【ライブレポート】アヴリル・ラヴィーン、ロックに振り切れ凄まじくオンナに

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大阪のZepp Nambaに、東京の新木場スタジオコーストというレアなライブハウスでの追加公演、続いて神奈川のパシフィコ横浜公演と、約2年ぶりとなる来日ツアーでソールド・アウトを連発しているアヴリル・ラヴィーン。次なるステージは、日本武道館2DAYSである。その初日を観たのだけれど、間違いなく過去最高で最強のライブだった。

◆アヴリル・ラヴィーン画像

さかのぼること11年。デビュー翌年の2003年に行われたアヴリル・ラヴィーン初来日公演の会場が、いきなりの武道館だったことを、ご記憶のファンも多いだろう。しかも、ゴブとシンプル・プランという、同郷カナダの先輩バンド2組をサポート・アクトに従えた、17歳にして大物感たっぷりの公演だった。ちなみにその時のツアー・タイトルが<Try To Shut Me Up Tour>。「私を黙らせてみなさいよ」ってわけだ。思えば、確かに当時のアヴリルは、夢多き10代の女の子的な感じで接することをきっぱり拒絶するような、ヒリヒリした空気を放っていたし、言いたいことは臆せずにはっきり言う頑強さを持っていた。そしてそんな真っ直ぐさが、大きな魅力でもあった。

では、現在のアヴリルはどうか。基本的には何も変わっちゃいない。ただ、そこに大人の女性としての分別や寛容さが加わったため、かつてのような尖り方をしなくても、彼女は自分であり続けることができるのだ。男目線で見ても、実にカッコいい生きざまだし、だからこそ同性からの支持も絶えないのだろう。本人が意識しているかどうかは別として、やっぱりアヴリルの根底に流れているスピリットは、パンクなんだと思う。

さて、今回のツアーは、通算5枚目のアルバム『アヴリル・ラヴィーン』を携えてのもの。前作のツアーでは、「ワット・ザ・ヘル」での和太鼓との共演で驚かせたアヴリルだったが、今回はオープニングのフラッシュバック映像に続いて、なんとその和太鼓からライブがスタート。彼女は再び、和太鼓パフォーマンス集団「無限-MUGEN-」を迎えていたのだ。雄々しく勇壮なビートが、武道館に響き渡る。

そのまま和太鼓を入れたバンド編成で繰り出されたのが「ハローキティ」。登場したアヴリルは、キティがたくさんあしらわれたドレス姿で、♪カ・カ・カ・カワイイ!♪とキュートかつシャープなラップ・ヴォーカルで魅せる。そこから続けざまに「ガールフレンド」へ。ぎっしり埋まった会場は、冒頭から怒涛の盛り上がりだ。瞬時に黒のノースリーブとレギンスに着替え、ヒット・シングルの「ロックンロール」や「ネヴァー・グローイング・アップ」、ボートラ曲ながら最高のポップ・パンク「アイ・オールウェイズ・ゲット・ワット・アイ・ウォント」などキラー・アンセムの連打で、何度もクライマックスを迎えた前半戦。そのステージングは、凄まじくロックだった。ぐっとラウドになったバンド演奏に乗せて、まだこんなに伸びしろがあったのかと唖然とするほど、パワーも深みも格段に増したヴォーカルを炸裂させる。客席にマイクを向けてのコール&レスポンスや、「もっともっと!」「歌って!」と煽るパフォーマンスも含め、こんなにもロックに振り切れたアヴリル・ラヴィーンは見たことがない。

そして、「ハッシュ・ハッシュ」「レット・ミー・ゴー」「マイ・ハッピー・エンディング」などのバラードと、デビュー作の1曲目を飾った「ルージング・グリップ」や「バッド・ガール」(悪魔コスチューム&バックにマリリン・マンソンの映像)といったヘヴィ・チューン、さらには鉄板の「コンプリケイテッド」「スケ8ター・ボーイ」で歓喜のフィナーレを迎えた後半戦。ここでの彼女は、乱暴な表現で恐縮だけれど、凄まじくオンナだった。こんなにも女性としての哀切を、激しい情念を、セクシーさを体現したアヴリル・ラヴィーンも見たことがない…というか初めてだ。

アンコールでは、もう1度「無限-MUGEN-」が登場しての「ワット・ザ・ヘル」でパーティ・ハードし、「アイム・ウィズ・ユー」の大合唱で熱い余韻を残して終幕。ライブ・アクトとしての飛躍的な進化が刻み込まれた、特濃の90分だった。デビューから12年、2014年で30歳、人妻。アヴリル・ラヴィーンの本当の旬は、これからなのかもしれない。

文:鈴木宏和
写真:Yoshika Horita

<アヴリル・ラヴィーン 2014年来日公演>
2014年1月31日(金)大阪 ZEPP NAMBA
2014年2月1日(土)東京 スタジオコースト
2014年2月3日(月)神奈川 パシフィコ横浜
2014年2月4日(火)、5日(水)東京 日本武道館
2014年2月7日(金)愛知 日本ガイシホール
2014年2月8日(土)大阪 インデックス大阪
http://www.creativeman.co.jp/artist/2014/02avril/

◆アヴリル・ラヴィーン・オフィシャルサイト
◆アヴリル・ラヴィーン・オフィシャルサイト(海外)
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