12月20日と21日、東京・丸の内にあるライブレストラン・コットンクラブにて、<松浦亜弥 - ラグジュアリー・クリスマス・ナイト2013 ->が開催された。8月にw-inds.の橘慶太と入籍した松浦亜弥にとって、これが結婚後初となるステージ。文字通り、クリスマスムードもたっぷりのラグジュアリーなライブの合間には、ふたりの幸せいっぱいな新婚生活を感じさせるMCも飛び出し、観客に冷やかされるといった微笑ましい一幕も見られた。

◆<松浦亜弥 - ラグジュアリー・クリスマス・ナイト2013 ->画像

ドレスアップした約200人の紳士淑女が一堂に会する会場。時間になり、ステージ上のバンドメンバーが演奏を開始する。まもなく、ステージ下手の会場後方から松浦亜弥が登場。手を振りながら、客席の間を抜けてステージインすると、1曲目は「Subject:さようなら」。

2000年、14歳で彗星のごとく現れた“スーパーアイドル・あやや”も、今や27歳。当時から歌に定評があった彼女だが、歳を重ねるに連れて歌唱力には磨きがかかり、さらにこれまでの人生経験などから醸しだされるであろう艶っぽさや表現力といったヴェールもまとって(27歳にしてそれを“円熟味が増し”と言ってしまっていいものかどうかは迷うところではあるが)、一言でいえば、魅力的。そう、ステージで彼女が歌いだせば、誰もがその姿と歌声に見入り、聞き入ってしまう。この日も、シースルー素材をぞんぶんにあしらった衣装に身を包んだ松浦亜弥の歌声に、誰もが一気に引き込まれてしまっていた。

「亜弥ちゃーん!」の声援に「そうです。私が亜弥ちゃんです。」と笑顔で一礼。そして「結婚おめでとう!」の声が会場中から次々に投げかけられ、温かい拍手が巻き起こると、松浦は思いっきり照れた仕草を見せながら「そうですね。8月の4日に、入籍をさせていただきました。人妻です。」と、ファンの前で結婚の報告を行なった。

約2年ぶりのコットンクラブでのライブということ、そして結婚後初のステージであること。様々な要因があってのことだろう、終始「緊張しています」と口にしていた松浦は、「Feel Your Groove」「砂を噛むように…NAMIDA」などなど続けて披露する。ファンひとりひとりと目を合わせ、ひとりひとりに向けて歌っていく彼女。極上の演奏と極上の歌唱、極上の空間での極上の時間がゆったりと流れていく。

MC中、松浦はクリスマスの予定をバンドのメンバーひとりひとりに訊ねる。ドラムの高尾が「嫁さんと子どものために歌を歌います。家で。」と答えると、「超やさしいパパじゃん。何好感度上げようとしてるの? じゃあ私も旦那さんに歌います。」と、自ら墓穴を掘りに行く発言(もちろん墓穴を掘ったわけではなく、彼女なりのリップサービスなのだが)。そして当然、四方八方から冷やかしの声が挙がり、発言した本人は、顔を伏せて思いっきり照れている。松浦亜弥のことが大好きなファンだけが集まるアットホームなライブだからこそ見せるそんな仕草に、なんだか幸せをおすそ分けされたような、温かい気持ちになる。

ライブ中盤には、カバー曲も披露される。クリスマスシーズンにぴったりな竹内まりやの「すてきなホリデイ」に続いて披露されたのは、「これこそ大和撫子ですよ。私にはできない。でも、目標として掲げる。私の大好きな曲です。」と、前置きしての「部屋とYシャツと私」。過去、何度かライブでこの曲を歌ってきたが彼女だが、結婚後初のステージで聴く<お願いがあるのよ あなたの苗字になる私 / 大事に思うならば ちゃんと聞いてほしい>というフレーズは、これまでのものとはまた違った響きがする。ちなみにこの曲は中盤で、男性側の立場からすると、ちょっと震え上がりそうな、サディスティック、いや、狂気じみたな歌詞が登場する。笑顔を見せながら歌い上げていたファンもよく知っている“ドS”(キャラ?)の松浦に、あの場にいた全員が、間違いなく「家でもこんなことを言っているんじゃないの?」なんてことを想像しただろう。

ただ、想いを目一杯込めての熱唱の前には、やがて我々のそんな下世話な想像も霧散し、むしろ「この曲で歌われているような、理想のカップルでいてほしいなぁ。」と、いう願いにも似た感情と感動で胸がいっぱいになったのだった。

