろん、ピアノ、たくさんのヴィンテージ・ギターに囲まれた明るくモダンで居心地のいい空間だった。ここは彼にとって、仕事場であり趣味の部屋でもあるのかもしれない。気が向いたときにふらっと訪れては、自由にリラックスした状態でアルバムを作っていた彼の様子が目に浮かぶ。

◆ロジャー・テイラー画像

――まずは12月初め、モントルーにオープンした展示会<Queen The Studio Experience>について教えてください。いい思い出、辛い思い出、様々な想いがあると思いますが、なぜプライベートにしておくのではなく、一般公開することにしたのでしょう?

ロジャー・テイラー:そうだね、みんなが興味を持つかもしれないって思ったんだ。あのスタジオでは本当に長い時間を過ごした。それこそ何百時間っていうのを何回もね。いろんな想いがある。いいものも、それほど良くないものも、フラストレーションを貯めたときもあるし、クリエイティブな時間もあった。何年にもおよぶ長い時間で、僕らの歴史でかなりの部分を占める。フレディが最後のレコーディングを行ったのもあそこだし、あの小さなスタジオ、コントロールルームの中で僕らはすごく親密に過ごした。だから、とても思い入れがある場所だ。でも、みんなが、フレディ・マーキュリーが最後の曲を作った場所に興味を持ってくれたらいいなって思ったんだ。あそこでは、ほかにもたくさんのクイーンのアルバムや僕のソロ・アルバムを3枚作っている。だから、興味を持ってくれたら嬉しいな。僕らのアイディアじゃなかったけど、いいアイディアだったって思うよ。

――そのコントロールルームで、来場者は実際に自分の手でクイーンの曲をミックスできますね。

ロジャー・テイラー:そう。小さなコントローラーでドラム、ベース、ギター、キーボード、ヴォーカル、ルーム・アンビエンスを調整できる。どうやって曲が生まれたのか、それぞれのパートがどうやってミックスされたのか、ちょっとわかるんじゃないかな。

――ソロ・アルバム『ファン・オン・アース~地上の愉楽~』について教えてください。2008年に作り始めたとのことなので、完成するのに5年かかったわけですが…

ロジャー・テイラー:あのアルバムは、積み重なってできたものなんだ。自然に無理しないで作ろうと思っていたし、実際そうだった。アイディアが浮かんだら…、今日、曲ができそうだなって思ったらスタジオに入った。そうやって曲を作っていき、最終的にそれがアルバムに、『ファン・オン・アース~地上の愉楽~』になったんだ。

――レコーディングがなくても、よくスタジオに入られるのですか?

ロジャー・テイラー:ここに住んでいるからね。毎日は来ないよ(笑)。でも、スタジオがあって、いつでも好きな時に入れるって素晴らしいよ。最高だ。ここには、長年にわたって集めてきた楽器が全てある。あそこにあるのは、マウント・スタジオで使っていたピアノだよ。それにヴィンテージ・ギターが大好きで、集めているんだ。美しいギターばかりだよ。上にはドラムがある。友人に囲まれているみたいだ(笑)。

――ヴィンテージ・ギターを集めているギタリストの中には、もったいなくて弾けず、眺めているだけだという方もいらっしゃいますが。

ロジャー・テイラー:僕はプレイする。でも、いっぱいあるから、そうだね、絵みたいに美しい飾りものになっているとこもあるね。古くからの友人に囲まれているようでもある。でも、2~3本お気に入りのギターがあるんだ。それは弾く。アコースティック・ギターで2本気に入ってるのがあって、エレクトリックでは、あそこにあるグレッチだ。フェンダーも大好きだけど、あのグレッチが僕のお気に入りだ。チューンが安定しないものがあるけど、これはすごくいい。もちろん、全てオリジナルだよ。あそこにあるブロードキャスターは初めて作られたソリッド・ギターの1本で、17の刻印が入っている。すごく古いものだ。僕と同じくらいの年だね。年寄りってこと(笑)。

