【ライヴレポート】摩天楼オペラ、ドラム・悠の半年ぶりとなる復帰ステージ

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12月7日に行われた<as if an Orb Tour>の初日、新木場STUDIO COAST。それは最新シングル「Orb」を引っ提げた東名阪ツアーの幕開けだとか、バンド史上最大キャパシティでのワンマンであるという以上に、摩天楼オペラにとって大きな意味を持つものだった。6月のZepp Tokyo公演の直後より、持病の治療のため活動を休止していたドラム・悠の、半年ぶりとなる復帰ステージ――。日本最大規模のライブハウスを最終日ではなく、ツアーの初日に据えたのも、彼の復活を華々しく祝いたいというメンバーの想いの表れであろう。

◆摩天楼オペラ~拡大画像~


広いフロアのバルコニーまで埋め尽くした人々が開演を待ちわびる中、クラシカルなSEの後にライブの幕を切って落としたのは、なんとインディーズ時代からの大定番曲「ANOMIE」。頭から彩雨(Key)はショルキーで飛び出し、Anzi(G)のソロが吠え、苑(Vo)が合唱を煽るパッショネイトな幕開けに、当然ながら客席は熱狂と興奮の渦に。続く「Psychic Paradise」では悠もフィルを入れまくって、半年のブランクに対する不安を、完全に払拭してくれる。

「もうね、熱くて……」と、早くも序盤2曲で苑がガウンを脱ぎ捨てるほどの熱気あふれるステージは、シンフォニック・メタルを標榜する摩天楼オペラが“壮大な世界観”の裏に隠し持つ、“肉体的アグレッション”を前面に押し出したもの。その後もオーディエンスの声と拳が壮観な光景を創り上げる「落とし穴の底はこんな世界」、一斉にジャンプを繰り出す「Mermaid」等で場内温度を上げ続け、悠の2バスが怒涛に唸るメタル曲「SWORD」では、燿(B)のソロに続いてAnziのギターと彩雨の鍵盤が掛け合い、ハイテクニックな彼らならではの妙技を魅せるのだから熱い。

中盤は摩天楼オペラの持つ、さらに多彩な引き出しが炸裂することに。楽器隊4人でインストゥルメンタル「Utopia」をシブく聴かせたあとは、彩雨が鍵盤とPCを駆使してソロ曲「foolish」を披露。“新木場COAST, Are you ready?”とロボットボイスで語り、歌って、場内をデジタル色に染め上げると、今度は苑を迎えてダンサブルな全英詞チューン「DRACULA」をダークかつ妖艶に紡ぎ上げる。4人、1人、2人と曲ごとに構成人数を変えながらもハイクオリティな作品を届けることができる、これは摩天楼オペラの大きなアドバンテージだろう。続く「Merry Drinker」のブルージーなロック感もたまらない。

「今日は初日。まだ元気たっぷりだから、楽しませてやるぜ!」

威勢のいい苑の言葉を現実にすべく、まさしく後半は熱狂の渦を呼ぶライブチューンのオンパレード。激走するドラム、畳み掛けられる速弾きソロに、「Adult Children」ではオーディエンスとの掛け合いコーラスが大きなうねりを呼ぶ。しかし、そこから繋がった新曲バラード「Orb」の熱とパワーは、それらのアグレッシヴな楽曲たちに決して劣るものではなかった。

「家族愛をテーマに、こういう歌詞を書けたのが嬉しかった。洗練されていくだけのビジョンは、つまらなく思えてしまったんです。どんどん新しいものを作ったほうが楽しいから、摩天楼オペラをブッ壊したい。俺たちの新たな一歩、聴いてください」――苑

そう前置かれた「Orb」にはアッパーな勢いも、聴く者の身体を揺らす衝動も無い。しかし、ピアノと歌だけの美しい幕開けからジワジワと高まってゆく楽曲のエモーションと、バンドインしてからの爆発力、愛にあふれたリリックに呼応する泣きのギターソロに抑揚豊かなヴォーカリゼーションの生むダイナミズムは、間違いなく摩天楼オペラそのものであった。ミラーボールが照らし出すオーブが客席に降り注ぎ、長めのブレイクが時間を止めると、なんとステージ上には舞い散る雪が……! 幻想的な光景の中、誰もが息を呑んでジッと聴き入るフロアは、しかし「GLORIA」のギターリフが空気を切り裂いた瞬間、一気にヘッドバンギングの海となる。ステージ奥では悠がサビを口ずさみながら渾身の力でスティックを振るい、燿から彩雨、Anziとソロが進むに従って、ドラム音量を上げてゆくのだから鳥肌が止まらない。その姿には楽曲とバンドに対する愛情、そしてステージに戻ってこられた喜びがあふれ、ネオンライトを掲げるオーディエンスの大合唱と相まって素晴らしい感動を呼んでくれた。“栄光”を意味するこの曲は、その真価を知る悠がいてこそ100%の力を発揮するのだ。

そうして本編ラストで全力を振り絞っておきながら、アンコールをドラムソロで始める無茶な展開も、実にテンション高まるもの。「声小せぇぞ! もっと腹から声出せんだろ!!」と煽りながらのテクニカル/アグレッシヴ/ダイナミックなプレイに、悠の完全復活を見て取って、思わず安堵に胸を撫で下ろす。

「Zepp Tokyoで“やりたいことがいっぱいある”と言っておきながら、活動休止してしまったんで、こうして戻ってくることができて幸せな気持ちでいっぱいです。復活したからには野望の続きを一つひとつ叶えていくんで……ついてこいよ!」

そんな言葉で悠がオペラーたちを歓喜させると、他メンバーも次々に口を開く。

「悠さんが復活できて、しみじみしてます。半年待たせたから、彼には倍返ししてもらわないと」――燿

「半年待ってくれたオペラーが超いい子で、可愛すぎて、生きるのがツラいです!」――彩雨

「今日は“新木場、最高!”って学びました。摩天楼オペラで天下取ってやるよ」――Anzi

重低音に鍵盤音でスタイリッシュな摩天楼オペラ流アレンジを施したhideの名曲カバー「DICE」等も挟みつつ、「最近あんまりダブルアンコールなんてしないんだけど、今日は特別」と最後に贈られたのは「喝采と激情のグロリア」。「GLORIA」の進化形とも言える光に満ちたメタルチューンに満場の拳と大合唱が沸き上がり、それを両手いっぱいに広げて受け止めた苑は、吸収したエネルギーを力強い歌声に変え、ビブラートの利いたアカペラで曲を締め括る。そこに漲る生命力は、場内にあふれる光と共に、彼らの未来を眩く照らしていた。

この後、12月17、18日に梅田CLUB QUATTRO/名古屋CLUB QUATTROでの公演を満員御礼で終えた摩天楼オペラの2014年は、2月の男性限定/女性限定ライブからスタート。さらに3月からは、全国9都市を回る“journey to HEAVEN Tour”の開催も決定した。“熱い”ライブチューンで、5人とファンが共に在る喜びを“温かく”浮き彫りにした今ツアーから続く天国への階段を、果たして摩天楼オペラは如何に歩んでゆくのか? ただ一つ確かなのは、苦難を乗り越えたぶんだけ、自由に音楽を創造する強さを彼らは得たということだ。

取材・文●清水素子
撮影●洲脇理恵(MAXPHOTO)


◆摩天楼オペラ オフィシャルサイト
◆摩天楼オペラ キングレコード レーベルサイト
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