そして松浦からは、カバー曲をもう1曲。それが「ひこうき雲」。

昨今、松浦亜弥が歌う「ひこうき雲」がWebで盛り上がりを見せていたのをご存知だろうか。

2013年7月公開のスタジオジブリ映画『風立ちぬ』主題歌への起用もあって、今年は松任谷由実(荒井由実)とこの曲への注目度が高まった1年だった。そしてこの反響が飛び火する形で、誰かが投稿した、21歳の松浦亜弥がテレビ番組(2007年の『歌ドキッ!』)で同曲を歌っているYouTube動画にもスポットが当たり、「松浦亜弥の「ひこうき雲」がすごい!」と、SNSやまとめサイトを中心に拡散。結果、2013年12月末段階で130万近い再生回数を記録している。

そんなWebでの動きは、松浦自身も身近なところで知ることになる。歌唱前に、彼女はそのエピソードを紹介する。「なんか、スーパーに行ったら、いつも対応してくださるレジのおばさまが、『観たわよ。YouTubeで観たわよ。』って。私、何のことかさっぱりわからなくて、そしたら『亜弥ちゃんが歌っている、「ひこうき雲」観たの。』って。なんか、たくさんの方に観て頂いていたみたいで、ありがたいなぁと。」

そうして披露された「ひこうき雲」。松浦は、かげろうに包まれるあの子を見ているかのように、宙に目をやりながら、伸びやかに歌っていく。当時のハロー!プロジェクトの面々が歌ったコンピアルバム『FOLK SONGS 2』(2002年リリース)に収録されている、15歳の頃の彼女が歌う「ひこうき雲」には、淡々とした上手さがあり、それが曲の持つイメージにマッチしていた。そして今、27歳の「ひこうき雲」には、物語を描く力があり、それが歌を作り上げていた。たとえるなら、着せられた服と、選んで服を着ることの違いのような。

そして松浦亜弥が、音に言葉を乗せるだけではなく、歌詞を打つことができる、ちゃんと“歌が唄えるボーカリスト”に成長していたことを(あらためて)気づかされた瞬間だった。

ライブでは、自身のファンクラブを“一旦”閉じることについても言及された。病気療養もあり、この数年はマイペースに活動してきた松浦。しかし、結婚を期に「もっとマイペースになると思います。」と話し始め、自身が子どもが大好きであること(今まだ0歳の甥っ子の最初の恋人になりたいと思っているほどに)、そして、自分にも子どもが欲しいと思っていること、自分が器用なほうではないので、家庭と仕事を両立できるまで時間がかかることなどを、ひとつひとつ言葉を選ぶようにファンに伝えて、理解を求めていく。

「少し落ち着いたら、また、歌いたくなると思うし。それまで自分でも待ちたいと思います。……今は、ほかのやりたいことがあるから。そっちもまだまだ勉強中なので。」

また松浦は、入籍する1ヶ月前にファンクラブのライブを開催したにも関わらず、様々な事情があって、そのタイミングでファンに入籍することを報告できなかったことにも触れる。「言ってくれたっていいのに。……って、私がファンでもそう思うよ。」と、彼女自身、この件について罪悪感のようなものを少し感じている様子。ただ、集まった多くのファンは、一般人のようにはいかない“ふたり”の事情や立場なども当然わかっているし、何よりおめでたいことであり、もう過去の話でもあるので、そんな松浦の発言に大きな笑いすら起こる。

ただこの話を聞いて、この日、感じていたいくつかの疑問点が、一気に線でつながり、そしてストンと腑に落ちる。ブログなどがあまり続かない、プライベートを話すのが苦手な松浦が、この日のライブに限って、どういうわけか積極的に(?)“赤裸々トーク”をしていた理由。ステージ冒頭から「キャラが定まらない」と、緊張していた理由。

下世話な言い方をすると、松浦亜弥は、ファンや大切な人の前ではドS、かつツンデレなのである。

約60分のステージのラストを飾った曲は「dearest.」。親友・藤本美貴が結婚する際に、ふたりのために歌ったというエピソードも持つ、結婚をテーマにした松浦亜弥珠玉のバラード。松浦は、その歌詞のワンフレーズワンフレーズを大切に、情感豊かに歌い上げていく。そして、200人のファンを大きな感動に包み込み、喝采を受けた彼女は、最後にこう呟き、最高の笑顔を見せて結婚後初のステージを締めくくったのだった。

「やっと、自分に向けて歌えました。」── 松浦亜弥


text by ytsuji a.k.a.編集部(つ)








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