――あなたはドラマーと見られていますが、このアルバムではすべての楽器をプレイしたとか。

ロジャー・テイラー:そう、ほとんどの楽器をプレイした。何曲かで、2人のギタリストを迎えている。ジェイソン・ファルーンっていう素晴らしいプレイヤーと、僕のお気に入りのジェフ・ベックだ。お気に入りっていうのは、もちろんブライアン・メイのほかにって意味だけど(笑)。ジェフのことは大好きなんだ。子供のころからずっと好きだった。いい友人だよ。チャリティー・コンサートのために彼と僕の曲をリハーサルすることになってね。ジェフが「Say It’s Not True」を選んだんだ。ネルソン・マンデラのエイズ支援運動のために作った曲だよ。ジェフが「これ、好きだからやってみよう」って言い出して、この部屋でリハーサルし録音したんだ。1年後、テープを聴き直してみたら、すごくいいって思って、そのリハーサルのをアルバムに収録したんだ。

――それに、あなたの息子ルーファスも参加していますね。

ロジャー・テイラー:そう、この曲でドラムをプレイし、「Be With You」でピアノを弾いた。彼が素晴らしいピアノのパートを作っていて、すごく美しいと思ったから、僕がそれに合わせて曲を作ったんだ。

――このアルバムはあなたと友人で作られたものなんですね。

ロジャー・テイラー:そうだね、家族と友人とで作ったものだ。サックスにはスティーヴ・ハミルトンっていう素晴らしい奴が参加している。彼のサックス、大好きなんだ。

――アルバム・タイトル『Fun On Earth』について教えてください。これは初めてのソロ・アルバム「Fun In Space」への回答か、対比をなすものなのでしょうか?

ロジャー・テイラー:その通りだよ。なんてタイトル付けようかって考えていたとき、自分も少しは成長し、もっと地に足が着いたんじゃないかって思った。「Fun In Space」が1stで、これがラストだ。多分、ラストになるんじゃないかな。「Fun On Earth」ってピッタリだと思うよ。すべてをまた地上に戻す。いずれにせよ、僕らはみんな、いつか“Go back to the earth”、現実に戻るんだから(笑)。

――クイーンと違い、曲には様々なメッセージが込められていますが。

ロジャー・テイラー:クイーンの曲に政治的な意味合いはない。クイーンはエンターテイメントだ。でも個人になったときは、もっと自分のことや自分の意見について口にできる。シリアスじゃない曲、楽しい曲もあるよ。そして、不公平な世界やこの国の現状について歌った曲がある。この国は4年前、ひどい状態だった。1人の男の意見だよ。ある1人の男がどう思っているのか。

――あなたは常に音楽を作ったり、クイーンのプロジェクトに忙しくしているように見えますが、なにが…

ロジャー・テイラー:僕を動かしている? 働くって最高のことだと思う。僕らはすごくラッキーだ。自分の好きな仕事をし、それが成功するなんていいコンビネーションだ。世界で1番ラッキーなことだよ。それを止める理由なんて見当たらない。働き続ける、忙しくしている、自分の好きなことをやり続けるっていうのは、精神的にもいいことだと思う。僕はそうしているんだ。画家だったらよかったなって思うよ。あれも表現方法の1つだ。ときどき楽しみで絵を描くことはあるけど、才能はないね(笑)。

――クイーンを崇拝する人は数多くいますが、あなたにとってクイーンとはどんな存在なのでしょう?

ロジャー・テイラー:僕らはいつも、マザーシップ(母艦)って呼んでいる。僕ら、いま残っているのはブライアンと僕の2人だけど、僕らのキャリアの軸だ。人生を捧げてきたものであり、僕らの作品であり、僕らはその名前で知られている。だから、僕らの人生の中核になっていて、誰も離れないんだ。いつも同じ4人だ。そのことをすごく誇りに思っている。僕の人生の中核だよ。これまでやってきたことを誇りに思うし、なにもかもパーフェクトだった。素晴らしかったよ。僕らはラッキーだった。

――日本のファンへメッセージを頂けますか?

ロジャー・テイラー:僕ら、日本ではたくさんの素晴らしい時間を過ごしてきた。コンサートに来てくれた人達、アルバムを買ってくれた人達みんなに感謝したい。日本には素晴らしい思い出がいっぱいある。忘れられない思い出だ。是非、また行きたいね。ブライアンと僕はまた行きたいと思ってる。多分、アダム・ランバートと一緒かな。彼は素晴らしいシンガーでどんどん良くなっている。でもいつか、近いうちに日本へ戻るよ。そうしたい。いい思い出でいっぱいだ。クイーンを最初に受け入れてくれたのは日本だったと思う。来日したとき、あのリアクションには驚いた。そのことを僕らは永遠に忘れない。ありがとう。

Ako Suzuki, London

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