【インタビュー】the god and death stars、集大成的アルバム『mary bird milk』リリース「歌謡曲は避けてきたんです。でもひとりになってみると“みゆき感”濃いなぁと」

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■人と違ったことをやろうと思ったことはないけど
■微妙な言葉の選び方は趣味ですね。ギリギリ感っていうか

──「母乳」で浮かんだキーワードは?

aie:これは、“天の川、晴れ姿、焼け野原”っていう。歌詞にあるこの3つが出てきて。というと、娘かなと。娘の晴れ姿を見たかったのか、過去の思い出なのかわからないですけど、それがない状態の焼け野原になった……っていうところから、なんとなく物語を作りはじめて。これは身代わり論というか。この子の命の代わりに私を殺して下さいっていうのが、この子にとって最悪の結末のほうになっちゃうんじゃねえかなというか。私以外が全員いなくなっちゃったけど、残された私どうすりゃいいのって感じというかね。生き残ってしまったことが、選ばれたのか、選ばれてしまったのか、謎のまま生きていますっていう話なんですよね。ほかの人が死んだとか、生きているかはもやもやにしてあるんですけどね。

──なぜそういう物語が芋づる式に出てくるんですかね。

aie:たぶんその直前とかに見たニュースとかですかね。事故のニュースとか。わりと近い、衝撃的な出来事とかを覚えているんじゃないですかね。

──自分の“なにか”をぶつけるようにして書いてはいないですよね。歌詞を書いて歌う、表現の欲求であるとか、根源って何だと思いますか。

aie:人と違ったことをやろうとは思ったことはないしやりたいとは思わないけど、例えばタイトルとかでも、ほかの人が使わないだろうなとか、微妙な言葉の選び方は趣味ですね。ギリギリ感っていうか。椎名林檎が出てきた時に、タイトルとかすごい言葉の使い方だなっていうのがあったのに、その後、それが当たり前になって、椎名林檎っぽいのが増えてきたりして。でも、入口としては、なんだこれ?っていうのではじまったと思うんですよ。モーニング娘。っていうユニット名もね。のちのち当たり前になるかもしれないですけど、なにこれ?っていうのが常にないとダメかなと。自分たちの作品の名前や歌詞とかも、なんなのこの言葉?とか、ギリギリダサいのとOKなところを使えたらなとは毎回思っているんですよね。

──そのキワを攻めるのが書いているときの面白さなんですね。ちなみに、“天の川”というのが言葉としてポンと出てきたのは、なんだったんでしょうね。

aie:自分の声で出しやすいのか、“あ”ではじまるのが多いんですよ。なんとなく仮の歌を、適当な日本語で歌ってるときに、たまたまそれを歌ったことが記憶されていたということくらいですかね。

──目で見て引っかかっていた記憶や光景よりも、発語感なんだ。

aie:そう、だから後付けなんですよね。で、今は便利な世の中でウィキペディアで調べれば何でもわかってしまうので(笑)。その言葉を調べていって、ストーリーを繋いでいくとか。

──でも歌になったときには、背景やそこに流れる物語が見えてくるんですよね。言葉の発語感や面白さを見出しながらも、ストーリーテラーとしての部分は強いと思う。

aie:ああ、言葉と文章はそこそここだわっていますね。ちゃんとしたものっていうものは。

──匂いやリアリティがちゃんと感じられる物語になってる。それゆえに、曲のできた背景を訊くと、なるほど面白いなって思うんですよ。イメージ的な言葉から拾って書いていくと、イメージ的であったり、抽象的な曲にもなりやすいと思うんです。そうじゃなくて、きちんと物語にするっていうのは、きっとそこを大事にしてるんだろうなと。

aie:うん。いい言葉に逃げないようにはしますね。ほんとこの一行だけがずっと描けないとかもあるんですよ、変なところで。ヘタすりゃその一行で前後の意味も変わってくるし。

──中島みゆきさんもそうですが、歌のなかに物語があって、背景がありますよね。そこはやはり色濃いところなんですかね。

aie:みゆきとASKAはすげえなと思いますよ。たぶん、物心つく前から、母ちゃんがかけていたんですよね、レコードで。井上陽水とか安全地帯、CHAGE and ASKAとか中島みゆきは、かあちゃんが好きだったのを擦り込まれて好きになったタイプだと思うんですよ。だからもともと染みついているからかな、と。

──思春期で洋楽を聴いてサウンド的に影響を受けたりもしたけれど、根はそこですね。

aie:歌謡曲なんかダセえじゃんっていうのが若い頃はあるじゃないですか(笑)。だから、歌謡曲は避けてきたんですよ、ずっと。でもひとりになってみると、それがいちばん素直に出てくるから。みゆき感、濃いなあとは感じてますね(笑)。

取材・文◎吉羽さおり



■アルバム『mary bird milk』
2月12日発売
DSGD-007 \2,500(税別)
1.母乳
2.無実の無視
3.夜空の手前(LIVE)
4.brother mustang(LIVE)
5.love hole(LIVE)
6.プール(LIVE)
7.canine(LIVE)
8.addle apple(LIVE)
9.ザゾンビ(LIVE)
10.ロカ(LIVE)
11.飛ぶ鼠(LIVE)
12.複雑な倒立(LIVE)

■<the god and death stars world tour 2014「down of the god」>
2月08日(土) 大阪・福島LIVE SQUARE 2nd LINE
2月09日(日) 名古屋TAURUS
2月16日(日) 東京・渋谷チェルシーホテル
チケット発売中
前売 3500円 当日 4000円
[問]Field Arrow info-dog@field-arrow.co.jp


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◆the god and death stars オフィシャルサイト

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